Day2‐9

 涼香は、またスキップをしながら部屋へと向かっていた。夜通し見張りをしていたのに、いつものような疲れはない。

 暫く会っていなかった旧友達との雑談という名の"見張り"は、彼女の気持ちをたいぶ楽にしていた。

 いつもは伸一としか話さないからか、随分と視野が狭まっていたらしい。色々なゴシップネタを入手し、彼女は高校生に戻った気分でいた。

「お、涼香。ご機嫌だな」

 声のした方を振り返る。

「佐伯隊長! お疲れ様です」

「そんな、かしこまらなくていいよ」

 姿勢をただして敬礼する彼女を、佐伯はいさめた。

「今日の班割りがよかったみたいだな」

「長らく会っていなかった友達と話せたので、本当に楽しかったです」

「見張りが楽しいか」

「……すみません」

「いや、良いことだ! 良い時間になったみたいで、俺も嬉しいよ」

 そう言って、涼香の頭をガシガシと撫でる。

「今日は特訓の予定だったんだが、ちょっと用事ができてしまってな。また明日でも良いか?」

「……わかりました」

「そんなにしょんぼりするな。ちょっとな、怪しい動きがあったんだ」

「まさか」

 佐伯がゆっくりと頷く。

「やつらが動き出したらしい。一昨日の夜から怪しいと浅川が探っていたんだが、ドンピシャで当たった。

 まだ動きはないが、いつ何をして来るかわからん。準備しておけ」

「わかりました。あの」

「これはまだ極秘だ。他言無用で頼む」

「わかりました!」

「じゃあ、また明日な」

 佐伯が片手を挙げながら立ち去っていく。その後ろ姿をじっと見つめながら、昨日、葵に言われたことを思い出していた。

『野村 伸一には気を付けね』

 伸一が関わっていないことを祈りながら、涼香は自分の部屋へと歩みを進めた。

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