第16話「闇の者」

「グガァァ!!!」


サーベルリザード四体の爪が一斉に俺達に襲いかかると、カルマ兄さんは俺達の前に躍り出て掌底突きを放った。


「【#空圧拳__クウアツケン__#】!!」


カルマ兄さんの放った掌底から空圧が弾きだされる。


その空圧でサーベルリザード四体は見事に吹き飛ばされる。


「よし! ニアちゃんは後衛から援護!俺とカルマ、アルは四方に別れ、撃退!」


「了解!」


クライス兄さんは的確な指示を飛ばし、カルマ兄さんは直ぐに動き撃退に向かうが、俺は戦闘経験が無いせいか、少し出遅れる。


それをクライス兄さんは見逃さず、俺に喝を飛ばす!


「アル!!ボー、とするなよ! ニアちゃん!アルの援護頼むよ!」


「はい!!」


力強くニアは返事をする。


情け無い。 こんなじゃダメだ!俺は強くならなくちゃいけない!


俺は硬く決意を持つと、目の前の敵に目を向けた。


「アル?」


「大丈夫。 俺、強くなるよ。」


俺はニアに顔を向け、軽く微笑むと、ニアは頬を少し赤くした。


さぁ、いくぞ!


俺はサーベルリザード向かって地を蹴った。


すると、思った以上に踏み込んでしまったのか、サーベルリザードの背後まで一瞬で移動してしまう。


俺は自分の踏み込みに驚くが、サーベルリザードも俺がいつの間にか背後にいる事に気付き、暴れる様に俺の方へと向き変え横薙ぎに爪を振るった。


俺はその爪を軽くジャンプして避けようとすると、今度は3メートルほど飛び上がってしまう。


サーベルリザードは急に俺が視界から消えた様に見えたのか俺を探す。


俺は、自分の身体能力に驚きながらも、そのまま落下すると同時にサーベルリザードの首の根にダガーをザシュ!!と、

差し込んだ。


俺はサーベルリザードが即死した事を確認すると、一気にダガーを抜きとる。


そしたら傷口からプシュッ!と、緑色の血が噴き出したことで俺は嘔吐に見舞われるが、今はそれどころではない!


俺は再度皆の状況を確認する。


クライス兄さんは、迫り来るサーベルリザードを悉く斬り捨て、あっという間に6体を撃破。


カルマ兄さんもクライス兄さんに引けは取らず、次々と殴り飛ばす。


右、左、ダックしてアッパー、踏み込んで斜め上から振り下ろすチョッピングライト。


カルマ兄さんも格闘家だが、ガルフと違って、動きはボクシングに近い。


「グガァァ!!」


またもや、サーベルリザードが俺に襲いかかる。


「【#炎弾__フレイムバレッド__#】!」


ボガァ!!と、俺に迫ったサーベルリザードが撃ち落とされる。


「アル!援護は任せて!」


心強い。


ニアは的確にサーベルリザードを次々と撃ち落としていく。


やっぱりニアも紛れも無い、Aクラスなんだと実感する。


俺も負けてられない!


また俺は地を蹴った。今度はもっと鋭くだ。


そして一瞬にしてサーベルリザードの前に迫りダガーで顔を真っ二つに裂いた。


また緑色の血が吹き出るが、かまわず、飛び込んでくる二体に対し、片手を地につけ逆立ちをし、開脚したままコマ状に足を回し二体を撃退。


その隙をついて、もう一体のサーベルリザードが下から迫り来るが、ダガーをサーベルリザードの眉間に投げつけ、突き刺し撃退。そして着地。


「すごい。思った通りに身体が動く。」


俺は自分の身体能力の凄さに驚愕し、思わず言葉をもらしていると、外の騒がしさからか、何も知らない、母さんが出てくる。


案の定サーベルリザードが母さんの真上から襲いかかる。


「なんだい?この騒ぎ‥「危ない!!」


ザシュ!!!


俺はその距離10メートルは離れていたであろう、母さんの真上に迫っていたサーベルリザードを斬り捨てた。


これには間近でみていたニアも驚愕の表情を浮かべ、カルマ兄さんも、たまたま見えたのか驚愕の表情を見せていた。


いや、俺もまさかできるとは思ってなかったよ?。


「母さん!今は危ないから、父さんと中にいて!」


母さんは、真上から落ちてきたサーベルリザードに動揺していたが、俺の声で直ぐに顔を引き締め、「あぁ、分かったよ。 無理すんじゃないよ!」と一言残して中へと戻った。


それにしても、敵は何体いるんだ?


