第2話・拡がる世界
神様の導きにより、ケイトの目の前には新たな世界が広がっていました。
その美しい光景に、ケイトは何処か懐かしい…強い感動を思い出したのです。
「そうだわ、これは初めてプロトに出会った時の感覚…!」
それまで、ケイトの世界には自分とプロト、そしてネウの3人しか存在していませんでした。
彼女はプロトとネウばかりを見続けていて、宇宙はその3人で成り立っていました。ケイトは、自分達以外の存在を認知していなかったからです。
神様の導きにより、ケイトは産まれて初めて自分達以外の世界に目を向けました。
ケイトの心を充たした「二度目」の感動は、彼女に新たな一歩───プロトから目を逸らし、新たな宇宙を産み出すきっかけを与えたのです。
それはまるで、巣を出た小鳥の様に…恐る恐るだったけれども、確かな一歩でした。
そして、新しく拓かれたこの世界で、ケイトはプロト、そしてネウ以外の───新たなる存在に遭遇する事になるのです。
* * *
ケイトが遭遇したのは、彼女と同じ恋の苦しみに身を焦がす、同じ年頃の女の子でした。
彼女は自らをエレと名乗り、ケイトは長い時間をかけて、じっくりとエレの身上話を聞いてあげました。
恋の苦しみをよく知るケイトは、エレの苦しみにも強く共感しました。二人はすぐに打ち解け、ケイトとエレは仲の良い友達となりました。
同じ苦しみを知る者として、ケイトはエレを失恋の苦しみから解き放ちたいと考えました。
そこで彼女は、エレにも神様の教えを伝え、新しい「世界」を彼女にも見せてあげたのです。
神様の教えを伝えたケイトの働きにより、想い人に捕われたエレの心は、新たな世界を知る事で自由になっていきました。
エレもまた、今まで自分が閉じ籠っていた世界がどんなに小さく、狭いものだったのかを知ったのです。
それは副次的な効果だったのでしょうか?
この時、エレを導いたケイトにも変化が起こりました。
ケイト一人では見えなかった新しい世界が、エレと二人になった事で見えるようになっていたのです。
それはケイトにとって2回目…エレにとっては初めての、新しい世界との邂逅でした。
そうして親友となった二人は、神様の教えに従い、更なる出逢いを求めて、拓かれたばかりの新しい世界を歩み始めました。
* * *
ケイトとエレの、終わることのない旅は続いていきます。
新たなる世界で、二人はまたも自分達と同じ悩みを抱えた少女達と出会い、そして同じように彼女達を助けていきました。
1つ…また1つと、救済の旅は続きました。
エレの次にマリア、その次はノーラ、オフィーリアと───拡がり続ける世界の先には、必ず悩める少女達がいました。
ケイトは彼女等を余さず救済していき、救われた少女達はケイトに感謝し、彼女と行動を共にするようになりました。
仲間が増える度に、ケイトを中心とした少女達の意識───宇宙は無限に拡がって行ったのです。
* * *
気が付くと、ケイトはプロトの元から随分と遠い所まで来ていました。
「彼は今、どうしているんだろう…?」
後ろを振り返ったケイトには、もう自分がいた世界がどんなものだったのか、よく思い出せなくなっていました。
しかし、今のケイトにはそんな事はまったく気になりません。
無限に世界を拡げてきたケイトにとって、プロトと自分だけがいた世界は、もはや微粒子レベルの存在───視界にも入らないような小さなものとなっていたのです。
多くの気の知れた仲間に恵まれたケイトにとって、プロトとの身を焦ぐような辛い失恋の記憶は、取るに足らない出来事となっていました。
神様の言った通り、ケイトは既に恋の苦しみから解き放たれていたのです。
* * *
ケイトの仲間は増え続けました。
その数は何百、何千、何万、何億、何兆───永遠の時間を生きるケイトにとって、それはほんの僅かな間での出来事だったのかもしれません。
気付けばケイトは、1つの大きな集合体───巨大な宇宙の、大いなる意識の総代とも云える存在になっていました。
ちょうどその頃の事です。
胸に突き刺さる懐かしい声に、ケイトの心が揺らめいたのは。
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