第6話~政宗救出作戦~


「姫様、皆は無事なのか?」


その問いに、愛姫は俯き口を濁した。


「五郎八(いろは)や忠宗(ただむね)は私を逃がす為、自ら囮になり行方がわからない……。」


愛姫は震えながら続けた。


「宗綱(むねつな)と竹松丸(たけまつまる)は、奥から逃げるさい追っ手の妖魔によりはぐれてしまった。」


愛姫は静かに泣いていた。


「では、政宗様は?」

「殿は、妖魔と戦う為城に残られと……。」

「片倉(かたくら)も一緒ですか?」


愛姫は頷き、涙を拭い凛とした表情で、成実に懇願した。


「どうか……どうか、力を貸して下さい、政宗の妻として、一人逃げるわけには行きません。」


成実は膝まづき、頭を垂れた。


「無論です、姫様」


僕など全く眼中に入っちゃいない。

でも、嫌な予感しかしない。


「あなたも、是非、力を貸して頂きたいのですが……。」


愛姫が、真剣な眼差しで、僕を見ている。

やっぱ、そうなる?

安易に答えたら命取りだ。

いくらご先祖様とはいえ、僕は死にかけたのだ。


生きることになんの希望はないが、面倒な事に巻き込まれ死ぬのはご免だ。


よし、丁重にお断りしよう。

だが、愛姫に先を越された。


「同じ伊達という名前、これも何かの縁だと私は思う……だからこの通り。」


一国の姫が、見ず知らずの僕に頭を垂れている。


「それに、殿様と同じ龍の刻印を持つあなたが、どうしても他人とは思えないのだ。」


そう言われ僕は、右手の甲に視線を落とした。そこには、鮮やかな龍の刻印がある。

これじゃ断り切れない。

それに、現代に戻る手掛かりもない。

僕は、一晩考えさせてくれと言おうとした。


(わしとの約束をわすれたか?)


どこからともなく、政宗の声が響いてきた

僕は、驚き部屋を見回した。

成実と愛姫には聞こえていないようだ。


はぁ……仕方ないか……。



「僕に出来ることがあるなら……。」


嫌な予感は的中した。

愛姫が顔を上げ、喜びをあらわにし、言葉を発っするのを成実が遮った。


「姫!、このような童に何ができよう?考えなおしては如何じゃ?」


成実は愛姫に訴えた。


「では聞きますが、、、あなたは、私を襲った妖魔を討ち倒す事ができるのですか?

このものは、傷つきながらも、優れた剣術で見事討ったんですよ!!!」


間髪いれず、愛姫は成実を説き伏せる。

流石は政宗の正室。


「じゃが……。」


と言いかけた成実に、愛姫はさらに畳み掛ける。


「くどいぞ、成実! 私の命令が聞けないのか! 私の命令は政宗の命令と思いなさい!!!。」


愛姫に叱責され、立場を忘れていた成実は、慌てて膝まづき頭を垂れた。


「ははぁ……ご無礼をお許し下され。」


愛姫はサッときびすを返すと、僕に笑いかけた。


「成実の無礼を許してくださいね、では、政臣どの改めてよろしくお願い致しますね。」


「はい、愛姫様。」


最初の気弱そうな女の子は、どこにいったのだろう?


逆らったらモンスターより怖ぇぇぇ。


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