第14話「これだから天才は嫌いなのよ!」
ツルカズラの件から翌日。
俺のいるAクラスは、休みとなっていた。
基本、学園での依頼任務翌日は休みとなる様だ。
まぁ、丸一日仕事してる様なものだから、ありがたく頂くとしよう。
それにしても、この世界の学校の教育は、前世では考えられない事が多い。
普通、10歳の子供を「小さな低級の魔物だから大丈夫」って言って、保護者無しの子供達だけでキノコ狩りなんてさせないし、そもそも、遠出もさせない。
前世でこんなこをしたら、其れこそニュースに飛び交う大事件になるだろう。
学校の義務教育は、勉強の基礎だけでなく、社会を知る所。
人間関係、先輩、後輩。楽しいことや、悲しい事、嬉しい事、怒る事を覚える場であり、他の人と共有し、人として生きて行く為に必要な事を学ぶ場所なんだ。
昔テレビのオッサンが言っていたのを思いだせば、自立心を向上させたりと、似通った所は有りつつも、大きな所が違っている。
だが、そんなこと言っても、キリがない。
これがこの世界なのだ。
魔法なんて存在する事自体が違うし、地球だって丸いかどうか怪しい。
前世の常識で当てはめる方が変なのかもしれない。
そんなことはさて置き、俺は現在、朝から家を出て、ニアの寮の前にて佇んでいた。
これは昨日の帰りの道中。
「ねぇ、アル。 明日って、何するの?」
「明日? 特に用事はないけど‥」
ってか、何時も暇なんですけどね。
「良かったぁ!じゃぁ、明日もデートしようよ!」
「ぶぅっ!!!」
思わず吹き出す俺。
「で!デート!?」
「そう!デート!行こうよ!」
言われてみれば、最近のもデートになるのかもしれない。
いかんせん、俺は女性と付き合った事がない故に、デートと改めて言われ、動揺してしまい、声がうわずってしまったのだった。
そして現在に至る。
ニアの寮は学校の通学路の途中にあるので、今日が学校の生徒達は、普通に目の前を行き来する。
そこで気づいた事なのだが、前にカルマ兄さんと歩いた時は、カルマ兄さんに送られる視線だと思っていたのだが、どうやら俺にも送られていた視線だったようだ。
妙に皆から見られ、落ち着かない。
俺、何かしたか? ってか、道行く女子学生のあれは何なんだ? 体をクネらせ、目をハートにした訳の分からん変人種か?
そんな事を考えていると、ニアが寮から出てきた。
「ごめーん。待ったあ?」
今日のニアは、フリルのついたメイド服風で胸が大きいせいか、しっかりとふくらみを露わにし、スカートの丈はかなり短めだ。 そしてそこから出る純白の素足は誘っているのか?と勘違いしてしまいそうだった。 って俺は、10歳の女の子に何を考えとるんだ!!
俺は顔をブンブンと横に振り、我を取り戻す。
「全然、大丈夫!
じゃぁ行こうか」
「うん!」
ニアは俺の腕に手を通ししがみ付き、俺の肩に頭を乗せた。
ヤバイ!マジで可愛い!今すぐ抱きしめたいぐらいだ。
だが、俺は平常心を保ちつつ歩き始める。
すると、さっきまで周りにいた目がハートの訳の分からん奴らから、今度は殺気のような視線を向けられる。
だから俺が何をした?
そんなこんなで俺達2人はまた繁華街へと向かう。
「いらっしゃい、いらっしゃい!」
「そこの奥さん!安くしとくよぉ!」
「嬢ちゃん嬢ちゃん!見てってよぉ!」
相変わらずここは、賑わいを見せている。
そして、今回の行き先は繁華街の奥にある図書館だ。
何故、図書館かというと、前日の夜に俺は、この街の名所という名所を調べ尽くしていた。
流石は王都と、言うだけあって、食べる所や観る所は多く存在し、その中でもこの王都の図書館は、他の街と比べとても大きく、そして品揃えも豊富だそうだ。
そして、その図書館というのが繁華街のシンボルでもある、あの大きな時計塔である。
10年、この街で生きてきたが、間近で観るのは初めてだ。
作りは前世でも有名な、外国のなんとか、っていう時計塔と作りも心なしか似ている。
それに何よりデカイ!
