第3話~我が名は政宗~

右足を前にだし、背筋を伸ばす。

竹刀をモンスターに対して右斜め前に構える。僕がいつも得意とする正眼の構え。


「ふぅぅ……。」


モンスターはジリジリと間合いを詰めてくる。僕も負けじと間合いを詰めて行きたいところだが……。怖くて動けねぇ。

無意識に後退りする。


「うわぁっ」


足がもつれ後ろに転んでしまった。

痺れを切らしたモンスターがこれ見よがしに襲ってきた。


「がぁぁぁあああんんんぁぁぁおおお」


凄まじい咆哮と共に飛びかかってくるモンスター。僕は、転んだまま、竹刀で受け流そうと構えた。が間に合わなかった 。


バキッグシャ


「ぐわぁぁぁぁあああ」


竹刀は真っぷたつに割れ、右腕の皮膚はモンスターの爪で引き裂かれた。やっぱ駄目か……。


僕は死を覚悟した。ふと、女の子が気になり辺りを見回した。


「無事逃げたかな?」


木の陰に隠れている。よしよし、、、ちゃんと隠れている。じゃねぇ!逃げてねぇぇぇぇえええ!アホかこの子。


「がぁぁぁあああんんんぁぁぁおおお」


咆哮で現実に戻る。

転がりながらもモンスターの攻撃を掻い潜る。このままじゃ殺されるのも時間の問題だ。


何かないのか? こんちくしょう!


「力が欲しいか?」


唐突にそれは来た。頭の中に直接響いてくる。これもベタすぎる展開だが、死ぬよりマシだ。


「力が欲しい!誰かを守れるくらい強い力が欲しい!」


決まり文句みたいけど本心だ。


「よかろう!だが、力を貸す代わりにわしの願いを叶えて欲しい!」


これまた教科書通りだが、別になんの予定もないし、それに人の役に立つなら構わないと思ったが……


ん?


てか今、話をしている人は、人なのか?

モンスターが目の前に迫って来ている。

どうやら悩んでる暇はないらしいな。


「僕に出来ることならなんだってやってやる!」


どうだ? O.K.か?


「よかろう。汝、我が名において、血の契約を結ぶ。」


血の契約? 悪魔かなんかの類いか?



「我が名は政宗、さぁ、天に手を翳し、その名前を喚ぶがいい。大いなる力は、汝の思うままだ。」


政宗?  妖魔刀の?

言われるままに手を空に向かって伸ばす。


「妖魔殲滅の王の名の元に我に力を与えよ!」「出でよ!政宗!!!」


頭の中で浮かんだ台詞をなぞる。

それは一瞬だった。

翳した手に龍の刻印が現れ稲妻と共に、政宗は僕の前に落ちてきた。


「これが、政宗?」


昔、じいちゃんが言っていた、、、

妖魔を断ち切る刀

家に代々伝わる伝家の宝刀。


「じいちゃんと一緒に消えたはずだったのに……?」


疑問が増えるばかりだが、今は目の前のモンスターが先だ。

しかしこの政宗という刀、まるで生きているみたいだ。


刀身には見事な龍が彫ってあり、鍔から柄にかけて龍が巻きついている。

見とれてまうほどの美しさと妖しい輝きを放っている。


「がぁぁぁあああんんんぁぁぁおおお」


モンスターが咆哮する。

しかし、襲ってくる気配はない、寧ろ怯えているみたいだった。


これなら……「いける!!」


と、同時にじいちゃんの手ほどきを受けていた剣術を思い出した。

先に思い出していたら、竹刀でも勝てたのに……。普段は本気を出さなくても勝てていたから忘れていたのだ。


一応高校生になるまで中学では、偉業の全国3連覇を達成していた。

んな自慢話は後だ……。

久しぶりに使えるか不安だが、やるしかない!


剣術の流派は、覇王一刀流。


僕は、刀を鞘にいれ抜刀の構えをとる。


「いくぞ……!」

「覇王一刀流……一の太刀。」

「双龍覇斬!」


こうして、僕は政宗に選ばれた。


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