Day1‐10
「さて、お二人さん」
佐伯が改めて涼香と伸一に向き合う。
「今日が運命の日じゃ。お前達がどんな答えを出しても、俺は反対せん。それがお前達の道じゃけんのう。
じゃけど」
並んだ二人の耳元で囁く。
「外に出たら生きてはいられないと思え」
佐伯は一瞬真面目な顔をして、それからすぐに笑顔に変わった。
「それはどういう」
問いただす伸一の肩を握る。その痛みに彼は呻いた。
「貴弘。後輩いじめは駄目よ」
「……浅川副隊長」
「あら、涼香ちゃんと伸一くんね。久しぶりね。
あ……そっか。今日がその日なのね」
「小雪さん、お久しぶりです」
「二人とも大きくなって。お似合いね」
「いやぁ。そんなこと言うたら、涼ちゃんに殴られるけえ」
「……」
「涼香は小雪が来るといつも緊張するのう。それくらいいつも静かなら良いんじゃが」
「貴弘も伸一くんもやめなさいよ。涼香ちゃんも女の子なんだから。ねえ?」
「……伸一、行くよ」
「え、でも、せっかくだし」
「佐伯隊長、浅川副隊長。本日もお勤めご苦労様です」
涼香は昔から叩き込まれてきた最高礼を一つ添えて、一人歩きだす。それにつられるように、伸一もぺこぺこしながら歩きだした。
「……ほんと、私嫌われちゃってるわね」
「なんでかのう。昔はこゆちゃん、こゆちゃんってなついてたのにのう」
「貴弘、あなた、なんでかわかってないの?」
「なんで俺なんじゃ?」
小雪は呆れたように溜め息をつきなから二人が歩いていったのとは別の方へ、くるりと向いて。
「ほんと、佐伯隊長は真面目な方ですこと」
それからほくそ笑む。
「また後でってことは、まだまだ長い付き合いになりそうね、涼香ちゃん」
誰にも聞き取れない声で呟いた。
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