この世界の夜は、そこらの家の明かりがあったとしても、前世のような眩い電気がある訳でもなく、火を灯した時の灯りぐらいしかない。


なので暗闇が多く存在し、其処に奴らは潜んでいる為、目を凝らさなければ見つけだすのも困難だ。


それに、よく考えれば、これだけ騒がしくしているのにも関わらず、他の住民が出てこないのは何故だ? さっきの母さん見たいに姿を現してもおかしくない筈だが‥。


そんな事を考えだすと、カルマ兄さんがその数の多さに苛立ちを見せる。


「ちっ、数が多すぎる!!次から次へ湧いて出てくるぞ!」


「確かに、この数は異常だ。恐らくだが、コレは召喚の一種だろう。直ぐに大元を探しだす!!」


クライス兄さんは目を瞑り、眉間に二本の指先を当てると、直ぐに目を見開く。


「【#捜索眼__サーチアイ__#】!」


クライス兄さんの目は青く変色していて、どうやら辺りを捜索しているようだ。


「そこだ!!!【#氷柱弾__アイシクルバレッド__#】!」


氷の氷柱が、クライス兄さんの手から、近くの暗闇になった屋根へと放たれた。


ガキッ!!と、何かに当たる音が響くと、屋根から何かの破片が落ちる。


「くそ!逃げられた! つッ‥!!」


急にクライス兄さんは目を抑え込み、膝をつく。

どうやら、あの魔法は反動がある様だ。


「アニキ!」


カルマ兄さんは、クライス兄さんに直ぐ様、駆けよろうとするが、クライス兄さんは「大丈夫だ!! それより、残りのサーベルリザードを!」と、指示を出した。


「くっ、‥分かったよ!!行くぞアル!ニア!」


「了解!」


「はい!」


其処からは、あっという間にサーベルリザード全部を撃退。


死骸を確認すると、全部で50対ほどいた。


並の召喚士でも此処までの数を出せるのは早々居ないそうだ。


それに、犯人らしき物の破片を確認した所、それは仮面の断片の様に見受けられた。


皆それには見覚えがなかったが、相手の戦闘術からクライス兄さんは、プロの殺し屋だと推測し、その報告と、サーベルリザードの死骸の件もあり、直ぐに騎士団の詰所へと向かった。


後、サーベルリザードの爪は鉄よりも硬いらしく、素材として売れるそうで、ちゃっかり魔石と爪は、残った3人で剥ぎ取った。


「アル。 」


急にカルマ兄さんに呼びかけられ、振り返る。


「いや、なんでもねぇ。」


カルマ兄さんは何か言いたげの様に見えたが、直ぐに踵を返し、何もなかったかの様、家へと向かった。


俺は訝しげに首を傾げるが、カルマ兄さんの事だ。 何かあれば必ず言ってくれるだろうと思い、考えるのを辞めた。


とりあえずひと段落ついた所で、俺達が家に入ると、入るなり母さんは俺達3人を抱き寄せた。


「良かったよ。あんた達が無事で。」


父さんも母さんも心配してくれていたのか、目に涙を浮かべている。


「クライスは?」


父さんはクライス兄さんの安否を確認する。


「クライス兄さんなら詰所に行ったよ。」


「そうか、クライスも無事か‥。」


腰掛けから立ち上がっていた父さんは、安心したのかガクッ、と腰掛けに腰を下ろした。


「ニアちゃん。今日はもう遅いし、今の件もあるから泊まっていきなさい。」


「えっ?いいんですか?」


ニアは嬉しそうな笑顔をみせる。


「あぁ、いいさ。部屋はアルと一緒でいいね。」


えっ!!!?


「はい!」


え? え? えぇぇ~!!?


「ちょ、ちょちょちょ!何言ってんの!?」


「何だい?嫌なのかい?」


母さんはニヤっとした笑顔を見せ、俺を見る。 そしてその横でウルウルとした瞳で見つめるニア。 嫌とか言える筈がない。


「い、嫌じゃないけど‥、けど男と女が同じ部屋だと何かとマズイのでは?」


「何があるってんだい? ニアちゃん。この家は響きやすいから気をつけなよ。」


「はい!さっき言ってましたもんね。」


何いぃぃぃ!!?母さん黙認!?


っつかパーティ中に、あんた達何話してたんだ!?


ってか、ニアちゃん其処は元気よく返事したらダメでしょ普通!!?


「母さん、今夜は‥。」


ってかオヤジィ!! 顔赤らめて、母さん見つめるんじゃない!! っつか子供に見せんなぁぁあ!!



結局、母さんの言われるがままに、ニアと俺の部屋で2人きりになってしまった。


ベッドの上には、少し大きな俺のパジャマを着たニアが、大きな双丘クッションの谷間を見せる様に、うつ伏せになって俺を見る。


ニアは、お風呂上がりということもあり、髪が少し濡れていて、頬も火照っているのか心なしか赤く染まっている。


思わず生唾を飲む俺。


「アルぅ~。早く横からになろうよ。」


ボフンッ!!俺の頭が爆発する。


「早くぅ~。」


緊張する俺にニアは焦ったくなったのか、俺の手を引き寄せ、ベッドに倒し込んだ。


そして俺の上へ、ニアが覆いかぶさる形になる。


「アル‥。」


艶やかな声と瞳で、俺を見つめるニア。


ダメだぁ~!!!


ニアの顔が近づくと、そのまま俺の真横へとニアの顔が蹲る。


「スー‥」

「って、寝たんかい!!!」


思わず俄か関西弁で、ツッコミを入れる俺。


けど、事が起きなく良かった。いや、少し残念な気もするが、未だ10歳だからダメだろ普通?

ん? そもそも異世界だから俺の考えが 普通じゃないのか?


あ~もう、わからん!!



===========================

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る