外伝 子供達の逞しい日々



 ――――ドナウ歴507年5月――――



 日の出の一時間前、ぼつぼつ使用人が起き出して、朝食や身支度の準備に追われる時間帯。一人の少年が目を覚ます。


「―――――ん、朝か。そういえば昨日は姉上が潜り込んでこなかったな。まったく、あの人ときたら」


 寝台には自分一人しかいない。一人で眠るにはこの寝台は広すぎるが、それでも姉が夜中に勝手に潜り込んでは寝起きを共にする。特にここ最近は五回に四回は入り込むので、今日はぐっすりと朝まで眠れて得をした気分だ。

 そして何時までも寝床に居る訳にはいかない。二度寝は怠惰の象徴を肯定するし、時間の浪費でもある。偉大な父に近づくには一秒たりとも無駄にしてはいけない。

 意識を覚醒させると寝台から抜け出し、手早く稽古着に着替えて部屋を出た。目指すは屋敷の表、騎士達の待つ朝練の場だ。



 今は春だが、夜明け前の外はまだまだ肌寒い。しかし、既に鍛錬の準備を始めていた屋敷の騎士達には軽い汗が流れている。


「みなさん、おはようございます。今日も一日よろしくお願いします」


 少年が騎士達に挨拶すると、騎士達もまた彼に挨拶を返す。

 その後、さっそく準備体操に入る。この体操がドナウに普及して十数年が経とうとしていた。初めは美容目的に婦人の間で広まったそうだが、軍人や騎士の中にも訓練に取り入れる者が徐々に増えて、今はドナウ中で習慣化している。

 実際、訓練時の体のキレに影響があり、体操をした方が体感的に怪我をしにくくなると分かると、あっという間に老若男女問わずドナウの朝の日常に取り込まれていた。

 体操を終えた少年は訓練用の木剣で素振りを始める。その頃になると、少年の弟達も遅ればせながら起き出して、訓練に参加した。と言っても二人増えただけだ。後の弟達はまだ小さいので、今も夢の中を泳いでいるだろう。

 木剣の素振りを終えると、汗で前髪が額に張り付く。艶のある黒髪が水分でさらに光沢を強くした。

 今度は型稽古。騎士達に教えられた型を身体に馴染ませるように、何度も何度も繰り返し、無駄の無い動きを心掛けつつ、無心になって剣を振る。

 以前、一緒に朝練していた父に型を練習しないのかと聞いたことがある。その時、父は自分には馴染まないと言って一切行わなかった。曰く、


「型と言うのは考える時間を省いて、最速で剣を叩きこむ動きを身体に覚えさせる行為だ。だから相手の剣の軌道を見極めてから動いても間に合う父さんにはそこまで重要な技術じゃない。まあ、そんな事出来る人間は殆どいないから、お前は普通に訓練しなさい」


 他の騎士達も父の異常性はよく分かっているので誰も型稽古を勧めない。実際に父と騎士の模擬戦を観た事があるが、あれを観れば父のおかしさは嫌でも分かる。

 相手の騎士が剣を振り下ろす寸前に、いつの間にか距離を詰めて首筋に短剣を添えている。相手の方がずっと先に動いているのに、後出しの父の方が剣が速いのだ。あの圧倒的な初動の速さが父の強さの由来だろうと、子供ながらに父の異常さを実感した。

 当時は父と同じ事が出来ないかと、自分なりにあれこれと考えてみたが、どう頑張っても無理だと知って、本人にどうすれば同じ真似が出来るのかと聞いてみると、父は困った顔をしながら、内緒だぞとその秘密を教えてくれた。


「お前というか、西方では誰も無理だろうな。あの速さは身体を強化する薬を使ったり、人体に異物を埋め込んで獲得したものだ。父さんの元居た国の軍人は全員義務として、その強化処置を受けているんだ。だからここでは誰も同じ事は出来ないし、する必要も無い。そんな狂人のするような事はもう要らない。

