Day2‐4

「涼ちゃんは、ほんとに偉いのう」

「私は別に」

「今もきっと責任感じてるんじゃろ? そういうところ、尊敬するわ。俺はなるようになれって精神じゃけえ」

「伸一はマイペースだもんね」

「それが俺の魅力じゃ」

「ほんと、プラス思考」

 涼香は笑う。それを見て伸一も安心したように微笑んだ。

「しっかり準備せな。もうすぐ何か起こる気がするんじゃ」

「伸一お得意の直感?」

「……まあ、そんなところじゃ」

「どんくさいくせに直感だけは凄いよね」

「だけって、酷いのう。俺の剣と弓の腕前知ってるじゃろ?」

「確かに、凄い。そこだけ、抜きん出てすごい」

「また、だけって言う! 素直じゃないのう。

 凄いね、尊敬するよって一言で俺は満足するんに」

「あー……凄いねえー。尊敬するねえー」

「馬鹿にしよって! 俺がいるから、涼ちゃんは今ここにいれること、わかっとらんのう」

「何それ! 私は自分で頑張って、ここにいるの!

 他人の敷いたレールの上なんか、歩きたくないし」

「俺は他人なのか。寂しいこと言うのう」

「そっちが先に言ったんでしょ!」

 ぷいと横を向く。伸一が「ごめん、ごめん」と笑った。

「でも、まあ。あのとき『大丈夫』って言ってくれたの、伸一でしょ?

 あの言葉が無かったら、本当に私はここにいなかったかもしれない」

「涼ちゃんなら、医療部員じゃの」

「うん。本当にそうだったかもしれない。

 だから、ちゃんと、感謝はしてる」

 すれ違う人を見つめながら呟く。

 食材を両手に歩いていく人。トランシーバーで話ながら駆けていく人。大勢で楽しそうに、どこかへ向かう人々。

「ほんとに、感謝してる」

 伸一の目は、寂しそうな顔を映していた。

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