1-6

「ねぇ、玲……もしかしてあのこと引きずってるの?」

腹パンされた痛みが引いたころ、公園のブランコに座り澪は問いかけてきた。なんのことかはわかっていた。

「ねぇ、玲……あれは仕方なかったんだよ……永久のことは……仕方なかったんだよ……」

澪はそう言って私を抱きしめてくる。私はどんな表情をしていたのだろうか。澪が心配そうな顔をしていたから相当酷い顔をしていたのであろう。

確かに私は永久のことを引きずっている。何故なら私は大親友だったはずの永久を殺したからである。


_________


私が永久に初めて会ったのは丁度1年前バレンタインの前日。その日はすごい雨で体に当たる雨が私の体温を奪っていったことを未だに覚えている。初めて会った時、私は永久についてすぐに受け入れられることが出来なかった。何故なら永久は澪の別の人格だったからである。最初は嫌な奴だと思っていたがその印象はいつの間にか消え去り、私は最初名もないその人格に永久という名前を付けた。何で永久という名前を付けたのか、それはもう覚えていない。ただ、ふと頭に浮かび上がってきたその名前を私はその人格につけた。

澪は当初痴漢されたり、レイプされかけたりすることがかなりといっていいほど多かった。

私は常に澪のことを守ってくれる永久にとても感謝していた。信じ切っていた。

しかし、数週間ほど前、私が澪と喧嘩したときにその永久からあることが打ち上けられた。

「俺が仕組んでたってまだ気が付かないの?今までのこと全部」

はじめはどういうことか全くわからなかった。いや、どちらかというと信じることが出来なかった。

「お友達ごっこ、楽しかったよ?あー友達ごっこじゃないか。親友ごっこだな」

永久は笑ってそういった。裏切られた。いや、裏切られたんじゃない。元から使える駒として思われていただけだ。

「俺これから澪の体で他の男で遊ぶからさ、もう関わんなよ?あー、それと澪は消しとくから、楽しかった記憶はお前の中だけで楽しみな」

その言葉を聞いたとき、今まで気合でなんとかしているような心の芯が折れた気がした。

最後まで親友でいれると思っていた。だけど、もうこいつは親友じゃない。一人の人間として見ていたが、そんなことはもう一切ない。信じた私がバカだった。正直者が馬鹿を見る。意味合いは違うんだろうがもうどうでもよかった。ただ、私の中で一つの答えは出ていた。

「……ねぇ、澪、お願いがあるんだ。」

永久が一度澪に変わる。そう言ったので澪と変わったときに私は澪に一つ頼んだ。

「永久を消して」

それは私が澪を守るためにできる。唯一のことだった。

私には、人格である永久を消すことが出来ない。できるのはその人格の元のようなものになっている澪だけだった。

永久は消えたが、心配が消えたわけではなく、ただ、永久が嘘をついていた可能性もあった。

だから、私は自分がしたことが正しいのかわからない。そして、直接ではないとはいえ親友を殺したことが、結果的に良かったのかそれすらもわからなかった。


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