 だから、お前はただの人として強くなりなさい」


 頭を撫でながら、少しほっとしたように笑いかける父の顔をよく憶えている。今でもその時の言葉を口にした父の心は分からない。

 しかし、その言葉に深い意味が込められているのは分かった。だからこそ、今自分は万人が強くなれる方法で強さを身に着けようと毎日汗を流している。



 すぐ下の弟と朝の鍛錬を終えて軽く汗を拭いて服を改めてから食堂へ行くと、既に何人かは座っていた。


「おはようございます、母上、アンナ母上、エリィ母上。みんなもおはよう。それから、えーとラケル姉上もおはようございます」


「おはよう、オイゲン。朝食は出来てるから、早く席に着きなさい」


「もう、なんでお姉ちゃんへの挨拶が最後なの!オイゲンちゃん、昨日一緒に寝てあげなかったから怒ってる?」


 先に席についていた家族に挨拶をすると、それぞれ返ってくる。一名だけ頬を膨らませて挨拶の順番に文句を言うがいつもの事だ。勝手に寝台に潜り込んでこない日は大抵、他の兄弟を寝かしつけていて自分もそのまま朝まで寝てしまう。おかげで今日は快適な目覚めだった。

 ラケル姉上。現在、家族の中で唯一褐色肌をした義姉。既にクロエ姉上はトーマス=ベルツに嫁いで一年が経っていた。ドナウ人とは少し顔立ちが異なるが、百人の男の内九十は振り返るであろう美貌を無造作に膨らませて自身、オイゲン=レオーネに抗議する。


「姉上、僕はもうそんな子供じゃないんですから添い寝は要らないです。寂しかったらクマノやアソと寝てあげてください」


「うわーん、アンナ母様ー、オイゲンちゃんが意地悪するー。きっと私の事嫌いになったんだー」


 顔を覆って泣くような仕草で母の一人に助けを求めると、途端に幼い弟妹達から非難が飛ぶ。いつもは姉を独り占めしていると文句を言い、こういう時は姉に味方をする。正直、兄弟の一番上なぞやってられない。

 アンナ母上はそれを笑って見ているだけだし、エリィ母上は幼い妹達の食事の世話をしていてあまりこちらの話に関わってこない。結局この騒ぎを治めたのが、我が生母マリアだった。


「はいはい、二人ともそこまでですよ。ラケルは嘘泣きを止めなさい。オイゲンはもう少しラケルに対して心を広く構えてあげなさい。それと二人とも添い寝ぐらいでグダグダ言わないの」


 兄弟の喧噪を一喝して止めさせた。さすがは元王女。


「どうせあと何年かしたらずっと一緒に寝る事になるんでしょう?私達だってあの人が一ヵ月居ないのに我慢してるんですから、一日ぐらい寝た寝ないで騒いでどうするの」


 前言撤回、単に自分が寂しいから止めさせたのか。それにさらりと息子に惚気をぶちまけないでほしい。正直どう返してよいか分からない。


「ああもう分かりましたよ、母上。ラケル姉上、今日は一緒に寝ていいですから。泣き真似なんてみっともない事しないでください」


「ひっどーい!涙は流してないけど、心は悲しいんだからね。あっ、じゃあ寝間着は何色が良い?オイゲンちゃんの好きな色を着てくるね」


「――――――――この前買った青」


 天性の美貌と出ている所は出ていて引っ込む所は引っ込んだ艶めかしい義姉の肉に抵抗出来ない若い自分の衝動が恨めしかった。

 それを分かった上で自分をからかって遊ぶ姉が恨めしくもあり、愛らしくもあり、この世で最高の女性なのは疑いようもないが、だからこそ、一人の男として手の平で転ばされるのが面白くなかった。

