この世界は何でもありってヤツなのか?
よく分からないが、ポメポメ夫という名前を命名してから、このポメラニアンは喋るようになった。
オレは夢でも見ているのか?
いや、41才のオレが1990年にタイムスリップしてる時点で夢みたいなもんだろ。
「お前、気に入った名前を命名されると人間の言葉が喋れるのか?」
もう一度確認の為に聞いてみた。
【そうだポメ。普段はあの頭の悪い部下のバッグにカプセルとして入っているが、いざ仕事となるとカプセルから出て、迷える人類に徳を積むよう導くんだポメ】
ポメラニアンだからって、語尾にポメを付けるのかよ…
ん?部下ってのは、あの茶坊主か?
「おい、お前の部下って、あの宇棚ヤローか?」
上司が犬で、ふだんはカプセルに入ってるとは…
天界のヤツらのする事は全く理解出来ない…
【そうだポメ。私はヤツの上司で、首輪に肩書きが記されているポメ】
オレはポメ夫の首輪をよく見た。
『天界桃源郷1-3-5
仙人コーポレーション 下界更正育成課統括部長 ポメポメ夫』
…上司になればなる程、まともなヤツがいないのかよ、この世界は!
ましてや犬が統括部長?
もうワケが分からん!
「で、統括部長さんよ。ウチは賃貸マンションでペットの入居は禁止されてるんだ。
悪いんだけど、お前をここに住まわす事が出来ないんだよ」
あの円柱頭にも言ったが、ウチは賃貸マンションだ。
ペットの入居は固く禁じられている。
そこにこのポメ夫がウチに来たら、オヤジなんかは、
「さっさと役所にでも連れて保護してもらえ!」とか言われかねない。
オレは一応猫より犬派だ。
しかもポメラニアンのような小型犬は可愛くて大好きだ。
なのにこの住まいじゃ飼えない。
一晩ぐらいなら飼えるが、この先ずっとは難しい。
ポメ【大丈夫だポメ。私は山本家の一員としてすでに戸籍に登記してあるポメ】
はぁ~っ?何言ってんですか、このアホ犬は?
犬が戸籍謄本に載ってるワケないだろ!
すると玄関から、パートから帰って来たオフクロの声がした。
「ただいま~、すっかり遅くなっちゃってゴメンね。
今から夕飯の支度するから、智とポメ夫はその間、お風呂にでも入ってなさい」
…今オフクロは『智とポメ夫』って言ったよな…?
どういう事?まさかコイツは家族の一員というワケなのか?
【そういう事だポメ。私は今日から、山本ポメポメ夫という名前になって、三人姉弟の末っ子という扱いになるんだポメ】
…何だかもう、どうでもいいや…
この犬がオレの弟だろうがなんだろうが、早いとこ2017年に戻して欲しいポメ!
【とりあえずお風呂にでも入ろうポメ】
ポメ夫はダッシュして、風呂場に向かい、ザブーンと身体も洗わずに湯船に浸かった。
「こら、ポメ夫!身体を洗わないで湯船に入っちゃダメでしょ!」
オフクロはポメ夫が前からこのウチに住んでいるかのような口調でポメ夫を注意した。
…この世界は何でもありってヤツなのか?
オレはこのワケ分からない感覚についていけなく、思わず寝込んでしまった…
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