第5話~ご先祖様~

あれ? めごという名前聞き覚えがあるぞ!

確か……政宗の正室。つまり奥さん。

つかご先祖様!? あっ!? 政宗もご先祖様だ!


僕も、頭が鈍かったようだ。

鳩が豆鉄砲喰らった顔を顔をしている僕に、彼女は慌てた。


「ごめんなさい、私ったら、えと、あなたは?」


むぅ、どうしたものか?


目の前にいる人はご先祖様かも知れないし、本名言ったほうがいいのか迷う。

それに、政宗は昔の言葉っぽいが、彼女は現代語に近い。


一体、ここはいつの時代でどこなんだ?

痺れを切らした彼女は聞いてきた。


「名無しかい?」


んなアホな!! 僕は、ムッとした表情で答えた。


「僕は、伊達政臣(まさおみ)だ。」


つまるとこ、伊達の末裔だ。


「伊達ですって?……偶然ですね、私も伊達と申します。」


と、彼女は、いや、ご先祖様らしき人は言う。僕は、しくじったと思い、面倒な事に巻き込まれると予感した。


となるとだ、ここはご先祖様の時代なのか?

いやしかし、政宗は刀に宿っているみたいだし……陣という国なんて昔の日本にはない……。


ますますわからん。そうだ政宗に聞けばいいじゃん!


僕は、近くにあるであろう、妖魔刀の政宗を探した。が、見当たらない。


どこにいったんだよ? 更に、部屋を見渡そうと体を動かす。


「つぅっ、、、!」


モンスターとの戦いで、負傷した右腕が痛んだ。腕を見ると綺麗にさらしがまいてある。


「まだ、無理ですよ!」


くそっ! 動かない体と、どこだかわからない僕は苛立ちをかくせなかった。

その時、部屋の外から、誰かが話ながら歩いてきた。


「例の童は、目が覚めたのか?」

「ええ!ですが、まだろくに体が動かせないようで……。」

「まぁ、無理もない。わしらでも、手に負えない怪物を相手にしていたんじゃ。」

「生きているほうが不思議なくらいじゃ。」


襖の向こうから聞こえる声は、どこか聞いたことがあるような気がした。

スーッと襖の開く音と同時に、さっき聞こえた声の主が現れた。

僕を見るなり、ニヤリッと笑い、高々と喋り始めた。


「童、調子はどうじゃ?動けるかの?」


わっぱ? 馬鹿にしてんのか? このおっさんは? 僕は、ギラっと睨んだ。

おっさんは偉そうに続けた。


「なんじゃ?その目は、倒れて死にそうな所を、わしの慈悲で助けてやったといいうのに……恩知らずなやつじゃ!」


なっ! じゃあ僕を助けてくれたのは、この嫌みなやつか?

僕は、


「まぁよい、童よ、名をなんと申す?」

「伊達……政臣です。」


これで、2回目だよ名乗るの!

正直めんどい。


「ほう!童も、伊達と申すか?」


も!? まさか?


「わしは、伊達成実(しげさね)この、陣の国の王じゃ」


げっ!? これまたご先祖様じゃないか!

伊達成実といえば、伊達政宗の家臣で、伊達の三大勢力のうちの一人にあたる人である。


「陣王様、助けて頂いてありがとうございます。」


と愛は、深々と頭を下げた。


「なんと、恐れ多いあなた様が、頭を下げる必要などありませぬ。」


愛に対して、しどろもどろになる。

ということは、やはり政宗の正室、愛姫その人?


「良いのだ。いくら私が政宗の妻だとしても、奥(おう)の国から、逃げ延びて来た事には変わりない。」


外見は、僕とあまり変わらないように見えても、大人ということか……。

女って謎多き生き物だな……。


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