 いずれ立場を逆転させて、こちらが愛する姉を躾けてやろうと誓いを立てるが、母からイチャイチャしてないでさっさと食べて、城に行けと追い立てられた。誠に理不尽である。



 手早く朝食を食べて、脚竜に乗って城へと向かう。いつものように城の中にある学舎に入ると、既に十人程度見知った顔が部屋に居た。


「おはよう、オイゲン。今日も疲れた顔をしてるが、昨日お姉さんに搾り取られたのか?」


「おはよう、トリハロン。昨日はしてないよ、けど今日は負けないよ。って、何を言わせるのさ!」


 反射的に従兄弟に答えてしまって、それを聞いていた周りから品の無いヤジが飛ぶ。ドナウ貴族にあるまじき下劣さだが、この部屋で一番偉い奴がウヒョーなどと捲し立てて一番品が無い。


「いやーオイゲンは可愛い顔をしてるが、学舎で一番手が早いとはなあ。しかも相手はドナウでも指折りの美人、さらに義理の姉ときたもんだ。どうすればそうなるのか純情な私にご教授願いたいものだ」


「君だって望めば美女の十人や二十人ぐらい付いてくるんじゃないのかい?何せ次の王様なんだから」


 この下品な物言いをする同じ年の従兄弟こそ、ドナウ王国第一王子トリハロン。あと可愛い顔って言うな、結構気にしてるのに。

 しかしその言葉に分かってないなー、と肩をすくめて偉そうに返す。曰く、そんなものは権力にすり寄ってるだけで、等身大の自分を見てくれるわけじゃない、そして姉に毎日良いことしてもらうなんて最高じゃないかと握り拳を作って力説するが、姉じゃないといけない理由がどこにあるのだろうか。


「私だって王子の重圧が苦しい時があるんだ。そんな時に優しくて妖艶な身体の義姉が癒してくれるんだぞ、背徳的な関係と相まって最高の幸せじゃないか!!くそっ、これが持つ者の余裕という奴か!!

 畜生め!王子なんて言ったって姉の一人も手に入らないんだから、大した事ないよなー!女の子とみたいな顔してやる事やってるオイゲンさんの方がすげーよ」


 などと勝手にやさぐれている。全く持って理解しがたい思考だ。姉上の事は大好きだが、別に姉じゃなくて良いだろうと思う。それに背徳的ってなんだ、血は繋がってないんだから問題無いだろうが。あと女の子みたいって言うのやめろ。

 何度も顔の事を言われて腹が立ったので馬鹿の親指の付け根を握る。途端に苦悶の顔に変わるが、気にせず握り続けた。


「ぐおお、やめ、やめてオイゲンさん!私が悪かったから、もう手を離して」


 半泣きで訴えるので手を離してやった。どうだ、これに懲りて人の顔を茶化すんじゃない。


「なあ、オイゲン。こんなんでも一応この国の王子なんだから手加減してやれよ。確かにこの学舎の中では家格とか上下関係を忘れるのが取り決めだけど、ちょっとやり過ぎだぞ」


「―――分かったよ、ノイマン。ごめん、トリハロン。少しやり過ぎた。けど、あまり顔の事は言わないでくれ。言ったら今度は倍は強烈なのをやるからな」


 学友の一人のノイマンに窘められて、少しバツが悪くなったので馬鹿に謝る。だが、ノイマンもノイマンで王子を『こんなん』と評するあたりに、トリハロンの扱いのほどが知れる。

 ノイマン=デーニッツ、僕の友人。彼とは幼い頃から家族ぐるみで交流があり、従兄弟のトリハロンより性格が合うのか、ずっと友人として大切に思っている。そして妹の一人、イリスとは非常に仲が良い。いずれは彼と義兄弟になるのではと、よく未来を想像する。

 顔の事はよくからかわれる。母によく似ていると言われるぐらいなら構わないが、可愛いだの女の子みたいと言われるのは非常に腹が立つ。すぐ下の弟のアドリアスは父によく似たので余計に女顔が浮いて、それが嫌で武芸に力を入れてせめて振る舞いは男らしくしていようと毎日鍛錬を続けていた。それに体格は父に似て、同年代の中ではかなり高いので、最近は女の子に見間違えられる事がほぼ無くなったが、馬鹿はどこでも一人ぐらいはいる。


