第39話「カルマ兄さんとの衝突!?」
「ん~いきなり金持ちになったな。こんな大金をずっと持ち運ぶわけにいかないよなぁ。」
王城からの帰り道。
俺は思い悩むように立ち止り、ふと最近図書館で目を通していた魔法書を思いだした。
「そういえば魔力量の分だけ物を収納できる魔法があったっけ。えーと確か‥」
試しに唱えてみた。
【#収納倉庫__ストレージ__#】
すると目の前に半透明のパネルが現れた。
「でたでた。確かパネルを確認後は自分の触れた物を念じただけで入れれるんだったかな。」
手に持つ金貨の入った巾着袋に念じてみると、見事に巾着袋はその場から消えた。
もう一度パネルに目を通すと、マスが区切られ、金貨の欄が現れる。
大白金貨5と記された。そして持ち物欄には巾着袋が記された。
「なるほど、収納すると自然に分別されるのか。なかなか便利だな。今後も活用しよう。」
ストレージをしまい、また俺は歩きだすと、前からカルマ兄さんの姿が見えた。
「兄さん?」
「よう。アル。ちょっと付き合え。」
カルマ兄さんは首をクイっと動かし、歩きだした。
俺は訝しげな表情を作ったが、今日の予定を別に立てていた訳ではなかったので、そのままカルマ兄さんに付いていった。
そして辿りついたのは学園内にある闘技場だった。
今日は学園は休みの為、闘技場内は誰一人としておらず、俺とカルマ兄さんだけだった。
「兄さん。こんな所で何を?」
まぁ何となく分かるけど、一応聞いてみる。
「闘技場って言えばやる事は1つだろ。アル。俺と勝負しろ。」
何かのヤンキー映画ですか?
「ちょっと待ってよ。なんで俺がカルマ兄さんとやらなくちゃいけないのさ?」
「ごちゃごちゃ言ってっと舌を噛むぜ。」
カルマ兄さんはいきなり俺の懐に入り込み、顎目掛けて拳を振り上げた。
咄嗟だった為、状態を逸らし躱しはしたが顎先を拳で削られた。
おかげで顎先から血が流れる。
状態を整える為、しっかりたとうとすると、脳が揺らされたのか視界が歪む。
カルマ兄さんは首をコキコキと鳴らし、ゆっくり歩いてくる。
「俺は本気だぜ。本気で来なきゃ、血反吐を吐くぞ。」
またカルマ兄さんは俺の懐まで一瞬で入り込み俺の腹部に拳を突きつけた。
身体がくの字に曲がり、後方へと飛ばされる。
「ぐはっ、がぁ。」
痛い。マジでやる気なんだな。
なんで?いや、もう何でもクソもない。
やるしかない。
痛みを堪えながら頭を回転させ、先程のカルマ兄さんの動きを分析する。
結論からして、カルマ兄さんの踏み込みが全く見えない。
どうなってる?何か特殊な魔法でも使ってるのか?
「ほう。その顔はちょっとマジになってきたか?よっしゃ次行くぞ!」
またアレがくる。
俺は咄嗟に飛び上がる事で瞬時にその場から離れた。
離れて見ると、さっき自分の居た場所にいきなりカルマ兄さんが現れるのを確認した。
何かの魔法か!?
だが瞬きするその瞬間にまたカルマ兄さんが消え、気づけば俺の真上に現れていた。
そしてそのままカルマ兄さんは俺を地面目掛けて蹴り落とした。
「ぐはぁ!!」
これはまずい。このままくらい続けたらダメージ負荷がでかすぎる。
だけど、一息付かせてくれる様な雰囲気では無い様だ。
またカルマ兄さんは一瞬で間合いを詰めてきて拳を突き出した。
俺は身体全身を捻り躱し、カウンター蹴りをカルマ兄さんの顔面に放つが、見事受け止められた。
そして危うく捕まえられそうになった為、また身体を回転させその場から飛び下がった。
「驚いたか?」
カルマ兄さんのこの言葉は正直図星だった。
当たれば確実に相手が防御していようと吹き飛ぶのが今までの普通だった。
それなのにも関わらずカルマ兄さんは片手でまともに受け止めたのだ。
天才と言われる由来は伊達じゃない。
「お前は身体に魔力を循環させて身体能力を上げてるみたいだが、身体能力を上げる魔法もあるんだぜ。【#身体強化__ブースト__#】」
カルマ兄さんがそう唱えると、カルマ兄さんの身体全体を纏うように赤い衣が現れる。
「さぁ。どっちが強いか始めるぞ。本気でかかってこい!!言っとくが俺は殺す気でいく。」
目がマジだ。
「カルマ兄さん!どうしたんだよ!いきなり過ぎてわかんないよ!」
「うるさい!」
また瞬間移動の如く正面に現れ拳を突き出される。
俺は間一髪でその攻撃を躱し、そのまま拳を突き出す。
だがその拳は空を切り、腹部にまたカルマ兄さんの拳が突き刺さり膝を落とす。
「ごふ!!」
自惚れていた訳では無い。
所詮は強いと言われても自分の戦い方なんてのは基礎もなっていない思い付きのど素人の動きだ。
例えばボクシング経験者に初心者がいくらパンチを出しても当たらないのと一緒で、カルマ兄さんの動きには全くの無駄が無いのだ。
それに加え俺は今まで魔力量のみで戦ってきた。
そしてその魔力量があったから身体能力も底上げされ、瞬発力のみで戦った。
だが同じ速度、いやそれ以上の瞬発力で対応された場合は、その経験値の差は歴然と出る。
正直、ドンパの時に使った人体破壊を使えば早い話しだが、実の兄に使うような代物ではない。
ここ何ヶ月でカルマ兄さんはクライス兄さんを超え、通常時の俺より早い動きを手に入れたと言う事か。
「さっさと本気出さねえと死んじまうぞ。っと」
ドカァ!!!
顔面を蹴り上げられ、俺は後方へと飛ばされた。
これじゃまるで虐待だよ。兄さん。
俺はゆっくりと起き上がり口から垂れる血を拭う。
そして身体全体に魔力を巡回させる。
身体から魔力が溢れだし白い靄が立ち上がる。
カルマ兄さんはそれを見るなりフッと表情を緩めた。
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