第22話「クライス奮闘記」

クライス視点です。



今僕は、先日に起きた事件について、調査部から情報を入手したと知らせを受け、騎士団長とともに、王国騎士団施設にある調査資料室へと赴いた。


我が王国騎士団のバルトール・フォン・クラボロス団長は40歳で、赤茶の髪を綺麗にオールバックにし、肥大に一文字の古傷を浮かべる、強面なオジサンだ。


だが性格は気さくで話やすく、貴族出身でも特に偉ぶる素ぶりも見せない人だ。


「ランス。調査の結果が分かったそうだな。」


団長が調査部に入るなりランスさんに話しかけた。


ランスさんは、細身で紫の髪を短髪にした、一見ヒョロっとした感じだが、我が王国の隠密としてはかなりの凄腕だそうだ。それに加え団長とは同期だ。


「おぉ、バルトールか。それにルーキー君も。なかなか今回の事件は気になる事が多いは。」


ランスさん曰く、あのサーベルリザードが街中を暴れでていた時。 その周辺の住民達は、調査の結果、いくつかの護符が発見され、その呪術により、眠らされていたようだ。


因みに僕達が眠らされ無かったのは、僕が以前に、家の周りに保護結界を貼ったからだ。


貼った理由は単純に、火災防止や家の補強のつもりの為だけだったのだが、以外な所で効果を発揮したのだろう。

この結界が無ければ、皆殺されていたかもしれない。


それにもう1つ分かった事が、その護符は、平安の国の忍びが良く用いる護符だそうで、落ちた仮面の破片も平安の忍びの物と似ているそうだ。


「これだけ情報が出れば、平安の仕業ということになるのか?」


「いや、これだけではまだ平安の犯行とは言い切れない。 それに平安は、我が王国とは長年、距離は離れてはいるが交易の中を築いていて、互いに旅行地にもなっている仲の良い国でもある。だから街中にあるギルドにも平安出身の者がチラホラといるはずだ。そんな国が俺達の国に、果たしてその様な事を起こすメリットがあるだろうか?」


「他で動いている者がいる。って事ですか?」


「さすが期待のルーキー。 だが、今は推測だけで、確証はないがな。」


「分かった。引き続き何かあったら教えてくれ。他に何かあるか?」


「あぁ。そういえば気になる情報もあったな。 この王都から北にある【帰らずの灰荒野】に最近出入りする冒険者らしき人物を見かけたという情報があったな。 あそこにゃ魔物も寄り付かない程何にもねぇはずなんだが、、。」


「調べて見て損は無さそうですね。」


「うむ。今後何かあってからでは遅いからな。直ぐに調査に向かってくれ。」


「あいよ。」


「待って下さい。その調査、僕も参加させてもらえないでしょうか?。」


「おいおい、いいのか?この人物がもし先日の犯人だとしたら、お前が狙われている可能性もあるんだぞ。」


「えぇ。承知の上です。いいですか団長。」


僕は真っ直ぐ団長の目を見つめると、団長はフッと笑う。


「仕方ない。その調査、俺も出よう。」


「おいおい、マジか‥。」


こうして俺と団長は【帰らずの灰荒野】へと向かう事となった。


〇〇〇〇


僕は現在、団長とランスさん、他2名の騎士達と調査の為【帰らずの灰荒野】に来ている。


【帰らずの灰荒野】は名の通り、草木は枯れ、土は灰色で、所々地盤が剥き出した状態になっている。


それに何故かこの一帯だけ、昼間だというのに薄暗く肌寒い感じもした。


「本当に何も無さそうな所ですね。」


「うむ。ここ一帯だけが何故か作物も育たんし、水すらも無い。 故に未開の地とされている。 地図上で見れば、ここを抜けた先は、ザナルカンデ王国に続いているはずなのだが、通り抜けたという例は聞いた事がない。」


「ってことはつまり‥」


「途中で、のたれ死んだか、何かにやられちまったか?ってこった。」


「何か?って何なんでしょう。」


僕は訝しげに首をかしげる。


「さぁな。それが分かんねえから未開の地なんだろ。」


「確かに。」


手の平に拳をポンッと乗せて納得する。


それから暫く歩くと、地に亀裂が入った様な場所に行き着く。


そこでランスさんは報告書を再確認する。


「どうやら報告にあった場所は、ここらだな。」


「一帯を捜索してみよう。」


俺達5人は辺りを捜索し始めると、騎士団の1人、トールさんが何かを見つけたようだ。


トールさんは、23歳で、しっかり者。

騎士団の後輩達の面倒も良く見ていて、信頼も厚い。 僕が騎士団に入ってからも良く面倒を見て貰っている気の良い先輩だ。


「これを見て下さい。」


トールさんが指し示したのは、焚き火の後だった。


「確かにここに何らかの理由で人がいたみたいだな。」


皆が何の為ここに居たのかを考え始めると、フイに団長が叫ぶ。


「皆伏せろ!!!」


グガァァ!!!という旋風音と共に真空波が真上を通りすぎる。


僕とトールさん、団長、ランスさんは、それを躱したが、もう1人は首が無くなっていた。


「くっ、どっからうってきやがった?!!」


「気配が掴めん!相手は恐らく手練れだ。各自戦闘態勢!」


団長の声で、皆武器を取る。


仲間の突然起きる死。


多少の傷なら魔法で治せるが、首を取られては、もはや死しかない。


これは何度も戦場に出れば必ず起こる現実だ。かといって慣れるものでもない。


だけど、ここで1人が動揺し、隊を乱せば、その1人の所為で全滅もあり得うる。


だから今はすべき事に集中しろ。


「【#捜索眼__サーチアイ__#】」

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