第2話 冬のプロペラ
Choo Choo TRAIN ってわけには行かないのは判っていたけれど、私たち年少組はレベル90の冒険者の思考回路を甘く見ていた。
ここまで脳筋野郎たちだったとは……。
MMORPGのプレイヤーって本来インドア派のはずだよね?
にゃん太さんまで「若い頃はリフト代を浮かせるためにスキーを担いで歩いて登ったものですにゃ」とは、冗談なのか本当にやっていたのか、ツッコんでいいのかどうかの判断がつかない。
まさか荷物を全部マジックバッグに突っ込んで、スキー場まで雪道を走って行くなんて!
「現実世界でいえば草津温泉のあたり。雪がなければ段々畑になってるところを土地の古老に頼んで一泊二日で貸してもらったんだ。ちょうどスノウフェルのモンスターが出る季節だから、その用心棒代ってことでお代はタダだぜ!」
「スゲー! 直継兄!!」
「へへへ! 社会人を、営業マンの交渉力をなめるなよ祭りだぜ!!」
――そう、なぜかいつの間にか「合宿」になっていた。
これだから体育会系脳筋野郎どもは……。しかも円卓会議の主立ったギルドのメンバーも多数参加。私が溜息をつくとシロエさんと目があった。
シロエさんも苦笑いのような表情だ。
いつの間にかリフトが設置されていたゲレンデはまっ平らに
「直継兄、ここどうやって平らにしたの!?」
「ん? この鎧を着たままひたすらゴロゴロ転がり祭りだったぜ!」
サムズアップして、いい笑顔で答える直継さん。
――なんて脳筋! 魔法とかマジックアイテムとかで工夫しようとは思わなかったものか?
「リフトっていつの間に……?」
「ロデ研と海洋機構のメンバーも一緒に行きたがって、引率するかわりにリフトを設置してもらったのですにゃ」
にゃん太さん、自分がリフト設置や温泉宿設営の交渉を笑顔でゴリ押ししたこと、セララさんには隠すつもりなのかな?
「うわー! 体が軽〜い!! こんな幸せな気持ちで滑るなんて初めて」
さっそくスノボでジャンプしてプロペラみたいに回ってるけど、五十鈴さん、そのセリフはヤバいフラグだから。
「ねえねえ! トウヤくん、ルディ! スキーとスノボ、どっちにする?」
「僕はミス五十鈴と同じのがいいな」
「俺、最初はスキーに乗ってみたい」
「じゃあ、ルディは私が教えてあげる!」
「よし、トウヤとミノリは俺が特訓してやる祭りだぜ!」
いや、その、私もシロエさんと一緒に温泉でゆっくりするつもりだったのだけれど……。
「冒険者の身体能力のせいかなぁ? 現実世界より動きのキレがいい気がするよ」
私も仕方なくスキーを装着。
シロエさんも……なんか往生際悪く色々自分にバフかけてるし……。
そうこうしているうちに、みんなバラけてスキーやスノボを楽しみ始めた。
私もトウヤと一緒に直継さんにボーゲンからスキーの乗り方を教えてもらう。
時々赤いグルメガイドのキャラクターみたいなスノーマンがやってくるけれど、スノウフェルのモンスターはサービスみたいなものだから、わりと弱いくせに経験値はガッポリ入る美味しいモンスターだ。私たち年少組が基本的に相手をして、ピンチになったらレベル90台の人が誰かフォローに入る感じ。
ほんと、慣れてきたらけっこうスキーって楽しいかもって思った時だった……。
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