謎の犬、ポメポメ夫
喋れる犬、ポメポメ夫
オレ「ただいま~…」
オレはこの犬を抱え、こっそりと玄関のドアを開けた。
ウチには誰もいなく、とりあえずホッとした。
そして部屋に入り、犬をそこら辺に放し飼いにして、机に向かい、ノートで色々な名前を考えては書き込んでいた。
大体どんな名前がいいんだよ、この犬が話せればいいんだが…
オレはノートに、ムサシ、
コジロー、ハヤト、ナッツ、キッド等々思い付いた名前を書き連ねていた。
ふと犬のいる方向に目をやると、部屋の隅っこで糞をしていた。
「わっ、バカ!こんなとこでウンコするな!」
オレはティッシュで糞を取り、ゴミ箱に捨てようと思ったが、糞の臭いで犬がいる事が家族にバレたらどうしよう、そう思い、スーパーの袋の中にティッシュを入れ、ガッチリと結んでゴミ箱に捨てた。
そうなんだよな、犬を飼うって事は糞や尿のする場所を覚えさせなきゃならない。
とは言え、家族で内緒に部屋で飼うなんて無理だ!
あの茶坊主、めんどくせ~生き物をよこしやがって。
オレは一時間程、ありとあらゆる名前を書き、犬の目の前で一通り名前を出してみた。
「ムサシ」
【ガゥ~…】
ダメか。じゃあこれはどうだ?
「コジロー」
【グルルル~】
今にも襲いかかりそうな憎たらしい顔して吠えた。
「ハヤト」
【ワンワンワンワン!】
「ヤマト」
【ガルルル~っ!】
憎たらしい顔で吠えやがる。
「ナッツ」
【グゥ~っ】
腹の底から唸るような声を上げた。これもダメか…
「アキラ」
【…】
無言で後ろ足で身体をぼりぼり掻いている。
「あぁ~っめんどくせ~っ!何ならいいんだよ、このバカ犬が!」
【ギャンギャン、ガルルル~っ!】
ガブッ!言葉が分かるのか、急に襲いかかり、手を噛まれた。
「痛ぇ~っ!噛みつきやがった、このアホが!」
オレの右腕に歯形がくっきりと残っている。
何だかこの犬を見ていると、柴夫を思い出す。
あの犬もどういうワケか、オレだけには懐かなかった。
柴犬だから柴夫、安直すぎる名前が気に入らなかったのだろうか。
よく見ると、このポメラニアンも毛がふさふさしているが、短くカットすると、柴犬に見えなくもない。となると、シバオでどうだろうか。
「よし、これならどうだ?シバオ!」
【ギャルルル~っ!】
余計威嚇してきた。
あぁ~っ!わかんねぇよ!
オレはヤケクソになって、ポスターの裏に五十音順に書いて、このアホ犬の前に出した。
「おい、お前どんな名前なら気に入るんだ?ここに書いてあるから、その文字を指せ!」
…んな事言っても分からないよな、犬だし。
だが、この犬は興味深く羅列している文字を見て、前足を【ぽ】と書いてある文字の上にペタンと置いた。
ぽ?何だぽって?犬はしばらく考え込んでいるかのようにポスターの周りをウロウロしながら、次に【め】の所に前足を置いた。
ぽめ?更にウロウロが激しくなり、また【ぽ】と【め】に前足を置いた。
ぽめぽめ?何だそのマヌケな名前は?
そしてジーっと文字を見つめ、最後に【お】の所に前足を置いた。
ぽめぽめお。これじゃ野比のび太と変わらんじゃないか。
オレはぽめぽめおをポメポメ夫に変換して、犬に見せた。
「どうだ、ポメポメ夫。これならいいだろ?」
ノートに書いた名前を見て、嬉しそうに走り回り、キャンキャン吠えた。
ポメポメ夫ねぇ…
【この名前が一番しっくりくるポメ】
…何だ~っ!?喋った?今確かに喋ったよな?
「おい、お前喋れるのか?」
オレはポメポメ夫を抱え、もう一度聞いてみた。
【喋れるポメ】
…何なんだ、この犬は?
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