第27話「これは俺が決めた事」
『ギャォオォォォォス!!』
無数の大蛇が一斉に雄叫びを響かせると、ボタボタと繋がった蛇達が胴体から生み出される様に離れ俺達に向かってくる。
離れた蛇も一体一体が2メートルは越え、太さは人間と変わらないくらいある。
「おうおう!ウジャウジャとキモいったらねぇな!行くぞコラぁ!!」
ガルフが向かいくる敵に向かって行こうとすると、月影がそれを呼び止める。
「ガルフ!!待ちぃ!」
「なんだぁ?」
「こないな何の情報もあらへんバケモン相手に突っ込むんは無防や!一旦退く事に専念したほうがええ!!」
「確かに何の情報もないまま‥「ごちゃごちゃ言うとらんと行くで!!」
ハーマンドは何か思う所があった様だが、月影が言葉を被せる事で皆んなが吊られ、取り敢えず後退するべく皆で森の中へと走りだした。
だが、蛇達も一斉に俺達を追いかけてくる。
「くっ、こいつら結構早いな!」
「いちいち振り返っとる場合やない!走るんや!!」
俺達は唯ひたすらと迫り来る大蛇達から逃げ続けると、村が見えてきた。
「よっしゃ、村が見えた!」
「村!?此奴らを引き連れて村をとおるのか!?」
「何言うとんねん!どの道逃げるにしても村通らなあかん!それにその方があいつらの情報を得れるかもしらん。」
「村の人達を囮にするの!?」
ニアも感づいたようだが、月影はペッと唾を吐き飛ばす。
「そないなもん知るかい!元々あの村の連中にはめられたんや。絶対にやり返したる!!どうなろうが知った事あらへんやろ!!」
月影の感情がそうなるのも分からないでも無い。
俺達はまんまと騙され、エサにされかけてるんだ。許せる訳がない。
だけど、もし逃げ切れたとしてもそれは‥
人の命を囮にするって事だ。
そんな酷いことを俺はするのか?
ベルがこの村に入ってすぐに話していた男性や村長に向けての無邪気な態度。
ちょっとしたことだけど、顔の表情を見れば分かるんだ。
紛れもなくベルにとって此処は大切な場所。
推測だけど、村長だって俺達をエサにする事に躊躇いが無かった訳じゃ無いだろう。
そうせざるを得ない何かがあったのかも知れない。
大切な物を守る為に、それが許されないことでも。
俺は走る足を徐々に緩ませ、ついには足を止めた。
「おいアル!何で止まるんや!?」
「俺が囮なる。」
「は?」
「俺が囮になる!!皆んなは先に言ってくれ!」
「何言うとんねん!!アホかお前!そないなもん村の連中にやらしたら「できない!!」
俺は月影の言葉に言葉を被せる。
「どうも、俺には村人を囮にしてまで、逃げる様な真似はできそうにないよ。
それにベルの故郷だしね。」
俺はそれを言い残すと、大蛇に向かって走った。
「ふむ。アルが行くのなら私が行かない訳には行かぬな。」
「私も!」
「ガハハ!そうこなくっちゃな!!俺も行くぞ!」
「む、」
俺につられて次々に皆が動きだす。
「んな、アホな。」
月影はその状況に信じられないとばかりの表情でボー然と立ち尽くすと、月影の肩にハーマンドが手を置く。
「月影の考えは間違ってはないさ。だが、私もアルと同意見だよ。」
そして、ハーマンドも走りだした。
「アホや、アホやでお前ら!はめられたんやぞ!あの村の連中に!俺は行かんぞ!死ぬんやったらお前らだけで死んだらええねん!俺はお前ら踏み台にしてでもここから逃げたるからな!」
俺は後ろで叫ぶ月影に振り返る。
「誰もお前を責める様な事は言わないよ。これは勝手に俺が決めた事だから。」
「アルぅ!」
ニアが口を膨らませ俺を睨みつける。
「俺がじゃなくて、【俺達】だろ。」
ガルフが親指を立てると、月影はフッと冷たい表情へと変え、肩を落とす。
「アホくさ。 もう知らん。‥勝手にせぇ。」
月影はその言葉を残し、そのまま村へと走り去った。
「さーて、やりますか。」
皆が肩を回したりして、武器を構える。
俺は向かいくる大蛇達に腰を落とし、ダガーを逆手に振りかぶる。
そして、勢いよく横薙ぎにダガーを振る。
「【#烈風波斬__レップウハザン__#】!!」
烈風の如く凄まじい風と共に真空波が繰り出され一気に30匹以上の大蛇達を一層する。
「ひょー!!さすがアルだな!その技、名前つけたんだな。」
「は、恥ずかしいけどね。」
