第2話「この世界のこと」

あれから7年たち、自分で言うのも可笑しな話だが、容姿もかなりの美少年へと成長していた。


そして、この世界の事もある程度分かってきた。


この世界の名前はエターナリー。


そして俺の住むこの都市は王都レイドックだ。


魔法や剣、魔物がなどが存在し、まるでRPGのゲームの様な世界だ。


だからこの世界の街は、大概魔物避けの塀に囲まれていている。


そして街には武器を腰にさげた戦士の様な格好をした者や、魔法使いの様な格好をして杖を持つ魔物を討伐する生業の人々が行き交っている。


元いた世界では考えられない事で、まるで厨二病を思わすが、これがこの世界の普通の光景である。


現に俺も護身用にと、刃渡り10センチ程のダガーを持たされている。(使った事はないが)


また街並みは王都だけあり、賑やかで色取り取りの花が彼方此方で咲き誇っている。


それに立つ建物は皆、綺麗な赤屋根で、見晴らしの良い高台から見れば更に綺麗である。


そして、この世界の生活発展状況についてだが、機械的な技術というよりも魔法によっての発展が多く見える。


生活に必要な電気やガス、水道などは魔法石という不思議な石で賄っていて、機器という機器には必ず取り付けられていた。


原理は分からないが、それのおかげで元いた世界と変わらぬ生活が出来ているという訳だが‥、移動手段については発展が進んでおらず、未だ馬車を活用している。それに加えて通信機器などもない為、この辺は元いた世界を知っている俺からすれば不便だと思う所である。


そして俺の事だが、俺の家は特別貧乏でもなく、其れなりの暮らしができる商人夫婦、ホーエンツ家の三男として育ったのだが‥。


長男クライス。5つ上。


超絶爽やかイケメンで、とても頭が良く、いつもニコニコしている。


それに兄弟思いの良い兄貴の見本みたいな存在だ。


次男カルマ。3つ上。


クライスとは違い、男!!って感じの濃い男前。


カルマも兄弟思いだが、なかなか短気で、良く街で騒動を起こす我が家の問題児でもある。


因みに俺達の両親なのだが、容姿はごく普通である。


要するに、親の良い所ばかりを受け継いだ超絶男前3人兄弟なのだ。


それに加え、この世界では10の歳になると学校に五年間行くことを義務づけられている。


そこで学年トップを飾るのは他でもなく今年俺と入れ違いで卒業する我が兄クライス兄さんなのだ。


そしてナンバー2の実力を持ち今年から一位に輝くのは他でも無いカルマ兄さんだ。


それ故、我がホーエンツ家は中々有名なのである。


俺はというと、転生したにも関わらず何かを努力する訳でもなく前世と変わらず、なるべく目立た無い様に細々と生きた。


将来の夢は?と聞かれたら、俺は漠然とこの世界の外を見て回りたいと答えるぐらいだ。


だが、よりにもよって兄達が出来すぎてしまう為、変に皆から期待され注目を浴びてしまう。


兄達が優秀だからって俺が出来るとは限らないだろ?


むしろ前世だって何に関しても特別出来たわけでもない。


どうせこの世界でも同じだろ?変に期待するだけ無駄だぜ。


ガッカリさせるだけだと思うしね。


俺は前世の記憶が俄かにある為、自己嫌悪に陥って入り今まで何もして来なかったのだ。と、言うよりもやる気を出せなかった。


だがしかし、今回俺も10の歳になり学校へ通うこととなる為、否が応でも実力を見せる場がでてしまう。


それは‥入学テストだ。


そして現在俺は馬鹿でかいマンモス校、ベルファスト学園の前で母テルマと父ノルスと横並びに佇んでいた。


「アル。 兄達がたまたま出来すぎた為、皆がお前に変な期待を乗せてしまってはいるが、結果がどうであれ、お前はわたしの息子だ。しっかりと入学テストを頑張ってこい。」


「そうだよアル。 貴方がやる気を見せたくなくて自己嫌悪になっている気持ちは良く分かるよ。 私だって、貴方と同じ立場ならそうなったと思うもの。緊張することないよ、ドーンと、構えてらっしゃい。」


流石は親といった所か。良く分かってらっしゃる。


親を褒めるのは照れ臭いが、この世界に来て唯一良かったと思えるのは家族である。


本当に家族には恵まれた。


他の物に対してやる気はないが、家族が危機にでも会おうものなら何が何でも助けようと心から本当に思えるほどだ。


前世での家族はロクなもんじゃなかったからな‥。


話は戻って、テストは2種類。


握力計みたいなアイテムに魔力を流し込み、魔力量を測るのと、戦闘実技がどれ程か指導員との対戦。


学科は入学してから習うということで除外されている。


前世では考えられない事だが、この結果でクラス別けをするらしい。


要するに入学テストは現状の実力を計るものらしい。


それにしても魔力量ねぇ。


何度も言うが俺は、何事にもやる気がなく魔法に興味があった訳でも戦闘に興味があった訳でもなかったので、全くの無知なのだ。


兄からも親からも本当に興味ないの?と聞かれても「興味ない」と一言だけで返した。


なんとも可愛げのない子供だ。


それに魔法がある世界とはいえ、生活は魔石でなんとかなっているし、普通に街中で生活していれば、魔法なんてまず見ることは無いのだ。


とまぁ、こんな俺です。


だから前世のラノベ小説をこよなく愛す連中からすれば「お前みたいなのが何で異世界なんだよ!!」と本気で怒鳴られそうだが、俺自身も「何で俺?」って感じなんですよ。


話は戻る。


「さぁ、いってこい!」


父さんに背中を押され、学校の門をくぐる俺。


はぁ、先が思いやられる。


俺は溜息1つ吐き出し、トボトボと試験会場へと向かうのだった。


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