第21話「イフリートはビッチ」

授業後。


「ベル姉様。そらそろ魔力量の限界かと、」


チョイ太は頭に藻を乗っけて、ベルの前に跪く。


「確かに、そろそろ限界ね。」


ベルも魔力が消費している事に気付いているようだ。

だが、ベルもニアもヴィオラも、ジャイパール先生が言うにはハーマンドよりも魔力のコントロールが美味いそうで、召喚獣の滞在する時間が長いそうだ。

ハーマンドは悔しそうにしていたが、ジャイパール先生はハーマンドにもしっかりと、「始めからできる奴などおらんよ。じっくりすれば遅かれ早かれ上達はするものじゃ。あせらんでよい。」と、フォローを入れていた。


「おっ。僕もそろそろだにゃ。 またにゃにか用事がにゃれば気軽に呼ぶにゃ。」


そう言って藻とチョイ太とブー吉は姿を消した。


さて、イフリートもそろそろ時間‥。


『ん‥ふ‥』


ん‥ふ‥? 俺は妙な声に首を傾げ、イフリートの居る方へと顔をむけた。


「って何してんだぁ!!!」


なんとイフリートは、自分の胸やお尻を揉みしだき、頬を染め、艶やかな声を出している。


「あ、あぁん‥、あ、あ、‥はぁ、はぁ‥」


悶え喘ぐその声に、一緒にいたジャイパール先生も、ハーマンドも鼻血を見事な火山の様に吹き出し気絶。


「アル見ちゃだめ!」


急に視界が柔らかい何かで包まれ防がれる。


「もが‥」


い、息が出来ん!


俺が思わず口をモガモガと動かすと、ニアの艶やかな声が漏れだす。


「あ‥あぁん‥アルこんな時に吸っちゃダメぇ‥。」


変な誤解を招く言い方はやめなさい!!


俺は恐らくニアの物であろう物に、翻弄されそうになるが、意思を強く持ち、それを鷲掴んで顔から離す。


そして、視界を取り戻した俺は、再びイフリートに視線を向けると、イフリートは最早、裸当然の姿でヨガっていた。


これには俺も耐えれない。


俺は鼻血を吹き出し意識を飛ばした。


〇〇〇〇


「ん‥ん」


「気がついたようね。」


ベルの声で意識がハッキリとしていく。


俺はどうやら保健室のベッドで寝ている。そして、ベルは俺の隣で、まさかの看病をしてくれていたようだ。


「何か、迷惑かけちゃったみたいだね」


「飛んだ迷惑よ。 あの後、2人に厳重注意をして、女手だけで貴方達を運んだんだから。 感謝してよね。」


「面目無い。 ありがとう、ベル。」


俺はベルの目を真っ直ぐ見て感謝を述べるとベルはまた顔をフイっと背ける。


「べ、別に‥。ってこれじゃ私が言わせたみたいじゃない!」


「そんな事ないさ。 本当に感謝してる。ありがとう。」


俺はベルにもう一度、感謝を述べると、ベルは心なしか頬を赤くそめ、着ている服の裾を握る。


「な、‥ならいいけど。」


「「‥‥」」


何秒か、2人の沈黙か続いたが、俺がその沈黙を破る。


「他の女の子達は?」


「あぁ、それなら、ヴィオラはもう帰ったわ。後イフリートとニアなら廊下に立ってるわよ。」


「廊下!?‥なんで?」


「貴方を看病するとかいいながら服を脱ぎ出すもんだから、私が追い出したのよ。」


何したいんだ?あの子達。


俺はなんとも言えない表情をつくる中、ある事に気付く。


「ん?ってか、イフリートまだ居るの?」


「ええ。それは私も驚いたわ。 けど、今回の件で貴方と張り合おうとしていた私がバカに思えたわ。」


「どういう意味?」


「イフリートが言うには、大精霊との契約には、大精霊に付けられた枷を外すのが条件らしいの。 それに枷を一度外せば、大精霊はこの世界に定着するそうよ。 だから消えない。 だけど、その枷を外すには、人、一万人は必要な魔力量なのだそうよ。 側から聞けば、俄かには信じられない話しだけど、初めて大精霊が出てきた時の覇気を考えれば、可笑しな話ではないと私は納得したわ。」


「そ、そんなに魔力が消費してたの!?」


「そうよ。普通ならそんな魔力を持った人間なんていないし、あったとしても、可なりの負荷が体にかかるはず。なのに貴方はピンピンしてる。貴方‥本当に人間?」


ごもっともな質問ですな。 けど‥。


「に、‥人間です。 」


多分。人間だよ?


「で、これからどうするの?」


不躾な質問に俺は首を傾げる。


「どうする?って何を?」


俺の反応にベルは呆れた様に溜息を吐く。


「何を?って貴方ね。イフリートの事よ。 元々この世界の者じゃないから、これから誰が面倒見るのよ?」


おぉ!そう言う事か!確かに。


‥どうすっか?


「とりあえず、家にお持ち帰り?」


「お持ち帰り、ってどうするつもりよ!?」


いきなり、いきり立つ様に俺に質問を投げつけるベル。


「ち、ちがう!!誤解だ!取り敢えず、俺の家で生活してもらえるか両親に頼んでみようかな?って事。」


「そ、そう。」


「「‥‥」」


また妙な沈黙が走り、俺は頬を軽く掻いた。


すると、俺達の声が聞こえたのか、ドカドカと、ベルとイフリートが部屋に入ってきた。


『気づいたのか!!』


「アルゥ~!もう、大丈夫なの?!。」


入ってくるなりニアは、俺に抱きついてきた。


「うん。大丈夫だよ。」


俺はニアの頭を撫でると、イフリートが割り込んで来る。


『アルス様!わ、私の頭も撫でてくれ。』


何か息が荒いし怖い。

けど、なんとなく頭を、撫でてやると、猫の様に喜びだした。


何なんだ?いったい。


俺は苦笑いを浮かべるが、直ぐに巣に戻り、先程何故、あの様な行動をとったのか気になり質問してみた。


「イフリート。何であんな事したの?」


『う、む。』と少し喉を詰まらせたが、直ぐに答える。


『私は、いままで空気中にあるルフそのもので実体が無かったのだ。 だから実体がある事に喜びすぎて、身体を触りまくってやると、何だか気持ち良くなって止まらなくなったのだ。』


ビッチか貴様!!


これは厳重注意が必要だな。


〇〇〇〇。


あの後、ベルは帰ると言ったので、ベルと別れ、ニアとイフリート、三人で家に帰った。


ニアが何故居るのかは、ニアを送ろうとすると、ニアが「ダメ!!絶対ダメ!私もアルの家に行く。」と、珍しく駄々を捏ね、一緒に帰る事になったのだ。


「ただいま。」


いつものように玄関の扉を開けると、母さんが出迎えてくれた。


「おかえ‥り。」


『おぉ!アルス様の母上か!私は今日からこの家で世話になる、イフリートだ!どうか宜しく頼む。』


「‥‥」


母さんの沈黙が走る。


「母さん?」


「あんたぁ!!大変だよ!!!アルがまた女の子を連れ込んできたよぉ!!」


「変な誤解を招く言い方はやめろぉ!!」



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