◆第一章/攻防戦
*一旦退却
「父は元自衛官ということから、現在は自警団を取り仕切っています」
「んなっ!?」
隼人は驚きで目を見開いた。
おおよそ、こいつから自衛隊の親父にたどり着ける気がしなかったし、連想なんてもってのほかだ。
どこぞの大富豪の息子とか言われた方が、いくらか理解出来るというものである。
それほどに、この周防 匠という少年は、のほほんとしていて掴みどころがまるで見あたらない。
高校生になっても中学のときのテンションが抜けない奴はいるが、こいつはむしろ何もかもが抜けきって、若者にあるまじき落ち着きようじゃないか。
そんな奴にくっついているせいなのか、健て奴もなんかやべえ気がする。同じようにへらへらしているがこの状態で普通は怖がるもんだ。
こいつの威光で自分も強くなった気でいるんじゃないだろうな。そうじゃないなら、馬鹿にしてもこれは馬鹿すぎる。
「おい、ヤバいんじゃね?」
仲間の一人が小声で隼人の背中をこづいた。
他の仲間二人も顔を強ばらせている。しかし、親がそうだからといって子供まで強いとは限らない。
そもそも、親も現役時代に強かったかどうかなんていうのも解らないのだ。とはいえ、この仙人じみた雰囲気には警戒せざるを得ない。
「気になさらず、続きをどうぞ」
「出来るかぼけえ! 覚えてろよ!」
隼人はしれっと発した匠に悪態を吐きつつ、指を差して仲間たちと共に足早に走り去った。
「何を覚えろというのだろう」
匠は小首をかしげ、慌てるように遠ざかる後ろ姿を見送る。
彼にとってみれば巻き込まれたようなものだが、気にしている素振りはまったくない。それどころか、どこか面白がっている風にも見える。
「さあ~」
そうして二人は、匠の家に向かうため、のんびりと歩き始めた。
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