Day1‐21

「その剣達を自分の腕のようにお前の父親は振っていた。彼の技術を誰もが盗もうとしたんじゃ。

 じゃけど、できんかった」

 そう言って、佐伯は左右の手を別々に動かし出した。

 右手は肩から思い切り回す。

 そして左手は手首のみで三角型を描く。

 2回ほど三角を作り、手を止めた。

「常人じゃと、途中でわけがわからなくなる」

 やってみろ、と言わんばかりに顎をしゃくり、涼香を促す。

 父が言っていたのはこういうことか、と彼女は独り微笑んだ。

 右手を伸ばす。

『真っ直ぐじゃ、涼香。お星さまを掴むみたいに、腕をぐーんと伸ばすんじゃ』

 ゆっくりと円を描く。

『お星さまを入れる箱を作らないかん。最初はゆっくり、それから先は腕に任せるんじゃ。涼香の腕は、ゆっくりが好きかの。違うなら早くするんじゃ』

 右手の筋肉が解れたタイミングで少しだけ力を加えた。

 それで早く回ってくれる。

『次は左手じゃ。お月さまは向こうのお山から昇ってくる。涼香もお山を作れれば、お月さまが力を貸してくれるけえ。だけど遠くに作っちゃ駄目じゃ。自分のすぐそばに、大きいお山を作ってみい』

 涼香は左手を腰の辺りで動かし始めた。

 最初はゆっくりと、小さく。だんだん大きく、早く。

『これが、お月さまとお星さまの力を借りる方法じゃけえ。忘れんように、毎日やるんじゃ。

 その時が来たら、みんなが手を貸してくれる』

 みんなが、という意味。今日、やっとわかった。

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