水族館

 こんな夢を見た。


 母親らしき大人の人に連れられて、水族館に来ている。

 平日とはいえ有名な、規模の大きい水族館のはずなのに人はおらず、他の客と一人もすれ違わない。

 だだっ広い部屋の四方を水槽で囲まれた中でぽつんと立つ自分達二人を、ぶよぶよとした大きい鮫がじっと見ていて少し落ち着かない気分になる。

 部屋の中央に下階に続く階段を見つけたが、何故か階段は途中から水で沈んでいた。

 母親らしき女性いわく、下の階はこの水族館の目玉の展示で、人間が階段を降りて水の中に入っていくと、巨大なマンタが頭上を通りすぎてくれるのだという。

 マンタの気が向けば一緒に遊んでもくれると聞き、幼い私はわくわくした。すぐにでも見に行きたいのだが、このまま入っていくとその後服が濡れてしまうので、ひとまずは周りの水槽を先に見て回ることにする。


 途中、水槽の脇に赤いボタンを見つけたので押してみると、突如水槽の壁がぐるりと回りだした。

 そのままからくり屋敷よろしく水槽が消え、ロボットと宇宙の展示コーナーが現れるのを呆然と眺めながら、そうかここは水族館ではなく科学館だったのかと一人気がつく。

 こんなことなら先にマンタを見ておけばよかったと思うものの、水族館のあった痕跡は最早どこにも見当たらない。

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