◆第二章/実行の日は近い
*躊躇いはプレハブ屋根の彼方に
隼人たちは匠の事を尋ねて回るが、問いかける全ての人間が「奴には近づくな」と言うだけで、その理由までは語ろうとはしない。
ここまで来ると、むしろ気になって仕方がない。こうまで頑なに拒まれ、逃走されては余計に知りたくなるのが人というものだ。
「なんなんだよ。これじゃ、諦めたくても諦めらんねえ!」
三人は「やっぱり諦めたいんじゃん」と呆れて肩をすくめる。
さすがに、訊くやつ訊くやつ「止めておけ」と言われれば諦めたくもなる。だがしかし、それと同時に知りたい衝動もふつふつと湧き上がってくる。
それは他の三人も同じようなものだが、隼人ほど知りたいとは思わなかった。
ここですっぱり「止めよう」と言われたら即座に解散して、家でバラエティ番組を観るくらいにはむしろ帰りたい。
溜息を吐きつつふと顔を上げた三人は、空き地から見えるプレハブ小屋の屋根と青い空がやけに目にしみた。
どうして、ここまで隼人に付き合っているんだろう。なんだかんだで隼人には勝てない。
いや、隼人自身ではなく、隼人の後ろにいる奴が怖いから言うことを聞いているに過ぎない。
なんだかんだで、隼人は組員の一人に気に入られている。
馬鹿だからかもしれないが、ある種のカリスマ的なものというか魅力というかは、少なからず備えているのかもしれない。当然だが、これはあくまでも三人の想像に過ぎない。
しかし、決して見栄えが良いという事でも、強そうという事でもない。ドラマで言えば、すぐに倒されるチンピラよろしくな外見をしている。
そんな隼人は、やはり諦めたくない様子だ。人は智の奴隷とはよく言ったもので、知りたいという欲求は果てがない。
それが、明らかな地獄の一丁目だとしても──
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