Day1‐14

「泣いたり笑ったり拗ねたり、忙しいやつじゃのう」

 佐伯が近づいてきて頭を撫でる。

「お前ら二人は切っても切れない縁がある。大丈夫じゃ。すぐいつも通り仲直りできるじゃろ」

「伸一と縁があっても嬉しくない」

「またそんなこと言いおって。良い奴じゃ、あいつは」

 そう言って、佐伯が指差した方を涼香も見つめた。

「……言い過ぎたから謝ろう思うて帰ってきたんじゃ」

 伸一がそっぽを向きながら話す。

「ほらの。良い奴じゃ」

 佐伯がにこにこしながら、涼香の背中を押した。

「ほいじゃの。おっさんは邪魔じゃけえ、先に行っとるで。

 お前さんたちも遅れんようにの」

 左手をヒラヒラさせながら佐伯が立ち去る。その後ろ姿に、涼香は思い切り舌を出した。

「涼ちゃんも素直じゃないのう」

 伸一が笑いながら歩いてくる。そんな彼を横目で見ながら「あんたもね」と答えた。

「俺はいつも素直じゃ」

「どこがよ」

「いつも言うとるけえ。

 涼ちゃんは俺が守るけえね」

「……幼なじみなんだから、当たり前じゃん」

 頬を膨らませる涼香の頭をポンポンと叩く。

「まあ、そういうとこは素直じゃの」

 頬を膨らませるときは喜んでる証拠じゃ、と心の中で笑いながら。

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