Day1‐4

「今日は俺が払うけえ、気にせんでええよ」

 伸一がそう言って出口へ向かう。その途中で何もないのにつまずいた。

「……やっぱり運動神経、悪いじゃん」

 涼香は笑いながら呟く。

「さて、行くかのう。俺らの運命を決めに」

 伸一も寂しそうに笑った。

「その言い方……ちょっと嫌」

 歩きながら涼香が呟く。

「まるでここで決めたら最後、後戻りできないみたいじゃない」

「後戻りはできないで」

「でもできるって考えてないと心が持たないよ」

「涼香」

 彼女は驚いて立ち止まった。伸一がまた寂しそうに笑っている。

「後戻りは……できんのじゃ」

 その声色が優しくて、涼香は何故か身震いした。

「ここで決めたが最後、俺たちは敷かれたレールの上を真っ直ぐ、余所見せずに、歩いていくだけじゃけん。みんながやっているようにそうであるように。涼ちゃんもそうじゃ」

 そう言って、伸一は彼女の手を握る。

「どちらにしろ、俺がついていくけん。涼ちゃんの未来は安泰じゃ」

「何それ」

 涼香は手を振りほどいて、ぐんぐん歩いた。

 ほんと、調子のいいやつ。小さく呟く。

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