エボラじゃなくて、エバラだろうが!

オレにとって、この1990年は【現代】じゃないが、今は現代だ。


これから先に起こりうる有事も予知出来る。


阪神大震災や地下鉄サリン事件。


そして東日本大震災…


だが、今のオレがクラスのヤツラにそんな事を言っても、誰も信じないだろう。


それどころか、また龍也達に保健室に連れていかれ、ベッドに拘束され、キョンシーみたいに額に『相変わらず意味不明な言動が多いので、また検査お願いします』なんて事を書かれるだろう。


予知能力という、特殊な能力を持ちながら、それを活かさずに、ジジイや茶坊主みたいなヤツラに翻弄されている。



こりゃヤバい事だ。


ジジイから聞き出した、茶坊主のメガネを何とかせねば…



あの茶坊主は相変わらず、隣に座ってる優季に色々と勉強を教わってるみたいだが、物覚えが悪いのか、それとも単にバカなだけなのか、いくら優季が説明しても、理解出来てない。


「はい、分かりました!」


返事だけは良く、しかも声がデカイ。


「分かってないじゃん!また同じとこ間違えてるよ~っ。

これで何度目?」


オレもよく優季にそんな事言われたっけなぁ。


でも、あの茶坊主ほど物覚えの悪い方ではなかったぞ、オレは。



っていうか、あの茶坊主、優季が一生懸命教科書を広げて色々と説明してるのに、茶坊主は優季の顔をジーッと見て、ニヤニヤしている…


あれじゃ優季が何を言っても理解出来るワケがない。


ん?待てよ。


優季を見て、ニヤニヤしてるって事は…


そうか、優季を使えばいいんだ!


優季に頼み込んで、あの茶坊主のメガネを外してもらおう!


でも、どういう方法で外してもらおうか。


優季にホントの事言っても信用しないだろうからなぁ~、うーん、こりゃどうしたもんか。



何の変哲もない、普通のメガネなんだけど、千里眼という能力を持つメガネだとかジジイは言ってたけど…


そんな便利なメガネ持って、何であんなにバカなんだ、アイツは?


まぁ、バカな方が都合がいいや、放課後優季に頼み込んでみよう。


そんな事を考えていたら、後ろの席からドッと笑いが沸き上がった。


なんだなんだ?オレは後ろに座っている謙司に何の事で笑ってるのか聞いてみた。


「おい謙司。何後ろで盛り上がってんだ?」


謙司も腹を抱えて爆笑していた。


「あの円柱頭、『私ご飯にエボラ焼肉のたれかけて食べてます!』だってよwエボラって何だよ、エバラだろうがwww」


そうか、この時代、まだエボラ出血熱なんて病気が公になってない頃だからな。


しかし…エバラをエボラってw


横文字が弱いんじゃなく、ただのバカだろ、アイツは。


あんなバカが徳川の歴代将軍に色々と進言して、歴史に残る出来事をやってのけるんだから、不思議だ。


それも千里眼という、あのメガネのおかげなのかな。



という事は、メガネを外した茶坊主はただのアホに成り下がるってワケか。


よしっ、放課後優季に色々聞いてみよっと。



しかしまぁ、相変わらずアニオタ好きだな、謙司は。


筆箱から下敷き、シャーペンやボールペンまでアニメ関連の物ばかりだ。


コイツもオレと泰彦と同じサッカー部で、ポジションはオレと一緒のDFだ。


オレとは違い、一応真面目に朝練にも参加してるが、センスがないのか、それとも太ってるのか、全く上達しない。


これじゃレギュラーになれないまま卒業だな…

あ、そうだ!コイツは中3の1学期が終わったと同時にオヤジの仕事の関係で転校するんだった。


その後、公立の高校に入学して、卒業後は製造業に就職するんだっけな。


よくよく考えたら、オレはコイツらの未来を知っている。


アイツは大学まで行って、就職したが、3ヶ月で辞めて、ニートになったとか、コイツはいまだに独身で、婚活パーティーに積極的に参加してるが、なかなか相手に恵まれない等々…


数年後には皆そうなっていくんだよなぁ~。


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