第4話 宇宙を渡る光

――その事の起こりは今から10年前

 未知のエネルギーを観測した秘密組織アージェスは、その正体を探るべく調査に乗り出した。

 エネルギーが観測された地点に赴いた彼らが見たものは、胸からビームを発射する少女と、そのビームに吹き飛ばされるもう一人の少女。

 片やビームを全身に浴び、もう一方は全てのエネルギーを放出し、共に瀕死の二人を保護したアージェスは、その科学力をもってサイボーグ化及びエネルギー制御手法の確立を行い、2人の生命を救ったのだった。

 それ以来、2人の少女――小山ヒカリと堀田ユキは、秘密組織アージェスに身を寄せて一般的な生活を送ると共に、組織のエージェントあるいは秘密兵器として活躍するのであった――


そして今、謎に包まれたヒカリのビームの秘密が明かされる!


==========


「2人ともよく来てくれた。」

 会議室と呼ぶには少々大きすぎる部屋で、ヤマギ博士が私とユキを待っていた。

 ヤマギ博士は、私たちがお世話になってる組織のちょっと偉い人らしいんだけど、どれくらい偉いのかはよく分からない。

「既に概要は聞いていると思うが、今から君たちには先方との通信に立ち会ってもらいたい。」

 緊急招集で呼び出された私たち。その内容と言うのが――

「先方ってその……、地球外からの通信だって本当ですか?」

 半信半疑でユキが聞く。現在、表向きには人類は地球外生命体とコンタクトはしていないことになっている。

「うむ。ここまで既に何回かの通信を執り行い、相手が地球外生命体であることは疑いようがないという結論になった。そして、話を推測するとヒカリ君、君がビームを出すようになった原因と関係がある。」

「それってやっぱり……」

 自分の胸をキュッと掴む。この中には、10年前に拾ったあの石が入っているはずだ。ビームの源となるこの不思議な石が、宇宙からやって来たというならばそれは納得できる。


「では繋ぐぞ。」

 部屋の大モニターに映像が映し出される。そこには1人の人物?が映っていた。

 なぜハテナマークが付いたかというと、確かにその姿は人間なのに、感覚的になぜかそれを人間と認識していないからだ。その特徴を表現しようとすると、20代~30代、または40代~50代の男性または女性……といった感じで、人が無意識のうちに行っている、第一印象による他人の分類がうまく機能していない。髪が長いので女性のようにも見えるが、その顔立ちは男前とかハンサムといったカテゴリに近い。


『……マスカ…聞コエマスカ…今、アナタノ心ニ直接呼ビカケテイマス……』

 モニターの人物が語りかけてくる音声が響き渡る。響き渡ってはいるが、それは普通にスピーカーから音が出ているからであって別に心に直接呼びかけられているとかではない。なんだこれ。

「なにこれ?」

ユキもどう反応していいか分からずヤマギ博士に助けを求める。

「気にしなくていい。……こちらはアージェスのヤマギ、及び同席2名。そのセンテンスは通信確立の際に使われるものでなはい。」

『ソウデスカ、コチラビーム星人。ゴメンネ、カーチャン言語サンプルアンマリ用意デキナカッタカラ、ゴメンネ』

 こいつビーム星人って言ったぞとかシリアスな流れがぶち壊しだとか微妙に語彙が古いとか色々ありすぎてどこからツッコミしていいかわからない。

「うむ、本題に入ろう。今までの通信の内容を総合すると、あなたは探しものをして太陽系にやって来た。そしてその探している物が、この近辺にあることが判ったので我々にコンタクトを取ったということだったな?」

『イエス。私ハ今、Uranus――ハルカ天王星ノ外縁部デ、ソノ信号ヲキャッチシマシタ。探シテイルノハ、私ト同ジ生命個体ノ発生直前の様態……エエト…何テ

呼ブンダッケ…』

「……卵、とか?」

『ソレソレ。地球ノ環境ニオイテハ、コノヨウナ形状ニナッテイルと想定サレマス。』

 そう言って画面に表示されたのは、赤く煌く光を放つ、小石。忘れもしない、10年前に私の体内に埋め込まれたものだ。私とユキが頷き合い、続いてヤマギ博士に向かって頷く。

「その石、いや卵か。我々は確かにその存在を確保している。元々そちらの所有物と言うのであれば、条件によってはお渡しすることもできるだろう。」

『モチロン何ラカノオ礼ハスルツモリデス。』

「うむ、まず第一に、その卵は現在この者の体内にある。現在我々の技術では安全に摘出することができないが、彼女に危害なく切り離せることが大前提だ。」

 呼ばれて私はモニターの正面に進み出る。未知のエネルギーよりも、異星の技術よりも、私の身の安全を優先してくれたのが少し嬉しい。

『エッ?』

 しかし返ってきたのは意表を突かれたとでも言うような反応。えっ?何?

『卵……食ベ……タノ……?』

「食べてないです。」

 被せ気味で否定。食った食われたで言えば私はむしろ食べられた側じゃないかと思う。

『地球人ハ他生物ヲ体内ニ取リ込ンデエネルギー源トスルッテ……デモマサカ本当ニ食ベルナンテ』

 食べてないっつーの。

「待ってよ、その卵?が勝手にヒカリの体に埋まって来たんだよ。普通はそんな風にならないってこと!?」

『エッナニソレコワイ』

「その結果、定期的にビームが発射されるようになっているのだがそれも想定外か?」

『ナニソレモコワイ。ナンダヨビームって……地球コワ…トズマリシトコ』


 その後、色々と情報を交換したけれどビームに関してはお互いよくわかんないという結論で幕を閉じた。結局ヒカリのビームの秘密は明かされなかった。

 あとなんか仲良くなった。


『トニカク、アト3日クライでソッチニ着くカラソレマデ消化シナイデヨネ(笑)』

「食べてないってば!」

 既に友達と電話してるくらいの感覚で話をしている。

 友達、友達か……お友達が欲しかったのかもねビーム星人。

『ソレデハ通信ヲ終了シマス。アッソウソウ、サッキ大キメの隕石ガソッチニ飛ンデイクノガ見エタカラ気ヲツケテネ~』プツン


最後にとてつもなく不穏な情報を残して会談は終了した

「ヤマギ博士、最後のって……」

「……うむ、宇宙班に天王星方面からの飛来物を警戒させよう」


その後、人類絶滅レベルの巨大隕石が地球への衝突軌道にあることが判明しました。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る