お前は三遊亭円柱だ!
今オレは【この世界】で一番予知能力を持った人間となっている。
少なくとも、1990~2017までに起こった事件や事故、そして俳優の○○が○○年に覚醒剤所持で逮捕されるとか、歌手の○○とアイドルの○○がデキ婚して、数年後には離婚する、なんて予想も出来る。
そんじょそこらの胡散臭い占い師よりも的中率が高く、100%当たる。
そんなオレが予知出来ないのは学力とあの茶坊主だ。
身体は中2、脳は41才だから中2の学力なんて大したことない、なんてタカをくくっていたが、あまりのバカ差加減に、頭の中で思っていた、パワーアップしたオレという存在には程遠い。
だが、まだ中2。確か中3の2学期に差し掛かった頃、苦手な科目は全く放棄して、得意な科目、または好きな科目だけひたすら勉強して、都内の私立校に入学出来た。
何もなく不可もなく、そこそこの学園生活を過ごし、卒業後はこれもまた、そこそこの大学に入学して、そこで現在の妻と知り合い、交際を始め、社会人になり、数年後にプロポーズして結婚した。
そして阿莉紗という一人娘を授かる。
そんな見えないレールに敷かれた普通の人生を送るだけだ。
となると、問題はあの茶坊主だ。
全てに於いて胡散臭い雰囲気を醸し出し、尚且つマヌケ極まりない外見。
茶坊主はオレを放任主義として、好き勝手にやらせるみたいだが、何かトラブルがあった時の対処法を知らないだろうから、放任主義にしてるんじゃないだろうか。
あのツラじゃトラブル対処なんて出来っこ無い。
オレは校内ではあの茶坊主となるべく接点を持たないようにしようと決めた。
で、その茶坊主だが、転校生ともなると、休み時間になれば周りからあれこれと聞かれるのがフツーなのだが、何せあのバカ面で横文字はからっきしダメ。
話し掛けようとするヤツなんか誰一人いなかった。
オレはオレで、泰彦や謙司、そして龍也やチャッピーなんかとワイワイガヤガヤやっていた。
「おい、あの坊主頭何か変じゃねえか」
龍也は教室の窓際でそんな話をしていた。
龍也だけじゃなく、泰彦もそう思っていた。
「そうだな。いかにも田舎の中学生ってな感じだな。それにしても随分と老けたツラだな」
…大体中2だなんて無理があるってもんだ。
「見ろよあの頭。円柱の先端みたいな形してないか?
脳ミソ入って無さそうな頭に見えるぞw」
『ギャハハハハ!』
オレの言葉に皆爆笑した。
「そうだ、円柱頭だから、アイツを三遊亭円柱って呼び名にしようぜwあれで和服着て机の上で座布団10枚乗せて正座させたら笑えるなw」
「三遊亭円柱wwwワハハハハ、ぴったりなあだ名だな」
チャッピーは腹を抱えて笑っている。
「ギャハハハハ!今度座布団集めてアイツの机の上に敷いてやろうぜwww」
龍也のアイデアにより、オレたちはあの茶坊主にこのクラスに入ったからにはしきたりを受けてもらおう、等と無茶苦茶な理由をつけ、昼休みになると、校内のあちこちの部屋から座布団をかき集め、茶坊主の机の上に敷いた。
10枚まではいかなかったが、6,7枚は集まった。
「おい、三遊亭円柱!五時限目からはこの座布団の上で正座して授業受けろよ、分かったな?」
龍也が少し凄んだ顔で茶坊主に脅しをかけた。
「私、三遊亭円柱じゃありません(^^)
宇棚ひろし言います(^^)」
…これだ。この何とも言えないマイペースな話し方を聞くと疲れてしまう。
「うるせーな、いいからこの座布団の上で正座するんだよ!これは転校生が来たら必ずやる儀式なんだよ、分かったな、おいっ!」
龍也が強引に机の上に敷いてある積み上げた座布団の上という不安定な場所で、オレたちは茶坊主を担いで正座させた。
『ギャハハハハ!これじゃ笑点の大喜利じゃねえか!』
キーンコーンカーンコーン♪
チャイムが鳴り、五時限目の授業が始まる。
確か次の授業は理科だ。
先生はどんなリアクションするのか、オレたちはワクワクして、早く先生来い!と思った。
ガラガラっと教室のドアが開き、先生が入ってきたと同時に茶坊主が座布団の上で正座してる姿を見て、思わずひっくり返ったのはいうまでもない…
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