時間が来るまでに

１－２

『お前は生きていちゃいけないんだ。何で生きているんだ。クズのくせに』

かれこれ五年前から聞こえている、いや、脳内で響くような声。バイト中だろうと、授業中だろうと、家にいるときであろうとこの声はいきなり聞こえてくる。そして、この声が聞こえるときは決まって声を出しにくくなる。一切出せないというわけではない。声の大きさも普段より小さいというわけでもない。ただ言いたいことを言うときに口は動くが声は出ない。ただそれだけだった。

＿＿＿＿＿午前１０時

「お先に失礼しまーす」

「あ、玲（れい）ちゃん、まだ少し時間ある？」

退勤登録をする前に店長が聞いてきた。

「まぁ、学校行くまでまだ１時間ぐらいあるんで大丈夫っすけど、どうしました？」

「いやー、１０時から来る人がちょっと来れなくなっちゃったみたいでさ、代わりの人が車でもし問題なかったら少し頼める？」

少し声が聞こえ始めていたから断ろうと思った。でもまだ軽い、大丈夫、そう感じた。

「わかりましたー、多分30分ぐらいっすよね」

時計を見ながら大体の見当をつけてそう言う。

「そうだねー、多分それ位じゃないかな？」

「ういっす」

声が大きくなってくることを感じながら表に向かった。

ただ今回は＿＿＿＿＿＿

『お前が必要とされてるのはこれぐらい、利用価値もこれだけなんだよ』

この言葉に変わっていた。