第6話 天を繋ぐ光

「ごめんで済んだわ。」

「まじっすか。」


 期せずして地球人と木星人類が敵対することになってしまい、私たち秘密組織アージェスとしても善後策を検討するために開いた緊急会議。だがその冒頭で、なんかもう既に話が終わっていた。


「最初にアメリカから木星側に事情を説明したら『そういうことなら許すわ』という事になって、それ以降はずっと友好的な交流をしているらしい。」

「ゆ、許された……」


 こうして、私たちの日常と非日常は、別にビームが出ようが出まいが関係なく続いていくのだ――


 ― 完 ―



「いや完ではなく。」

 ヤマギ博士は行間が読める男だ。


「アメリカからの発表……というか、木星側の対応には不自然さを感じる。地球の放送をジャックしてまで物騒なことを言っていた第一声と、その後の対応に差がありすぎる。」

「いきなり地球が隕石飛ばしてきたからテンパっちゃったんじゃないの?」

「うんうん、ヒカリは純心だねー。変な男に騙されたりしないよう気をつけようねー。」

「むー」

 私によしよしされてむくれるヒカリ。かわいい。

 なお、今までそういう下心で近寄ってきた男は私が制裁する間もなく、もれなくビームで消し飛んできた。南無。


「とはいえ、木星は地球の10倍以上大きな惑星だ。相対的に被害は小さいのだと言われれば信じるしかない。」

「そうですね、木星の重力圏は広大です。一説によれば仮に木星が存在しなかった場合、地球に落ちる隕石は現在の100倍~200倍にもなり、即ちそれだけの隕石が木星に引かれているということです。今回のような直径数キロ級のものも少なくは無いのでしょう。」

 同席していた名前を知らない博士が説明してくれた、ありがとう名前知らない博士。でもよく分かんなかった。

「ともかく、今すぐには木星とは戦争にはならないだろうとの見方が大勢だ。先日の放送は、まあ最初に強く言っておいて交渉を有利に進めようという目論見なら理解はできる。」

「その割には何か地球側に大きな要求があったという話は出ていませんよね?」

「ああ、まあな。」

 ヤマギ博士の見解も少々歯切れが悪い。「今は」「木星とは」というのは裏を返せば、今でなければ、木星以外となら、戦争になる可能性があるとも取れる。


「……これは私見だが、明らかに相手に非があるにも関わらず賠償を要求しないという場合に考えられるのは2つ。1つは相手を許す余裕が十分にある場合。もう1つは『それどころではない』状態だ。『宣戦布告』という言葉が真っ先に出てきたことから、木星は既に戦時下にあるのではないかと考える。地球と木星が友好的になれば、木星と争っている側から見れば敵が増えることになる。そうすれば――」

 その話の途中で、会議室に誰かが飛び込んできた。

「報告します!未確認飛行物体が――木星のものとは異なる技術の宇宙船が現れました!」


つづく

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