第38話「繁華街から少し離れた場所で」
月影視点です。
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「なんやねん!あの化け物は!!?それに何でウチの調べあげたノート渡してしもたんや!?」
繁華街から少し離れた家の一室で一際大きな声を張り上げるキツネのような顔立ちの少女と月影がいた。
この少女は月影の姉#飛鳥__アスカ__#である。先日ドンパの領地にてアルと戦った黒装束だ。
「まぁまぁ。姉ちゃん落ち着きや。あのブタガエルには僕も腹たっとったさかいに、腹いせも含めて渡したんや。でも良かったやろ?僕の魔結界の腕輪があらへんかったら姉ちゃん死んでたで。此方の情報が何もあらへんノート一冊で自分の命助かったんやから安いもんやろ。」
「アホか!!ウチがどれだけ苦労して丁寧に記入してたかアンタには分からんからそないな事言えるんや!それをあない渡してしまうやなんて‥。」
「はは。悪い悪い。」
月影は苦笑いし平謝りすると、フゥと飛鳥は息を一つ吐き出し気持ちを落ち着かせる。
「まぁでも助かった事には感謝するわ。アレは尋常やなかった。ウチ一人ではどないもならんかったわ。それにしてもあの子本間に人間なんか?下手したらオトンと同等?いやそれ以上。」
そんな話しの途中に、月影とアスカの前から煙がドロンと立ち上がり、人影が現れる。
「その話。詳しく教えてもらおうか。」
「「オトン」」
〇〇〇〇
「これで全部の情報や。でもコレを聞いたかて決行は決まっとるんやろ?」
月影の父はコクリと頷く。
「確かにその情報からして注意すべき人物なのだろう。だが決行は一週間後だ。この呪印からは逆らえん。」
月影の父が腕を捲り上げると、呪印の輪が刻まれていた。
それは月影もアスカも同様に腕に刻まれていている。
一瞬暗い表情を月影は見せたが、フゥと一息吐き捨て切り替えす。
「取り敢えず、これからどないするかやな。事を起こそうにも、【#封邪の指輪__ふうじゃのゆびわ__#】いうのがあらへんかったらどないも出来んからな。」
「その件についてだが、目星はついている。」
そう言って月影の父は懐から鏡を取り出した。
鏡の淵の上に小さな凹凸が見受けられる。
「それは?」
「これは真実の鏡といってドンパが所有していた国宝と呼ばれる物だ。この鏡は偽りの真実を見極める為の物で、見極めたい人物の身体の一部が必要不可欠なのだが、本来の使い方はこうだ。」
月影の父は自分の嵌めていた指輪を抜き取り、鏡の上のほうの凹凸に差し込んだ。
すると鏡が光を帯び、月影と飛鳥は目を見開いた。
「これが本来の鏡の使い方だ。この鏡は元々一部などいらず、この鍵を使えば持つ者の念じた物や人物がそのまま写し出されるのだ。そして封邪の指輪の場所だが…。」
そう言って月影の父は鏡に念を込めると、ニアの姿が写しだされた。
月影は思わず顔を硬直させ、その反応に父は気付く。
「知っているのか?」
「知ってるも何も同じクラスの女の子や。」
「ふむ。なら話は早い。この少女が封邪の指輪を持っている事は確かだ。心辺りは?」
「こないに近くその指輪があったとは。けど、そうなると面倒やな。」
「どういうことや?」
飛鳥が怪訝に問うと、月影は肩を竦ませ答えた。
「このニアはサキュバスなんや。」
「サキュバスゆうたかて、まだ子供やないかい。」
飛鳥がそう言うと月影は肩を竦ませる。
「せや。普通ならサキュバスの子供ならまだ大した#魅了__テンプテーション__#の効果も大した事ない。けどニアは特別やねん。本来知られるサキュバスは#魅了__テンプテーション__#の魔力が自然に流れでる為、人間のいる町に入る事は難しい。だけどその能力を自身で抑え混むのも本間は大した事あらへんから町に溶け込むのはたわいも無い事なんや。 ゆうてもこれは成人しとるサキュバスの話や。 それやのに関わらず、ニアの場合はその幼さで既に#魅了__テンプテーション__#が漏れ出していて、尚、自身の能力を抑えつつ指輪の封印の力を利用せな外も歩けやん。 しかもその封印さえでも収まりきらん為に、色々試行錯誤して、服も露出を控えとるぐらいや。んで調べた所、サキュバスの中でも何千年に一度の#超魅了__ハイテンプーション__#の持ち主らしい事が分かった。そのせいか男であれば大人も子供も関係なくその淫欲効果が発動する」
「な、なんやねんその能力。反則やんか。それに封邪の指輪でも防がれへんことなんかあるん?」
「多分僕が思ってる指輪で間違いなかったら、アレつけてても漏れとるんやろな。だからこそ気づかんかった。でもそう考えたらニアも、化け物って事になるで。」
月影は苦笑いすると、月影の父は腕組みをする。
「今回は飛鳥にいかせるか?」
「あかんな。それもリスク高い。」
月影の即答に月影の父は疑問そうな表情を浮かべる。
「何故だ?」
「ニアはサキュバスってだけでも厄介やのに、その例のアルが何時も近くにいて、挙句に一緒に住んで一緒に寝とる。」
「な!?あの歳でもう女はべらかしとるんか!?」
飛鳥が顔を真っ赤に染め上げ慌てるが。父は冷静に質問をする。
「四六時中共にいる訳ではなかろう?」
「ごもっとも。だけどそれがイフリートっちゅう奴は必ず近くにおるんや。まだ実力は見極めては無いけど、僕の勘が危険を察知しとる。下手に手ぇだしたら返り討ちに合うってな。」
月影は人差し指を眉間にトントンと当ててみせると、月影の父は月影の勘に凄く信頼をおいている為、考え直す。
「な!?あのアル以外に化け物がおるんか。ん?けど待てよ。それやったらおかしいないか?何でアルはニアと一緒に住めるんや?」
「そこなんよなぁ。なんであんな冷静でおれるんか不思議でしゃぁない。魔結界の指輪付けてる僕でさえニアの近くには行けてもポンっと触れられたりでもしたら脳の一部が揺れる感覚があるってのに…。」
「そのアルという子供の特異体質という訳か。さて、どうした物か。衝突は免れないという訳だ…。」
月影の父の発言に月影の眉がピクっと引きつる。その瞬間を逃さず見ていた飛鳥が月影の背中を叩く。
「今からそない感情揺らしてどないすんねん。ウチらがやろうとしてる事はもっとエゲツない事やねんで。」
飛鳥は少し悲しそうな笑顔を月影に見せると、月影はフウ、と一息ついて肩を竦ませて見せた。
「仕方がない。3人で指輪を取得する作を考える。」
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