一ページの追跡
こんな夢を見た。
古い洋館の廊下に一人で立っている。
広々とした通路のあちらこちらには、中途半端に開かれたままの本が浮いていた。
その中に一ページだけ、無数に浮かんでいる本の一冊から破り取られたらしい紙が浮いている。回収しようと手を伸ばすと、ひとりでに紙飛行機の形に折り畳まれて逃げ出した。
あっという間に館から飛んで行ったその紙切れを慌てて追いかけるうちに、気付けば捕獲用のホースを持ったまま四つん這いで辺りを探し回っていた。
本当は立って走った方が早いのだが、そうすると経費で落ちなくなってしまうのだ。仕方なく動きづらいなぁと思いながらも、本屋の文房具を売っている一画を四つん這いのままホース片手に探し回る。
文具コーナーではホースを持った人が他にもいた。大抵は四つん這いで進んでいたが、時折立って走っている人も見かけた。恐らく資金に余裕があるか、それもきちんと経費で落ちる人なのだろう。羨ましいが、却って足元を探しにくい気もする。負け惜しみであることは百も承知で、立ち上がりたい気持ちを懸命に抑えて捜索を続けていた。
しばらくそのまま本屋の中で探していたが、どこにも見当たらなかったので体育館まで戻ろうとする。
体育館の入り口まで塀をよじ登り靴を脱いだが、ホースがどこかで引っ掛かったらしく付いて来ない。
そういえばこのホースは随分と長いようだが、果たしてどこまで延びるんだろうか。そう思いながら掃除機のコードのように無理矢理引っ張ってみると、ホースの口がキャップから外れ、石を積み重ねて出来た塀の下に落ちていってしまった。
拾いに行きたいが塀は高い。そのまま降りては怪我をしそうだ。途中足場になりそうな窪みもあるにはあるが、土埃やらごみやら訳の分からない蟻や百足のような虫やらがいて、裸足のままで降りるのは躊躇われた。
何故か靴を履き直すという選択肢はなく、ただぼんやりと困ったなぁ困ったなぁと思いながら、窪みの白いゴミと落ちたホースを交互に眺めている。
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