第28話「油断大敵」
『そんな丸分かりな攻撃に当たるかよ。』
皆、大蛇が喋った事に驚きを見せたが、良く考えればガルシアム先生に化けていた時に喋っていたんだ。
喋れたとしても、何の不思議もない。
『おい!そこの坊主!良く俺の居る場所が分かったな。褒めてやる。』
坊主?あぁ、俺の事ね。
「そりゃどうも。」
『ふん!だがもうお終いだ。この数相手となれば、いずれ体力も尽きるだろう。
早くテメぇらを食いたいぜ。女と子供の肉は格別だからなぁ‥「話が長い。」ッ‥!!?』
俺は大蛇が話をして居る間に一気に地を蹴ってみると、案の定一瞬にして大蛇の懐に入った。
大蛇は目を見開き驚愕の表情をみせる。
『な、き、貴様いつのま‥』
俺はそのまま大蛇の腹部に拳を突き上げる。
ドゴォ!!
『グフぅ!!』
その衝撃で大蛇は後方へと吹き飛び、大木の幹に直撃し、崩れ落ちる。
その様を見ていた周りの皆は唖然とした表情を浮かべる。
やっぱり思った以上に動けるな。
俺は以前にサーベルリザードとの戦いの時に思ったことがあった。
身体に力を入れる瞬間に何かが身体全身を包んでいる感覚だ。
理由はわからないけど、恐らく俺はこのおかげで瞬発力が底上げされているのだと思う。
ガラガラ。
む、自分を過信している訳ではないが、どうやら喋るだけあってザコでなさそうだ。
大蛇は口についたネバこい唾液を手で拭い起き上がる。
『き、貴様、‥何モンだ?はぁ、はぁ。』
さっきの一撃は相当効いているようで肩を鳴らす大蛇。
「何者?って言われてもな。そんな事よりお前。 村の人間にどう言って脅しをかけたんだ?」
大蛇はピクっと目を動かす。
『何の事だ?』
まぁ言わないよな。だけど、大体の検討はついていた。
「あながち、村を襲わない代わりに学園への依頼を申し込ませたんだろ?」
『な!何故それを!』
分かりやす!!
けどやっぱりだ。ベルが裏切るような事は何となくだけど考えられなかったし、村に女、子供が外に出ないのもおかしかった。
何か理由があると思ったんだ。
「小さな村じゃ、いずれ大好物の女、子供は底をつく。 かと言って街に入れば、強い冒険者や騎士達が大勢いて、目を付けられ都合が悪い。 なら次に考える事があるとすれば弱小村を襲って女、子供を数人食えば、自ずと交渉し易くなり、そこで村の連中に言う。「ブロンズの依頼を出せば村を襲わない。」まぁ、こんな所か。狡いヘビが考えそうな初心者狩りみたいなやつだな。」
『ぐぬぬ。貴様なかなか頭が回るようだ。だがさっきの一撃で俺を仕留め損ねたのは失敗だったな。』
大蛇は何やら不敵な笑みを浮かべると背後から悲鳴が聞こえる。
「ぬぅお!!き、貴様!何をする!」
俺はその声で振り返ると、イフリートが大蛇に巻き付かれていた。
「イフリート!!」
『そして、更に油断。』
ガブッ!!
俺の肩に激痛が走り、俺はそのまま膝をついた。
「くっ、‥。な、!!?」
身体に‥力が入らない。
「アル!!貴様!!」
イフリートは大蛇を睨みつけると身体を発火させ、身に巻きついた蛇を一瞬にして消し炭にした。
そして急ぎ俺の方へと駆け寄ろうとするが、大蛇は俺の身体に巻きつき身体から鋭い爪がある手を生やし、その爪を俺の首に突き立てた。
『近くんじゃねぇ!!!』
その声でイフリートは足を止める。
『くくくく!!かかか!シャーはっはっは!!! 見事な油断だ。ざまぁみやがれ!!俺の毒はな、身体に麻痺症状を起こすんだよ。見た所、お前がこの中で一番強そうだが、今からお前が皆んなの足を引っ張る事になるんだよ。おい!お前ら!此奴の命が惜しけりゃ武器を捨てろ。』
「くっ、テメぇキタねぇぞ!!」
『キタねぇもクソもねぇよ。ほら、さっさと捨てろぉ!!』
大蛇は目を血走らせ、さらに俺の首に爪を当てる。
首から血が垂れる。
皆、渋々と武器を捨てていく。
マズイ。これは本当にマズイことになった。確実にこれは俺の所為だ。
『シャハハハ!!御利口さんだぜ。
さぁ食事の時間だ。誰から食おうか。
そうだ!!』
大蛇は何かを思いついたかのようにニタッと厭らしく笑い、俺を見る。
『貴様アルと言ったな。お前を後にして、皆が食われる様を見せてやるぜ。お前の所為で食われる様をなぁぁ!!シャーハッハッ! まずは其処の女からだ!』
ニアに大蛇が迫り来るその瞬間。
「【#氷柱__アイシクル__#】!、】
ザクッと、ニアを食らおうとした大蛇の首に氷柱が突き刺さり、大蛇は崩れおちる。
皆が魔法の飛んできた方に目を向ける。
「「ベル!!!」」
「みんな!ごめん!月影から話は全部聞いたわ!」
『な!何だ貴様は!この状況を』ボゴォ!!!『ぐぼ!』
急に大蛇は横からの飛び蹴りで吹き飛ばされ、俺は地に落とされた。
俺は痺れる身体を無理矢理動かし、その人物を見あげると、二刀の刀を持つ中性的でキツネっぽい少年が立っていた。
「ったく。だから言わんこっちゃあらへん。なんの情報もないのに戦うんは無防やって言うたやろ。」
「つ、‥月影。」
なんだか安心してなのか、申し訳無さなのか、俺の目から涙が溢れでる。
俺の油断。その所為で皆を危険に晒してしまった。
謝っても許せる様な物ではない。
「アル!大丈夫か!これは解毒剤だ。」
不意に声と共に俺の上体が起こされ、口の中に液体が入り飲み込んだ。
そして、飲ませてくれた人物は本物のガルシアム先生だった。
「すまない!俺がもっと早くに危険を察知していれば」
悔しそうな表情を浮かべるガルシアム先生。
違う。違うんです。
僕が、僕が悪いんです。
どんどんと涙が溢れ出る。
『く!フザケやがって!人数が増えた所で状況は変わらん!!出でよ大蛇!!』
大蛇はまた口から次々と大蛇を生み出した。
「うわぁ!またぎょうさん出てきたわ。」
「おい月影。」
ヒョイっと月影の側に無表情で立つガルフ。
「何やねん?」
「お前の事、ちょっと見直したぜ。」
ガルフは月影に拳を突きつけると、月影はフッと笑い拳を合わせた。
「アホ抜かせ。」
ガルシアム先生が指をポキポキと鳴らす。
「さぁ、内のクラスを痛めつけた代償はでかいよ。」
『じゃかましい!!!かかれ!者共!!』
『シャャャャャ!!!!!!』
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