確執
「……もし、ガスパールファミリーの誰かによる差し金としたら、可能性があるのは若い衆の方だ。クスリだ臓器売買だ、そんな儲け方は許せねえって、ファミリーへの反発を始めた連中だな。臓器売買の真偽はまだ不明だが、内部抗争は本当らしい。今はそんな噂を立てられちまう程、覇気の無えボスは信用出来ねえって
テニアが口を開く。
「つまりあの魔法使いは、ガスパールファミリーの若手により雇われ、彼らの独立か、組織の乗っ取りを助ける為に現れたと?」
「にしてもその魔法使いの動きが派手過ぎると思うが。 邪魔
「当然ガスパールファミリーは、あの魔法使いについてノーコメントですよね?」
雪村は胸の前で両手を組むと、くねくねと身を
「だぁってそんな事ぉ、ギャング殺しで食ってる勢澄会になんて言えないしぃ。あくまで北区エデンの堅気の方から、トニス・ダウアについて調査を頼まれただけで、ガスパールファミリー直々にこちらのゴタゴタ何とかしてくれなんて、貸し作る上に面子丸潰れな事言う訳無いしぃ」
「見栄がお好きな生き物で。相変わらずなんですね、ガスパールファミリーさん」
テニアは頬杖をつく。
かつてアルヴァジーレを支配するギャングは、
それはガスパール、コンカロッサ、ユマークの、三つのファミリーからなり、当時最大勢力を誇っていたのは、ガスパールファミリーだった。
その勢いは北部と西部、アルヴァジーレの内側の円、ギャングの巣窟である危険域『ダニエル』の半分を支配し、残りの半分をコンカロッサとユマークで二分していた程で、当時アルヴァジーレの武器輸入全てを担っていた力もあり、やがてガスパールファミリーが、この街の全てを得るだろうと言われていた。そこに雪村率いる、当時新勢力であった勢澄会が外部から現れ、ガスパールファミリーから西部を奪い取って今に至る。もう二十年以上も昔の話であるが、その因縁から、ガスパールファミリーの勢澄会への感情は、お世辞にもいいとは言えない。
縄張り争いなどギャングに付き物。ガスパールもコンカロッサもユマークも、かつてはほんの弱小組織から始まっている。アルヴァジーレの全てを支配したギャングも未だいない。そうして移り変わっていく中でこそ、この街は成り立つ。
それでも未だ、ガスパールファミリーが勢澄会に恨みを持ち続けるのは、当時ボスであったドグロス・ガスパールを、雪村が殺したからだろう。
現ボスであるザック・ガスパールは、ドグロスの息子だ。
小さい。
テニアは内心吐き捨てる。
ギャングのくせに誰が死んだだ殺されただ……。そういう世界に頭までどっぷり浸かり、ましてその頂点に手が届きかけた男だ。五体満足で死ねるというのが奇跡というもの。
まあギャングとはそういうものか。世間から弾き出された分並の人間より、仲間や家族を重んじる。故に、その中で決めたルールを、何よりも厳重に。それしか彼らという人間達の、道標になるものは無いのだから。そもそもまともに生きればよいというものを。まあ縁もあるだろう。悪魔と言えど、運命には抗えない。
ギャングの起こす厄介事で、飯を食う勢澄会。トニス・ダウアの調査から拾い上げたのは、ガスパールファミリーの内部抗争と、臓器売買の噂。そして突如現れた、正体不明の魔法使いと、それによるガスパールファミリーの壊滅宣言。
この先の勢澄会の目的は、ガスパールファミリーからの口止め料か。助太刀で稼ぐ仕事のチャンスか。あるいはアルヴァジーレの武器事情を担う、そのパイプか。
かつて勢澄会がガスパールファミリーから西区を奪った際、ガスパールファミリーによる独占状態だった武器輸入は、かなり自由なものとなった。然し有力なルートはまだガスパールファミリーの手にあり、依然最も良質な武器を保有しているのも彼らである。
「これを機に、今度こそガスパールファミリーを潰すおつもりで?」
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