ニアも、その高さに感嘆の声を漏らす。
「さぁ、入ろうか。」
「うん。」
中に入ると、更に俺たち2人は感嘆の声を漏らす。
何故なら、本が壁一面、高い天上までビッシリと並び、螺旋階段状に階層が伸びていた。
そして、図書館の床には、天上にある、大きな絵のステンドグラスに、日が入る事で、神秘的な空間を作り出していた。
ニアは入るなり、目を輝かせる。
「わぁ、スゴォい!!ねぇ、アル。早速、見て回ってもいい?」
「いいよ。その為にきたからね。」
何日かで分かった事なのだが、ニアは以外にも本が好きらしく、色んな本を読んでいるそうだ。
それに、一度読みだすと、周りが見えないぐらい集中するのだそうだ。
その事もあり、俺はこの場所を選んだのだ。
ニアは、俺が「良い。」と言ったので、遠慮なく、自分の読みたい本を探しにいった。
折角のデートだから少し寂しい気もする
が、ニアが楽しんでくれるなら俺も問題はない。
さて、俺も折角来たことだし、何か探しますか。
暫く歩き回り、めぼしい本を探すが、多すぎて何を読めばいいか悩んでしまい、決めかねていると、机の前に、本を山の様に並べる見知った後姿の少女を発見し、思わず声を掛けてしまった。
「ベル?」
俺の呼び掛けに振り向く少女は、やはりベルだった。
「な!!何で貴方がこんな所にいるのよ!?」
「今日はニアを此処へ連れてきたんだ。
本が好きって言ってたからね。」
「そうなの。 で、そのニアは何処なの?」
「ニアなら、本を探しに見て回ってると思うよ。 それより、凄い本の量だね。コレ全部読むの?」
それに並べられていたのは魔法学の本ばかりだった。
「あ、え、えぇ。休みの日はなるべく本を読むようにしているのよ。」
「そうなんだ。俺も見習わなくちゃな。
ん?今見てるのは雷系の魔法の書?」
不意にベルが手にとっている本に目がいき、覗き込む俺。
「ちょっ、ちょっと!勝手に覗きこまないでよ!」
「あ、ごめん、ごめん。 つい、気になっちゃって。 だけど、普段からこんなに勉強してるからこそ、あの時みたいな凄い魔法を使える様になったんだね。」
「ふ、フン。褒めたって何もでないわよ。 それに、あの時の魔法の事を言っているのなら、それは大きな間違いよ。 あれは、前にも言ったけど初級魔法なの。
それに、たかが初級魔法の増幅に、あんなにも時間を掛けてる時点で、私は未だ未だなのよ。」
ベルはそう言うと、少し顔を曇らせた。
何か思う事があるのだろうか?
「だけど、それでも俺達はあの時、ベルがいたから助かったんだ。それは変わりないでしょ。」
「え?」
「俺はベルに感謝している。ベルがいてくれて本当に良かったよ。ありがとう」
俺は真っ直ぐとベルを見つめて改めてお礼を言った。
「な、なな、何言ってるのよ貴方!
バカじゃないの!?」
「バカでも構わないさ。 あっ、そうだ。
今度、俺にも魔法を教えてよ。」
「私が!?私なんかにそんなこと‥。」
「あれ?普段は強気なのに其処はダメなの?」
「な!そんな訳ないでしょ!!!
あ、貴方が其処まで言うなら、や、やってあげても良いわよ。」
「やった。じゃぁ、決まり。近々、宜しく頼むよ。」
そう言って俺は、ベルに笑顔を向けた。
「あっ、アルぅ。」
ベルと話ていると、ニアが俺を探していた様で、駆け寄ってきた。
「もぉ、探したよぉ。 ってベルがいる!!」
「あぁ。ベルも本を読みに来てたみたいで、バッタリ会ったんだよ。」
「そうなんだぁ。
って、コレ!この本!」
ニアはベルの積んだ本の中から一冊の本を手に取った。
「あっ、それは!」
「なに?」
「これ、【君に愛をささぐ】っていう超人気シリーズ作品なの! 新刊でたんだぁ!」
「へぇ、そうなんだ。 題名からして恋愛小説みたいなの?」
「うん!それに主人公がすっごく男前でモテモテなんだぁ。そうかぁ、ベルも読むんだね。」
「ま、まぁそうね。有名作品は自然と手がでるのは普通でしょ。」
へぇ、ベルもそんなの読むんだ。
結構強がって見えるけど中身はちゃんと可愛い女の子なんだな。
「其処まで有名なら俺も一度読んでみたいな。 ベルが読んだ後にでも貸してよ。」
「「ダメ!!!」」
「え?」
何故か2人に断固拒否された。
「これは男の子が見ていい作品じゃないよ。ねぇ~、ベル。」
「えぇ、貴方にはまだ早いわ。」
えぇ~!この流れで却下されるのか!?
ってか、妙に一致団結する2人。
何?何なの?気になるんですけど!!
〇〇〇〇
魔法を教えて貰うのは後日と言ったが、ニアにその事を伝えると、「私も得意!なら今日しようよ!」と言う事で、ベルとニア、俺で、放課後に演習場へと向かった。
「私が最初にいくね。【#炎弾__フレイムバレッド__#】!」
ニアは、ゴウ!!と、バスケットボールぐらいの火の玉を放ち、的を燃え尽くす。
「じゃぁ次は私。【#雷弾__ライトニングボール__#】!!」
ベルは、ゴゴウ!と雷を帯びた、光る玉を放ち、的を燃え尽くす。
俺は感嘆の声を漏らすと、ドヤ顔のベルが腰に手を当て、小さな胸を張った。
「とまぁ、これが基本の魔法よ。人によって相性の良い属性があるから其処からまず探さなきゃならないんだけど、初級程度なら全然発動しない訳じゃないから一度やってみなさい。始めは本当に小さな玉しかでな‥!!?」
ゴゴゴゴゴォウ!!!!!!
激しい爆音と共に、先ほどベルとニアが放った玉の10倍はある玉が、的も全焼させ、地にクレーターを作る。
これにはベルとニアも目を見開き口を大きく開き驚愕の表情を見せた。
「あら?‥できちゃった。」
嫌な空気を感じとり、ニアとベルの方向へと目を向ける。
「これだから天才は嫌いよ!!」
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