Day2‐6
はしゃぐ彼らをなだめる様に、鐘が鳴り響く。
「もうこんな時間か」
"オリヅル"の中は常に行動時間が決められていた。今の時間に鳴り響く鐘は、夜の見張り交代の合図になる。
今日は涼香が深夜帯の見張りにつく予定だった。
「私、行かないとだ」
「今日は涼ちゃん、係なんか。このまま話してたいんじゃけどね。仕方ないのう」
「そうだね。眠らないように気を付けないと」
「俺はこの間、ちと寝たけえね。あんまりばれん」
「うわぁ。それ、ちくっちゃおっかな」
「それだけは堪忍してくれ」
「冗談だよ。……じゃあ、行かないと」
「気を付けてのう」
「うん。ありがと!」
涼香は駆け足で部屋へ向かう。今日は珍しく、佐伯も見張りにつくから、彼女はいつもよりはしゃいでいた。昼過ぎから特訓が始まるため、半日以上、同じ時間を過ごせる。しかも同じ場所になれれば、朝まで一緒にいられる。勿論、明日も昼過ぎから特訓があるから、実質1日半一緒に過ごせるのだ。
彼女は遅れない程度にスキップする。
その後ろ姿を、伸一はじっと見つめた。遠くなる背中が、前より逞しくなったように感じる。
環境が変わっただけで、人はこんなにもイキイキとするものなのだろうか。それが驚きでもあるし、少し悲しくもある。
ずっと側で見守り続けてきた涼香がどんどん遠くなっていく気がしていた。
そして、その背中にのし掛かる運命が余りにも重いことを、彼は知っている。
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