一体何発ビンタ食らったんだ?
案の定、オレと龍也、チャッピー、泰彦と謙司の5人は、茶坊主をいじめたという事らしく、職員室に呼ばれた。
昨日に引き続き、2日連続で職員室に呼び出しを食らうなんて、オレの中学時代には無かったはずなんだが…
しかもいじめてるワケでもなく、あの茶坊主がノリノリで笑点の大喜利みたいに座布団重ねて正座してニコニコしながら先生が来るのを待ってたんだぞ。
まぁ、龍也がちょいと脅し気味に茶坊主に命令したのはアレなんだが…
そしてオレらは学年主任の北川にこっぴどく怒られ、挙げ句に職員室の前の廊下に並べられ、右端の龍也から一人ずつビンタを食らった。
【バチーン!】
「ってぇな、おいっ!」
龍也はキレ気味になり、左の頬を押さえた。
「うるさいっ、いじめなんてするからだ!次っ!」
そう言って北川はチャッピーにビンタした。
【バッチーン!】
「…うぅ、痛ぃよ」
チャッピーは涙目になってる。
「次はお前だ!」
隣の泰彦にはモロに左頬をとらえ、ビンタというより、掌底のような感じだった。
【バシーン!】
「ってぇ~っ!モロ顔面に入ったぞ、おいっ!」
泰彦もキレ気味に言い返した。
「当たり前だ!顔をひっぱたくのがビンタだろ!」
泰彦は痛そうに頬を押さえた。
「次はお前だ!」
そして謙司がビンタを食らった。
【ベチーン!】
「ってぇ~っ!顔じゃなく耳じゃねえかよ!下手すりゃ鼓膜破れるとこじゃねえか!」
当たりどころが悪かったのか、謙司の左耳辺りに張り手がヒットした。
「そのぐらいじゃ鼓膜は破れない!最後はお前だ!」
そして最後にオレがビンタを食らった。
【バッッチーン!】
「あべし!」
一同は『ダーッハッハッハッハッハwww』と腹を抱えて笑っていた。
「お前はふざけてるのか!」
更にもう一発ビンタを食らった。
【バシーン!】
「きたねえよ、何でオレだけビンタ2発なんだよ!あぁ~マジで痛ぇ!」
あべしっ!がそんなにふざけてるように見えるのか?
「お前が一番反省してないからだ!いいか、お前ら。
もう2度といじめなんてするんじゃないぞ!分かったのか、おいっ!」
一同は『はぁーい…』と小さく返事した。
「声が小さい!ちゃんと返事しろ!」
どうでもいいけど、さっきからゆでダコみたいに顔を真っ赤にして怒ってんじゃないよ、みっともない!
『はい!』
「よし、じゃ教室に戻れ!」
北川は右手でビンタを連発したせいか、手首をブラブラさせながら、乱暴に職員室のドアをバン!と閉め、中に入っていった。
ったく昨日から何発ビンタ食らったんだ、オレは?
「お前、あべし!ってなんだよw北斗の雑魚キャラじゃねえかよwww」
龍也はまだウケている。
「お前ボケる場所を弁えろよ。下手すりゃオレらも余計にビンタ食らうとこだったかもしれねえじゃん!」
掌底を食らった泰彦は顎を押さえながら廊下を歩いた。
ただおとなしくビンタ食らうのもシャクだから、軽くボケたつもりなんだけどなぁ。
そんな事を言いながらオレたちは教室に戻った。
…あの茶坊主まだ机の上に座布団重ねて正座してやがる。
「おい、三遊亭円柱!いつまでそうしてるんだよ?座布団返しに行くからそこどけ!」
茶坊主を机の上から下ろし、座布団を元の場所に返した。
何だかチョーシ狂うよな、こんな茶坊主がオレのお目付け役だなんて。
あ゛ぁ~っ!っていうか、オレ昨日からまともに授業受けてねえじゃん!
何かにつけてビンタ食らったり、校内を追いかけ回されたり、ジジイに変な輪っかで頭を締め付けられて、授業どころじゃない。
この調子じゃ明日もビンタ食らってまともに授業受ける事は無いのかな~。
そうだ!茶坊主のヤローに聞いてみたかったんだ。
でも校内では仲良くするつもりもないしなぁ。
放課後に聞いてみるか。
あれでも一応、あのジジイの上司だというからな。
ドラえもんみたいに何か便利な道具持ってるんじゃないかな。
よし、そうしよう!
そして今日の授業が終わり、放課後オレは茶坊主に声をかけた。
「おい茶坊主。ちょっと校舎の裏に行こうぜ」
「私、茶坊主じゃなく、宇棚ひろしです(^^)」
何かイラつく返事だ!
「んなこたぁどーでもいいんだよ!いいから来い!」
オレは茶坊主の腕を掴み、校舎の裏に連れていった。
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