Day1‐11

 わき目もふらず歩き続ける涼香の後を、伸一は必死で追いかける。

「涼ちゃん、嫌いなんはわかるけど。佐伯さんの彼女さんやで?ちゃんと挨拶せんと」

「うるさい。黙って。彼女なんかじゃない。佐伯さんは利用されてるだけ」

「そんなん言うて、ちゃんと根拠はあんねやな?」

「……ないけど」

「人のこと酷い男とか言うとったけど、お前も結構酷い女じゃ」

 その言葉に涼香は足を止めた。伸一も驚いて前のめりになりながら止まる。

「……私がお前って言われるの、嫌いなの知ってて言ったんだよね、今」

「こうも言わんと止まらんじゃろ、涼ちゃん」

 しかめっ面で伸一を睨み付ける。

「佐伯さんのこと、ばり好きなんは知っとるよ。だからこそ、その人が好きな人のことは大切にせなあかんやろ」

「なんで私まで大切にしなきゃいけないのよ」

「だって、そうすることが相手を理解することに繋がるじゃろ? 俺はそう思ってそうしよる」

「……伸一は私じゃないんだからわからないよ」

「わかるわ」

 伸一が吐き捨てるように言った。涼香は驚いて視線を逸らした。

「俺にも……わかるわ」

 そう呟いて、今度は伸一が先だって歩きだした。

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