青春と鉄の雨
「時代の最先端を行くのは、悪の
ブラスコは笑う。
「確かに俺もお金大好き。なら、ガスパールファミリーにちょっかいかけたのは?」
「潰す為だよブラスコ」
雪村は足を組み直しながら、煙草の灰を足元に落とした。
「俺は
今度はテニアが尋ねる。
「なら会合での、ガスパールファミリーの暴走は?」
「会合の前に、北区の情報屋にガスパールファミリーへリークさせたのさ。トニス・ダウアは勢澄会が連れて来たドブネズミで、臓器売買のデマも俺達がやったとよ。無論そのリークも勢澄会からのものだとは伏せ、極秘ルートで手に入れたネタって事にしてな。北区でも信用のある情報屋だったからな……。我が儘聞いて貰うのに、高い金を積んだもんだぜ」
「大金を前に誇りを捨てましたか。まあガセを流す情報屋とは、その方の商人生命はお終いですね」
「まァ金に関しては、お嬢ちゃんが
雪村は言いながら、視線をテニアから少女へ流した。
少女は答えないが、驚きに目を見開いている。
その表情に微笑みながら、雪村は続けた。
「……何年も前から囁かれていた、麻薬の密売が起きた時点で、北区は徐々に崩れてたのさ。元はそこで暴れ回った身分だ。隙を突いて潜り込むなんざお手の物。お嬢ちゃんの動向は、ある程度は把握させて貰ってたぜ。 その行動範囲から情報を得ようとするなら、どこの情報屋にガスパールファミリーへのリークを頼めば釣れるかもしれねえってよ。……謎の魔法使いに狙われ、裏では壊滅を企んでいる勢澄会との会合……。ガスパールファミリーも最初から、隙を見ては先にこっちを潰す気だったのさ。そこに狙ったように、お嬢ちゃんの登場さ。痺れたぜ。何もかもが思い通りに運ぶ。唯一の予想外はブラスコ……。お前だったが」
「俺ぇ?」
まるで見当が付かないと、ブラスコは肩を竦めた。
「あァ、お前だ」
まだ僅かに残る煙草を、雪村は足元に落とすと踏み付ける。
「……とは言っても、お前は本当によくやってくれた。今は属していない身分に拘わらず、昔のように身を挺し、お嬢ちゃんから俺を守ろうとしてくれたんだからよ。裏で策略が張り巡らされた、何も知らない中でもだ。嬉しかったぜ。誇りに思い、昔を思い出した……。お前が右腕だった頃を」
ゆったりと掛け直した雪村は、天井を仰いで過去に馳せる。
「内戦が終わって間の無い、どこも貧乏で
誰も、何も言わない。
ただ雪村と、ブラスコを見ている。
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