第7話~政宗救出作戦2~

「では早速、兵を引き連れ奥に向かいましょう!」


成実は、家臣に兵を集め奥に、向かう準備せよと命じる。


「そうですね、一刻も早く殿に加勢せねばなりません。」

「では、準備が整い次第出発じゃ。」


僕は、唖然とした。

おいおい作戦とかないのか?

愛姫の子供達はどうするんだ?

妖魔もいるんだろ?これじゃ、わざわざ死ににいくようなもんだ。


まず、味方と兵力の確認だ。

それに僕は、まだ傷が癒えていない……せめて体が動く位にならなきゃ、戦など無理だ。


僕は、部屋を出ようとする愛姫に声をかけた。


「愛姫様!少しお話があります!」

「どうしたのです?」


僕は、なんとか起き上がり、膝まづき頭をたれた。


「そこまで、無理になさらなくていいですよ?あなたは、私の命の恩人なのですから……。」


僕は、顔をあげた。


「では、顔をあげたまま失礼します。」


体の自由がきかない僕に対して、愛姫は腰を落とし目線を合わせてくれた。


「話とはなんですか?」

「奥に向かうさいには、何か作戦があるのでしょうか?」

「いや、一刻も早く、殿に加勢することしか考えていないです。」


やっぱり……。


「それでは、無駄に犠牲が出るだけであります。」


「では、どうしたらよいのです?」

「僕に、いい策があります。」


僕は、この世界をある場所だと想定し考えながら話し始めた。


「2つの部隊に別れて、進みましょう!」

「2つとは?」


愛姫は、意味がわからず首を傾げている。

構わず僕は続けた。


「ひとつは、直に奥に向かうさい、愛姫のご子息達を救出していく。」

「もうひとつは、近隣の伊達一味に、殿様の窮地を知らせ援軍を確保しつつ、奥に向かう。」


愛姫は、気高い人、きっと反論してくる。


「あなたの策だと、殿の所まで時間がかかる、それに息子たちなら、私と殿の子です、覚悟は出来ているはずです。」


やはりそうきたか!


「しかし、忠宗様は殿様の後継ぎ、五郎八様も、徳川に嫁く事が決まっているはず。」


愛姫は、驚いた様子で僕の顔を見ている。


「何故あなたが、それを知っているのです?」


僕は、その問いに答えず話を続けた。



「更に、宗綱様は殿様より命を受けて、要の国の王となられるお方、竹松丸様は宗綱様の盾をつとめる役割がございます。」


「それに、近隣の、宗清(むねきよ)様、宗泰(むねやす)様、宗信(むねのぶ)様、に援軍を頼み、奥に向かわれた方が、殿様にとってこれ以上の助けはないはずです。」


愛姫は、唇を震わせながら僕を凝視している。


「あなたは、何者です?何故、まだ話してもいない子供たちの名前を知っているのです?近隣にいることもです!」


困惑される愛姫に僕は応えた。


「伊達政臣です。」

「今は、それしか言えませんが、信じて下さい、、、愛姫様を必ずや殿様の所までお連れします。」


僕の考えは、確信に変わりつつあった。


僕の真剣な眼差しに、愛姫様は、諦めたように溜め息をひとつした。


「あなたは、私の命の恩人、その恩人の言葉に偽りなどないはず……きっとあなたは伊達の守り神なのですね。」


愛姫は一人納得したように頷いている。

まぁいいか……きっと夫婦で鈍いんだ。


「政臣どの、その策でどうか、殿様まで導いてください。」

「無論です、愛姫様。」


あ……成実の喋り方がうつってしまったようだ。取りあえず、兵力の確認だ。


「愛姫様は、成実様と一緒に奥に向かい、その途中でご子息達を救出して下さい。必ずや生きているはずです。」


「あなたは?」


「僕は、体が動き次第、成実のご子息の宗実(むねざね)様とご一緒に近隣の伊達一味に援軍確保にいきます。」


「宗実のことまで知っているのですか?」


僕は、にこりと会釈した。


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