恵まれない人間はオレだ!
よっしゃ、獲ったど~っ!場内は割れんばかりのオグリコールと武豊コールに包まれている。
オグリキャップのラストランという事もあって、ここ中山競馬場は物凄い人だかりだ。
どさくさに紛れ、馬券を買う事が出来た。
払戻金の精算所で馬券を入れると、108000円もの金額!
こりゃいい正月が迎えそうだ。
ワハハハハ!
もうすぐ二学期も終わるし、冬休みはこの金で遊びまくろー!
…ん、待てよ。遊ぶって何して遊ぼうか。
ゲームソフトを大人買い、いやこの時期のゲームは散々やったし、今更買うってのも何だかなぁ~。
となると服か。
うん、まずは服を買う。
で、残りの金はどうしようか?
来年の金杯に注ぎ込むか…
いやいや、だってオレ、競馬ってこのレースの結果しか知らないし、それほど競馬には詳しくない。
ギャンブルはもう止めた方がいいだろう。
んじゃあ、風俗に行こうか。
ってオレまだ中2だし、門前払い食らうだけだ。
あぁ~、何に使うか迷うなぁ~っ!
「山本智さん、こんな所で何をしてるんですか(^^)」
ん?この声は。
オレは後ろを振り返った。
ゲッ、茶坊主!何でコイツが競馬場に?
「私分かります(^^)」
何が分かるんだっつーの!
「山本智さんが未来の出来事を知ってるから、それを良からぬ方へ使おうとするんじゃないかと思って尾行しました(^^)」
尾行?コイツ何故探偵みたいな事してんだ?
「何だ茶坊主、良からぬ事ってのは?」
オレは咄嗟に配当金の108000円を上着の内ポケットにしまった。
「山本智さん、勝手に未来を変えると、元に戻れなくなるかもしれませんよ(^^)」
この茶坊主ただのバカだと思ってたけど、侮れないな…
「うるせー、オレはただ単に胡の年の有馬記念の結果を知ってただけだっつーの!未来を変えてないだろ、今のところは」
そう、この年の有馬記念は異様に盛り上がり、競馬ブームを巻き起こした年でもあった。
「えぇ、今のところは変えてませんが、悪用すると、永遠に元に戻れなくなります(^^)
悪いことは言わないから、そのお金を戻すか、寄付なり何なりと徳の為に使ってください(^^)」
へっ、寄付?せっかく当てた金だぞ!今更寄付なんてできるかっつーの!
「おい、茶坊主。まさかオレに説教するつもりじゃねえだろうな?テメーみたいなろくに日本語も満足に話せないヤツの説教なんざ、アホらしくて聞けるか!」
オレはこの場を立ち去ろうとした。
「仕方ありませんね(^^)またこれを付けてもらいましょう(^^)」
そう言って茶坊主はジジイが持っていた輪っかをオレの頭に被せ、呪文を唱えた。
「ウーダナダナダナ、ウダナーウダナー、ウダウダナー」
あぁ、またギリギリと締め付けられる頭が!
「うぎゃ~っ!痛ぇ!頭が割れる程痛ぇよ~っ!」
オレは激痛のあまり、またもや床をのたうち回った。
「さぁ、今すぐその競馬で当てた金を恵まれない人に寄付するのです(^^)」
「ふざけんなっ!何で寄付せにゃならんのだっ!」
オレが恵まれない人間じゃないか!
「じゃあまた呪文を唱えますよ(^^)ウーダナダナダナ…」
「わ、分かった!寄付する!だから呪文は唱えるな!」
もうあの頭が締めつけられる痛さは勘弁だっ!
「ならば今すぐに恵まれない人間に寄付しましょう(^^)」
今すぐってどこに恵まれない人間なんているんだよ?
恵まれない人間、恵まれない人間と…
誰が恵まれてないか分かんねえよっ!
むしろオレの方が恵まれてないじゃないか!
名前を一文字間違えただけで、この年にタイムスリップさせやがって!
そうだ!恵まれないのはこのオレだ!
「いたぞ茶坊主、恵まれない人間が」
答えはすぐに出た。
「いましたか、恵まれない人間が(^^)」
「おぅ、いたいた。テメーの目の前にいる、このオレが恵まれない人間だ!あのクソジジイのおかげで1990年に戻されてまた中2からやり直しさせられるんだからなっ!だからオレが恵まれない人間って事でこの金はオレが受けとる!文句は無えな、茶坊主!」
オレは内ポケットから配当金を出し、自分から自分へ寄付するという事でまた内ポケットにしまった。
「どうだ、これなら文句無えだろ!大体テメーらのせいでこんな時代まで遡ってもう一度中2からやり直しだなんて、恵まれてねえ証拠だろうが、あぁ!」
茶坊主はしばし考え込み、答えを出した。
「そうですね(^^)山本智さんが恵まれない人間ですね(^^)私安心しました(^^)」
…コイツ底抜けのバカだろw
こんな屁理屈に納得しちまうんだから、やっぱりアホだ!
「てなワケでこの金はオレの物!以上!」
そしてオレは競馬場を後にした。
しかし、あの茶坊主はこんな単純な事に引っ掛かりやがってwww
ウワハハハハ!
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