第15話「パーティの後に」
「これだから天才は嫌いなのよ!!」
あの後、ベルは走り去った。
「アルゥ。大丈夫う?。」
ニアが俺の肩に手を置き、慰めてくれた。
そう、現在俺は、悪気はないにしろ、またベルを傷付けてしまったことに深く落ち込み膝を落としている最中だった。
「ほら、立って。あっそう言えばお兄さんの買い物も行かないと行けないって言ってなかったっけ。」
そうだった。
実は今日の晩は、クライス兄さんのお祝いを企画しているのだ。
そのプレゼント選びも兼ねて繁華街へと向かったのだった。
俺は腰を起こし、立ち上がる。
「ごめんニア。取り乱しちゃった。じゃぁ、クライス兄さんのプレゼントなんだけど、一緒について来てくれる?」
「もちろん。」
ニアはニコっと笑顔を見せた。
ニアは何も思わなかったのだろうか?と疑問に思う事もあったけど、現時点で、ニアが俺に対し普通でいてくれた事に俺は感謝した。
そんなこんなでニアと俺は、繁華街に戻り、互いに意見を持ち寄りながらプレゼントを選んだ末、見つけたのは、縦横10センチ台の小さな巾着袋だった。
だがしかし、この巾着袋は只の巾着袋ではなく、中が異空間になっている。
その中の大きさは前世で例えると、少し大きなリュックサックほど収納できるのだ。
それになんと、このサイズの巾着は、この世界では普通に流通している品物なのである。
だが、その機能性故に、値段は、ツルカズラの分けた報酬を合わせても大きく超え、大銀貨4枚と割高だった為、俺のポケットマネーを軽く超えた。
だから諦めようとすると、ニアが「足りない分は出すよ」と言って、出されてしまった。
勿論だが、「女性に出してもらうなど!男としてダメだ!」と思い、断ろうとしたが、ニアは「アルのお兄さんなら、私のお兄さんでもあるから」と一言告げ、動揺する俺を置いて、勝手に会計を済まされた。
え? え? ど、どどどういう事?
そして帰り。
昨日の晩に母さんと父さんが「ニアちゃんも一緒に連れといで」と言っていたのでニアも一緒に家に帰った。
「あらぁー、ニアちゃん。相変わらず可愛いわねぇ。」
母さんが、満面の笑みでニアを出迎える。
「わぁ、そう言ってもらえるととても嬉しいですぅ。」
ニアは素直に感謝した。
普通なら謙遜とかするかもしれない場面だがニアなら許す!
「で、クライス兄さんは?」
「もう少ししたら帰って来ると思うよ。さぁ、入って。」
中に入り、リビングに向かうと、カルマ兄さんと父さんは、既に席についていて、豪勢な料理が並べられていた。
「おう、帰ったか。」
「ニアちゃん。久しぶりだね。」
今回は、ニアも普通に近い服を着ているし、能力を抑える指輪も装備している為、カルマ兄さんはいつも通りクールだ。
父さんは福神の様な笑みで微笑み、ニアを見つめている。
変な意思はないだろうけど、変態っぽいから辞めた方が良いんじゃないかな?父さん。
そんなこんなでクライス兄さんが帰って来るまでに、段取りをすまし、待機していると、クライス兄さんが帰ってきた。
ガチャ。
パチパチ、パチパチ。 とクライス兄さんが入って来るなり皆で拍手を送る。
クラッカーを知っている俺には、物足りなさを感じたが、そこは気にしないでおこう。
「「「「クライス就職おめでとう!!」」」
「おぉ!嬉しい!ありがとう!」
「さぁ、クライス。席につきな。 料理は熱いうちに食べるんだ。」
「ありがとう。 母さん。」
そう言ってクライス兄さんは席に腰掛けた。
「クライスの就職を祝って、カンパイ!」
「「「「カンパーイ!!」」」」
宴会は楽しく、皆で色んな話をして笑あったりなどで時間はあっという間に過ぎていった。
プレゼントについては、クライス兄さんはとても喜んでくれた。
俺の初仕事のお金だ。ニアにも出してもらってしまったが‥、それでも良いお金の使い方だったと思う。
「クライス兄さん、騎士、頑張ってね。」
「あぁ、ありがとう。アル。」
クライス兄さんは笑顔で俺の頭に手を置いた。
そして、ニアを送り届ける時間となり、俺とニアが席を立ち、家を出た瞬間、黒い何かがニアに襲いかかる。
俺は咄嗟にニアを引き寄せ、黒い何かの攻撃を外させる。
「な、何?」
「わからない。 けど、どうやら相手は一体じゃないことは確かかも。」
俺は暗闇の中、目をこらし、その黒い何かを確認する。
トカゲの様な形態で、大きさは中型犬ほどだが、爪が以上に長く、刃の様になっている。
あんなので切られたら、かすり傷ではすまない。
「くる!」
「ガァォォオォ!!」
トカゲが爪を横薙ぎに飛び掛ってきた。
くっ、俺が避けたらニアに当たる!どうしたら!!
「【#炎弾__フレイムバレッド__#】!」
ゴォウ!!と俺の真横から炎の弾が通り過ぎトカゲに当る。
「ギャァウ!」と悲鳴をあげ、弾き返されたトカゲは、そこらに置いてあったタルにぶつかり、ガタガタと音を響かせる。
「アル。私は大丈夫よ!」
そうだった。ニアも紛れも無いAクラスなのだ。
他の皆んなの様に戦えても何も可笑しな話しじゃない。
「アル!何の音だ!?」
さっきの物音で、家の中にいたカルマ兄さんと、クライス兄さんが家から飛び出してきた。
「ガァォ!」
またもや家から出た瞬間を狙うかの様に、カルマ兄さんとクライス兄さんに二体のトカゲが襲いかかるが、カルマ兄さんの拳が瞬足の如く、トカゲに突き刺さる。
ドカ!!ドゴ!!!
「おいおい、なんだぁ!?」
クライス兄さんは、カルマ兄さんが撃ち落としたその黒いトカゲを見るなり、驚きの表情を見せた。
「な!? こいつはサーベルリザード!!
何で、こんな奴が街中に!?」
「アニキ!驚いてる場合じゃねぇぞ。
かなりの数に俺らの家が囲まれちまってる!。」
カルマ兄さんは直ぐにトカゲ供の気配を察知する。
「!!?確かに、かなりの数だ。何故今まで気づかなかった?」
「カルマ兄さん!大丈夫?」
「大丈夫ですか!?」
出てきた兄二人に、俺とニアが駆け寄る。
「あぁ、大丈夫だ!」
「状況は大丈夫じゃねぇなけどな。」
確かに、今の状況は深刻かもしれない。
兄弟二人は戦えたとしても、中にいる父さん母さんは、全くそういった戦闘スキルはない。
それに、俺にはある疑問が頭をよぎる。
「何で俺達の家だけが囲まれる感じになってるんだろう?」
「その疑問はごもっともだ。考えられるのは‥「そんなこたぁ、どうでもいい。
俺ら兄弟の家を襲ったこと、纏めて後悔させてやるぜ!!」
クライス兄さんの話にカルマ兄さんが言葉を被せる。
「確かにそれが先決かもな。」
俺達4人は、戦闘態勢に、入った。
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