表と裏、天使と悪魔
有馬記念
中2ライフを過ごして半年が経過した。
もう少しで1990年も終わる。
オレは今、2年後に通う予定の高校の校門の前にいる。
中3の2学期に、先生からどこも行く高校は無いと言われ、さすがに焦り、優季やデザイアー(恵)に勉強を教わりながら、何とかこの公立の共学校に合格する事が出来た。
この高校はこの地域でもかなり学力が低く、辛うじて合格したオレは、高2辺りから真面目に大学に進学する事を決意し、予備校に通い、三流ながら現役で大学に入学出来た。
もし、もう一度やり直せるならば、こんなレベルの低い学校じゃなく、もうワンランク上の高校に入れたのかも…
ってそれが現実に叶うところにいる。
オレは未来を予知できる能力を身につけている。
一念発起して、今からコツコツと勉強を始めるか!
…いや、待てよ。それよりもオレはこの能力をもっと有効に使いたい。
ズバリ、有馬記念に有り金全部オグリキャップに賭ける!
枠連3-4、一着オグリキャップ、二着メジロライアンに突っ込む!
でも待てよ?オレはまだ中2だ。
馬券を買う事が出来ない。
うーん、困った!
どうやったら馬券を購入できるか、その事だけを考えていた。
サングラスをかけて、帽子を被ってWINSに行く。
いや、これだと怪しまれるな。
できるだけ大人びた格好をして馬券を買う。
オヤジのスーツと革靴を履き、整髪料で頭をオールバックにしてWINSに行く、これならバレる事はないだろう。
試しに家でオヤジのスーツを着て、オールバックにしてみた。
…これじゃバレバレだ。何せスーツが大きすぎる!
オヤジは180あったから、当時168のオレにはあまりにも大きすぎるスーツだ。
おまけに靴のサイズは27.5
25.5のオレにはブカブカ過ぎて歩きづらい。
でも何とかしてこの有馬記念だけは買いたい!
レースの結果も、配当金も全て分かっている。
どうしよう、どうやったら20才以上に見られるのだろうか。
ん?待てよ。
確かWINSは無理でも、競馬場には入れるはずだ。
しかし、中山競馬場は今年最後のビッグレースとあって、たくさんの人だかりだった。
どさくさに紛れて馬券を購入するか。
何万人もの観客をいちいち監視することは出来ないだろう、うん。
そして12月23日(日曜日)
オレは中山競馬場へと向かった。
前々から貰っていた小遣いをこの日の為に貯金し、財布には15000円入っている。
枠連3-4に全部注ぎ込む!
確か配当金は枠連で720円だから、15000×7.2=108000円!
中2に10万円はかなりの金額だぞ!
よし、オレは堂々と中山競馬場の入り口に入った。
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