Day1‐22
「よくできるのう」
佐伯が唸る。
涼香が腕を動かし始めてから、五分程過ぎていた。伸一も隣で腕を振り回しているが、まるでなってない。
「父が教えてくれたのは、この為だったのね」
そう言って動きを止める。同じ動きをずっと続けたにも関わらず、腕は軽い。心も軽かった。
「その勢いなら、本当にこれが使えるかもしれんのう。じゃけど、こいつを使いこなすには少し訓練が必要じゃ」
彼はそう言って少し悩んだ後、涼香に向かって微笑む。
「特訓は俺がやろう」
「……貴弘」
「涼香がどんな動きをしているか間近で見て、俺も勉強したいんじゃ。
隊の訓練はお前独りで平気じゃろ、小雪」
「あなたが特別扱いしたら、困るのはこの子なのよ」
「何を言うとる」
佐伯は本当に楽しそうに笑った。
「元帥が特別扱いしたんじゃ。俺がしたって、何も変わらんけえ。よか」
のう、と涼香に問いかける。彼女は何度も何度も頷いた。
「あのう。それ、俺も参加できます?」
伸一がそろそろと腕を挙げながら聞く。
そんな彼の首を抱え込み「お前は特別じゃないけえ。アホか」と佐伯が笑う。
涼香はそんな二人を見つめながら、この時間が続けばいいのに、と切に願った。
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