「いつつ、まったくオイゲンの性格は誰に似たんだよ。アラタ叔父上はもっと穏やかな人だってのに」


「それは君もだろうが。エーリッヒ陛下はもっと気品に溢れた素晴らしい方なのに、息子は品性下劣だし」


「――――こら!いつまでいがみ合っている!今から授業を始めるぞ、席に着きなさい!」


 馬鹿との罵り合いは第三者によって止められた。この学舎の総責任者ヘルマン=デーニッツ先生。王家の典医として信頼ある人だ。

 普通なら王子や多くの貴族の子弟相手では及び腰になるがこの人は違う。誰であれ悪い事をすれば遠慮せずに叱り飛ばし、時には拳骨を落とす。それはトリハロンも例外じゃない。ある意味、エーリッヒ陛下の次に、この国で怖いモノの無い人だ。



 授業は朝から午後までみっちりと詰め込まれている。今日の午前は数学と語学だが、他にも政治学、軍学、経済学、法学、史学などの授業が組まれているので、それら多岐に渡る内容を全て覚えなければならない。もちろん座学だけでなく、実際に体を動かし騎士と模擬戦をする時間もある。最低限、自らの身を護る術を修めるのも貴族の義務だった。

 午前中、みっちりデーニッツ先生に絞られてクタクタになった僕達は昼食を執って英気を養う。午後にも授業は詰まっているから出来るだけ食べておかないと途中で腹が減る。


「いやー午前中は肩が凝った。眠くはないけど、やっぱり体動かさないと気分が良くないよな」


 そう言ってトリハロンが煎った豆をボリボリと貪りながら、しきりに肩を動かしている。気持ちはそこそこ分かる。それにあいつは子供の頃から落ち着かない奴で、よく城を抜け出しては外で遊びまわっていた。屋敷の護衛騎士のラルゴが言うには、エーリッヒ陛下より母に似ているそうだ。母の子供の頃を知っている者は口を揃えて母はお転婆だったと口にする。我が母ながら王女としての自覚が無かったのか。


「オイゲン、そういえば午後は何の授業だっけ?政治なのは知ってるけど」


「確か内容は国内産業について。いずれ自分の治める国の中はちゃんと把握しておくんだぞ」


「あれかー。父から聞いた話じゃ、十年前と全然産業が違うらしいから、教える方も憶えるのに大変だって話だよな。今は当たり前になっている麻を使った製紙業とか製糖業とかは昔は無かったらしいし。

 それに新しく獲得した領土から入ってくる物品で本土も色々変化が大きくなったって聞いてる」


 普段馬鹿をやってるが、トリハロンは頭が悪いわけではない。寧ろ頭は切れる。その証拠に今のドナウ国内を正確に把握している。

 それに追従するようにノイマンも現在のドナウの産業を補足した。


「確かに。聞いた話じゃ昔のドナウの主力輸出品はガラス製品と蒸留酒だったけど、今はそれに石鹸に砂糖とナパームが加わった。他にもリトニア地区じゃあ毎年大量の穀物が収穫出来るから、安い麦が大量に入ってきて、ドナウ本土じゃ麦を作っている所も少なくなったらしい。

 そういえばサピン地区では大規模な製鉄所が建つって話だけど、レオーネ様は今そこにいるんだっけ?」


「そうだよ、着工の式典に招かれてる。カール叔父上と一緒に十年近く準備に掛けた大仕事の区切りが付くって言って家を出て、もう一ヵ月だよ。おかげで母上達の機嫌が悪くて悪くて」


「ははは、相変わらず君の家は家族仲が良い。兄弟だけでも君を合わせれば十人、そこに母が三人も居たら、それだけでも屋敷は手狭だろうね」


 ノイマンは笑っているが、父が居ない間の長男としては少し笑えない。母だけでなく弟達も寂しがるし、いざとなれば僕が父の代理を務めなければならないと思うと気が重い。

 現エーリッヒ王の実弟、カール叔父上が領主をしているサピン地区では、国内初の大規模な炉を有する製鉄所が建設され始めた。そこの基礎設計の一部に携わったのが我が父だ。その関係で先月からサピンに旅立っている。


