Day2‐8
「さて、みんな揃ったところで。今日の班割りはそこに掲示してある。確認してくれ」
佐伯が言うと、わらわらと掲示板の前に人だかりができる。
涼香はさっきの葵の言葉が頭から離れぬまま、立ち尽くしていた。
「君が三浦さんだよね」
後ろから尋ねられ振り返る。
「そうですけど」
「今日、同じ班みたいだからさ、俺たち」
見知らぬ彼の後ろでは三人が談笑していた。
「俺、芳仲。よろしく」
差し出された手を握る。
「三浦涼香です……よろしく」
「君と一度話してみたかったんだ」
「有名だもんね」
キシシと笑いながら芳仲の後ろから、小さい男が顔を出した。
「ボク、西浦。そんでこいつらが、中嶋と曽屋」
よろしく、と紹介された二人も手を出す。交互に握りながら、どこかで見たことがある顔だな、と涼香は思った。
「私達、三浦さんとは施設で一緒だったんだけど。覚えてるかな?」
曽屋と呼ばれた方がおずおずと尋ねた。
涼香の記憶の断片が引っ掛かる。
「もしかして、ハズキちゃん?」
「そうそう! こっちが喜一郎だよ」
「キチくん? ……髪型違うし、大きくなったからわからなかったよ」
昔は涼香より小さかった身長が今では、頭ひとつ分飛び出ていた。髪の毛も何故かオレンジ色に変わっている。
昔、弱虫で何かあるとからかわれていた人と同じには見えない。
キシシ、と彼は笑って「久しぶり」と再度手をのばす。その手を今度はしっかりと握った。
「中嶋くんは初めまして、ですよね」
その言葉に彼は静かに笑って、小さく頷く。
「よし。親睦も深まったところで、ボク達も行こうか!」
芳仲はそう言って歩き出す。
今日は楽しい見張りになりそうだ、と涼香は心の中で笑った。
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