第13話「素直な気持ち」

あの後、ツルカズラの根と、散らばった魔石を持てるだけ、回収した。


ベルが言うには、ツルカズラの魔石を原型のまま回収していれば、馬鹿でかい報酬になったそうだが、状況が状況なだけに壊す事になった為、価値が安くなるそうだ。


だが、ツルカズラの根に関しては、かなりの高額になるそうだ。


因みにあの馬鹿でかい図体から取れた根は1メートルにも満たなかった。


希少価値も高そうだが、何故そんなに高額になるのか?とベルに尋ねると、「じ、自分で調べなさい!!」と、頬を引っ叩かれた。


何故だ?


その後すぐに、つるぎの木は発見され、カナール茸も簡単に入手する事ができ、俺達は王都へと帰還した。


王都の門を潜り、先にツルカズラの荷物をギルドに受け渡しに行く事となったが、皆この王都出身ではない為、土地勘がないので、俺が担当した。


ついでに、道中ニアの服を臨時用で買い、着てもらった。


じゃないと行き交う人々の目線を浴びるからな。


其処らの目のついた適当な店で買った服は、アラビアの踊り子の様な服で、ニアが着ると凄く様になり、可愛いかった。


もう一度言う。可愛いすぎだ。


これはこれで、皆に見られるかもしれない。


そして、ギルドの前に着くと、皆が「おぉ。」と感嘆の声を漏らす。


俺は元々この場所で生まれ育ったから知らなかったのだが、この王都のギルドは、他の街と比べ大きく、そしてデザイン性が高いそうだ。


他の街だと、普通の一軒家より少し大きな建物で、中は酒場と繋がっているらしい。


そういえば確かに外観がアテネのアクロなんたら、って奴に似ているし、大きさもある。


あまりにも興味が無くて、気にも止めなかったな。


中に入ると、ギルド内は綺麗に清掃されていて役所の用にも見えた。


そして、受付と書かれた看板を目印に受付へと向かった。


「初めまして、受付担当のアニス・クリスティンです。以後お見知り置きを。」


黒髪のロングに赤淵のメガネをかけた大人で如何にも仕事ができそうな綺麗な受付嬢がアタマをさげる。


「今回はどの様なご用件で?」


「依頼の報告と、物資の買取をお願いします。」


「かしこまりました。では先に依頼の品を拝見いたします。」


俺達は依頼の紙とカナール茸を提出すると、その依頼の報酬額を受け渡された。


そして、次にツルカズラの魔石とツルカズラの根を提出すると、急に受付のアニスさんが目の色を変え、過剰に反応する。


「これはツルカズラの根ですか?!!!」


思わず俺達はその反応にビクつき、後退するが、話を続ける。


「は、はい。買い取って頂けますか?」


俺が引き気味に問いかけると「是非!!むしろ私が買います!」と、これ又大きな声の二つ返事だった。


何だかアニスさんの目が血走っていて怖い。


いったい何なのツルカズラの根とは?


こうして、俺達は依頼の報酬と、ツルカズラの報酬(アニスさんから)を受け取ることができた。


ちなみにこの世界での通貨は


銅貨 100円

大銅貨 千円

銀貨 五千円

大銀貨 一万円

金貨 10万円

大金貨 100万円

白金貨 1000万円

大白金貨 一億円


と、こんな感じで依頼の報酬額は大銀貨3枚。なので、三万円程で6人だと1人五千円が正確な報酬額となる。


そして魔石とツルカズラの根だが、魔石だけでも依頼の報酬額より大銀貨一枚多く、ツルカズラの根に限っては金貨一枚で売れた。


これの山分けは無理なので1人大銀貨一枚銀貨一枚で分けた。

そして残りは俺とベルが一番頑張ったからと言って俺とベルで分ける事となった。


後、さすがゴールド〔+〕ランクの魔物だっただけに俺達はいきなりシルバーランクに格上げされる事となり、プレートがブロンズからシルバープレートへと変わった。


ツルカズラはそれ程強敵の魔物だったという事だろう。


それから俺達は学園へと戻ると、その時には丁度、日が傾きかけていた。


「先生、終わりました!」


学園内の職員室に赴き、テーブル前に腰掛けるガルシアム先生に話しかける。


「おう、帰ったか。どうだった?初の任務は。」


何も知らぬ先生は呑気な事だ。


今迄の出来事をガルシアム先生に伝えた。


「ツルカズラ!!?なんでそんな魔物が彼処に!?で、お前ら倒しちまったのか!?」


腰掛けていたガルシアム先生は余りの驚きに立ち上がり、声を大きくし驚きの表情を作る。


「かかかか!先生のその驚き様ナイスだな!おうよ!倒したぜ!まぁアルスとベルがいなきゃ今頃どうなってたか分かんねぇけどな。」


ガルフは踏ん反り返りつつも謙虚に俺とベルを立てる。


ガルフはこの短期間だけど、すごくいい奴だ。


だが、あの時ガルフの一押しの声が無ければ俺もどうなっていたか分からない。


「ガルフ。俺はお前が居てくれたから、皆が居てくれたから、あの時あの行動ができたんだと思う。ありがとう。」


ガルフは俺の発言に一瞬キョトンとした表情を浮かべると、視線をそらした。


皆も少し頬を赤めなんとも言えない表情を浮かべる。


あれ?俺何かマズったか?


「お、おう!ってか、いきなりそんな恥ずかしい事言ってくんなよ!」


なんだ?俺そんな恥ずかしい事を言っただろうか?


俺が困惑していると、ドンっ、とニアが俺に飛びついてきた。


「アルはやっぱりいい男だよぉ!」


「はい?」


俺はさらに困惑の表情を浮かべると、ガルシアム先生が俺の頭に手を置く。


「今年は楽しい一年になりそうだ。」


そう言ってガルシアム先生は笑顔を作るのだった。



後から分かった事だが、ツルカズラの根の事が気になり調べた所。


一日絶倫の効果をもたらすものだった。


ってことはアニスさんは何に使うつもりだったのか‥。



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