「製鉄所ねえ。鉄鉱石の多く出土するサピン、燃料のコークスはプラニア、建造に必要な煉瓦はアルニアとリトニアで、そういえばドナウからは鉄の品質を上げるための石灰岩を使うんだろ。まるで今のドナウの小さな縮図だよな。

 実利以外にもアラタ叔父上は製鉄所を象徴として、ドナウが一つだって内外に知らしめたいのかな」


「そういう事らしいよ。多くのドナウの土地が協力して、一つの大きな産業を産み育てる。そして代価として安価で高品質の鉄製品がドナウ中に行き渡り、より良い生活をもたらしてくれる、って父が言ってた。

 製鉄所が出来たら、サピンで火砲なんかの兵器を造るらしいし、開墾用の農耕器具も大量に作られるようになるから、今よりさらにドナウは豊かになれるそうだよ」


「相変わらずレオーネ様は突拍子もない事を考え付く。実利だけなら考える者は多いけど、そこに政治まで絡めて動く人はそう居ない。学務長官だった死んだ私の祖父は余所者の彼と仲が悪かったらしいけど、それでも有能さは認めてたって父は言っていたよ。

 まあドナウがこれからも栄えていけば何でも良いさ」


 学友達も口々に凄いと口にするが、本当に分かっているのだろうか?息子の僕でも完全には理解し切れていないのに。

 特にわざわざサピンに造る理由は不明なままだ。ドナウ中から原料を集めるなら本土でも構わない。それに王族の直系であるカール叔父上が領主をしていると言っても、直轄領ではないのだ。今は叔父上が居るから仲良くやれるが、当主が代わって関係が悪くなれば最悪、サピン人を率いて反乱だってある。そうなったらドナウの一大武器生産拠点が失われるのではないか。

 父にそれを質問すると、笑っていた。


『身内でも人を必要以上に信用しない性格は父さんに似たな。大丈夫、それも盛り込み済みだ。けど、その理由はまだ教えない。いや、お前への宿題にしておこう。何年掛かってでもいいから自分なりになぜサピンに建造しなければならないのかを考えてみるといい』


 などと体良く宿題にされてしまったが、これも父の教育の一環、それだけ自分が期待されていると思えば嬉しさはある。


「―――おっと、鐘が鳴ってる。もう昼が終わってしまったか。さあ、これからまた退屈な時間が始まるぞ。みんな、もう一息頑張ろう!」


 父との話を思い出している内に、いつの間にか昼が終わってしまった。皆それぞれ腹を満たして眠そうだが、トリハロンから激を飛ばされたら居眠りなど出来ない。こうやって人を乗せる上手さは素直に従兄弟の方が上だと思う。品性下劣で腹が立つ事も多いが、人使いの上手さと人望は間違いなく僕より彼の方が上だ。それは誰もが認めている。

 この才能が王に必要だと父が言っていたのを思い出し、軽い嫉妬を覚えるが、僕自身は王になるつもりはないので、それで良かった。ただ、将来トリハロンに家臣として頭を下げるのは何となく気に入らないが、それだけでドナウに喧嘩を売るほど馬鹿じゃない。

 そして未来の王様のお言葉だ。喜んで聞いてあげようじゃないか。



      □□□□□□□□□



 トリハロンとオイゲン。共に13歳の従兄弟は、時に肩を並べて笑い合い、時にいがみ合う。それは十年後、二十年後に王と家臣という立場になっても変わらず、老いて子供達に立場を譲っても、その関係が崩れる事は無かった。

 口を開けば互いの悪口、罵倒は当たり前だったが、それでも不思議と二人には笑顔が消えない。それを周囲は奇妙に思いつつも、何も言わなかった。友人同士の語り合いに無粋な真似は必要無いのだ。



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