第5話 星を穿つ光

「たかが石ころ一つ、私のビームで押し返してやる!」

「ヒカルだけにいい思いはさせないよ!」

「ユキ!?だめだよ下がって!」

「地球が駄目になるかどうかなんだ!やってみる価値はあるよ!」


「……っていう展開だったら燃えたのにねー」

「ねー」


 我々は学校帰りのマックで駄弁る女子高生である。

 ヒカリは相変わらず大バーガーLLセットにナゲットを付けて、私はシェークのみ。最近はヒカリが美味しそうに食べているのを見ているだけでこっちも幸せな気分になってくるような気がする。恋だろうか。

 件の巨大隕石はアージェスとアメリカのデブリ対策チーム、通称「コメットライザー」が連携して軌道を修正し、木星の重力圏への誘導に成功したらしい。早い段階での発見と迅速な情報共有が決め手で、その後に感謝状が送られてきた。秘密組織とは一体……

「でもそれで隕石を何とかできちゃうのが、さすがアメリカって感じだよねー」

「インデペンデンスデイの国だもんねー」

「ミッションインポッシブルだよねー」

「U S A ! U S A !」

「U S A ! U S A !」

 おふざけが盛り上がって掛け声チャントをかけ始めると、さすがに店内のお客さんたちが何事かとこちらに注目する。でも中高生御用達のチェーン店なので、このくらいの騒ぎは日常茶飯事だから「ごめんなさーい」みたいな顔をして静かにしていれば別になんともない。


 私たちはこんな日常と非日常を行ったりきたりしているけれど、別にビームが出ようが出まいが世界は回っていく、私たちの人生は続いていくのだ――


 ― 完 ―




 ※ちょっとエピローグっぽいことを言ってみただけで完じゃない。


「でも木星に隕石落としちゃうんだったら、木星の人にはごめんって感じだよね。」

「あはは、さすがに隕石落とされたらフツーごめんじゃ済まないよね。」


 その時、窓の外に見える大きなテレビ画面に映っていたバラエティ番組が突然消え、代わりに特撮ヒーロー物に出てくる怪人みたいな奴が出てきた。


『愚かなる地球人類どもよ……我々木星人類は貴様らからの攻撃を宣戦布告と受け取ったぞ!』


つづく

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