そう、一応俺の持つ技と言えるものはこれだけだ。 どうせなら名前を、つけてみても良いのではないだろうかと考えた結果【烈風波斬】となったのだ。
「俺も負けてらんねぇ!!」
ガルフも獣人の特性のバネを活かし、素早く大蛇の懐に踏み込み、正拳突きをぶちかまし、横から牙を剥きだす大蛇には回し蹴りで吹き飛ばした。
そして、ガルフの背後に迫り来る大蛇にはハーマンドが木の上から遠隔で彗星の様な矢を打ち付ける。
「ガルフ!後ろは任せろ!」
ガルフはハーマンドを見ると二ヤっと口角をあげる。
「ありがてぇ!!」
「私も、‥いく。」
ヴィオラも蛇に向かい剣舞の如く美しい太刀筋で次々と、大蛇の首を切断していく。
そして、ヴィオラの後衛にはニアがつき【#岩弾__ロックバレッド__#】で的確にヴィオラの背後に迫る大蛇に命中させる。
これは魔法学でペルシア先生が言っていた事だが、魔法を動いている的に当てるのは弓同様、凄まじい鍛錬が必要なのだそうだ。 だからニアもハーマンドも的確に的を射ているのは、相当の鍛錬をしたに違いないのだろう。
「さて、私も爆発的な炎でも打ちかましてやろうではないか!」
イフリートは両手を前に突き出し、魔力を集めだす。
グゴゴゴゴゴと、どんどん膨れ上がる魔力の玉が、次第にあたりの物まで太陽の如く引き寄せだし、その異変に皆の顔の表情も青ざめ出す。
「いくぞぉ!!!」
ドス!!!! 「あた!」
俺はイフリートの頭にチョップして、魔力をピュルル~と消滅させる。
「な、あ、アル!いったい何をする!!」
「いやいや!、何をするとかじゃなくて、今とんでもない物だそうとしたろ!!」
「な、何が悪いのだ!?」
はぁ、っと溜息交じりに俺は肩を落とす。
っつか魔法を知らない俺でも不味いと感じる程だぞ。
「ここは森の中です。そんなエゲツない魔力込めた炎なんて出したら辺りに燃え移るでしょ。」
「む!た、確かに考えて見れば‥」
「分かれば宜しい。もっと加減をしろ。」
「加減じゃと!!ワシが加減をせねばならんのか!?」
「当たり前だバカ!」
『ギシャャャャ!!』
不意にイフリートの背後から大蛇が迫る。
俺は咄嗟に地を蹴り、イフリートには申し訳ないがお姫様だっこの状態にし、そのまま体を回し大蛇に蹴りを見舞った
ドカァ!!!
大蛇は辺りの木をへし折りながらビックリする程に飛んだ。
余りにも飛んだもので、俺は目を見開き少しボー然と立ち尽くすと、イフリートが俺の目下で目を閉じ、口を尖らせているのが視界に入る。
「【#炎弾・小__ミニフレイムバレッド__#】」
「ぎゃぁー!!」と俺の体に熱い火が立ち上がり、俺は思わずイフリートを落とす。
「あっつ!!何!?」と、魔法が放たれた方向を見ると、ニアがジト目で口を膨らませている。
あら?なんだか怒ってる?
それを見てイフリートは立ち上がり、ニアにヘラッとした嫌な笑みを浮かべる。
「私は大精霊イフリート。そんなヤワな魔法じゃビクともせんぞ!」
ドス!「あいた!」
また俺がイフリートの頭にチョップする。
「余計な人ごとを言うでない。」
「くぅー」と変な鳴き声をだして頭を抑えるイフリート。
それにしても数が多いな。
前にサーベルリザードを倒した時見たいに大元を始末しないと。
俺は辺りを見渡し大元を探すがどれもこれも同じに見える。
さっきの分裂で同じ大きさになったとか? そうなれば見つけるのは困難だ。
だけどもし、この中に本体がいるとすれば、ん?待てよ。
確か大元の額に魔石が付いていたな。其奴を見つけだせば。
どこだ?どこに‥‥、
いた!!
大蛇にまみれて後方に1匹。額に紫の魔石を埋め込んだ大蛇がいた。
「皆んな!!額に魔石を埋め込んだ大蛇が奥にいる!きっとそいつが大元だ!」
「「「「了解」」」」」
ハーマンドは上から見てるぶん、先に魔石を持つ大蛇を発見したようで、早速、彗星の様な矢を放つ。
だがその大蛇は他の大蛇とは違い、凄いスピードでハーマンドの矢を避けた。
「なに?!」
『ククっ、何?もねぇだろ。そんな丸分かりな攻撃に当たるかよ!』
ハーマンドの驚く表情を見て、あざ笑うかの様に大蛇が話しだした。
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