胡散臭い茶坊主

言動さえも胡散臭い…

まさかこの茶坊主みたいなヤツがジジイの代わりってんじゃないだろうな?


「これ何て読むんだ?うたな?うだな?」


オレは名刺を見て宇棚と書いてあるのをどう読むのか分からなかった。


「うだな(^^)」


にこやかに答えた。



「うだなひろし?どっからどう見てもただの茶坊主にしか見えないが、お前も仙人なのか?」


仙人にしては程遠い風貌、寺で修行してる坊主の方がお似合いな面構えだ。


「はい、私こう見えて東方仙人の上司です(^^)」


ジジイの上司だと?


確かに名刺には部長と記されてあるが、あのジジイより上なのか?


どう見ても、コイツの方が部下って感じだろ、何となく頭悪そうだし。


「私これでも400年この職に就いてますから、どんな問題でも解決出来ます(^^)」


また次から次へと胡散臭いヤツが現れてくるな、オレの目の前には。


「400年?400年って、お前一体何才だ?」


どう見ても単なるトッチャン坊やだろう。


30~40ぐらいにしか見えないが…



「大丈夫です(^^)私に任せれば全ては上手くいきます(^^)」


自信満々で言うが、あのジジイより胡散臭ぇ…

しかも400年のキャリアだと?


今2017年だから、400年前ってぇと、1617年?江戸時代じゃないかよ?


アホらしい、こんないびつな頭したトッチャン坊や相手にしたら、こっちまで変な目で見られる。


っていうか、今朝から変な目で見られっぱなしじゃねぇかよ!


「私が最初に担当した案件は、徳川三代将軍の家光さんです(^^)

まず徳川直臣である旗本を再編し、幕府には老中・若年寄・奉行・大目付と言う役職を設け、将軍を最高権力者「公方」と言う位置づけを確立させ、平和な世の中の組織に作り替えました(^^)

そして参勤交代や大奥をアドバイスしたのも私です(^^)」


聞いてもいないのに、勝手に自分の経歴を話し出した。

ホントかよ、見た目以上に胡散臭いヤツだ。



更にヤツは話を続けた。


「後は五代将軍の綱吉さんに、殺生を禁止する法令「生類憐みの令」(しょうるいあわれみのれい)を進言しました(^^)


まぁそれで歴史的に有名な将軍となってしまったのは私のお陰です(^^)

将軍とお犬様の関係ですが、

実のところ、徳川綱吉さんに跡継ぎがいないことを心配していた母・桂昌院さんが、寵愛していた僧の隆光僧正の助言を受けたものという事になっていますが、それは私が隆光僧正になりすましました(^^)

将軍が犬年生まれなので犬を保護させてみました(^^)


最初は、将軍が通行する道では、犬・猫を自由に放しておく程度の法律でしたが、徐々に厳しくなります。


魚や鳥を生きたまま食用として売らない事。

犬・猫・鼠に芸を覚えさせて見世物にするのを禁止。

金魚の飼育が禁止された江戸の庶民は、藤沢の遊行寺の池に金魚を放流。

大久保・四谷の住民を強制退去させ、犬を保護する小屋が建てられました。広さは東京ドーム20個分。

犬虐待や犬殺しを密告した者には賞金を支給。

ドジョウ・ウナギの取引禁止。

もちろん、鷹狩りも禁止されていました。


最終的には「殺生はダメ」と言う考え方に至るまで、24年間の間に合計135回も追加・改正され、貝類・虫類まで保護されました。

なお、動物に対してだけと言う事ではなく、捨て子を禁じたなど良い面もあり、捨て子や病人の保護は、生類憐みの令が廃止されたあとも続けられました(^^)


徳川綱吉さんは動物愛護の精神にのっとれば、人間の生活においても忠孝に励み、召使(使用人)に対しても情けを掛け、親・兄弟や親戚が皆仲良く暮らせる世の中になると考えたかも知れませんが、少し暴走し過ぎましたね(^^)

犬を飼っても簡単に捨てる人も多かったため、まずは身近な「犬」と言えども大切に接しようと訴え、庶民の感情を変えようと試みた結果、あのような行き過ぎな法令を出してしまったのです(^^)」


胡散臭い、マジ胡散臭い!

しかもニンマリと笑みを見せながら話すのはいいが、全てが胡散臭て、誰も信じないぞ!



「それと暴れん坊将軍で有名な八代将軍の吉宗さんは…」


「ちょっと待て!」


オレはヤツの話を遮った。


「はい、なんですか?」


コイツは新手の宗教の勧誘者か何かなのか?


「オレは神を信じないぞ!イエス・キリストも仏陀も一切信じないからな!」


何の宗教か知らんが、オレは宗教なんかに全く興味がない。


「私、宗教の勧誘ではないです(^^)でも神様はいます。

我々天界のトップに君臨しています(^^)」


益々怪しい…それにいつからこのトイレの個室にいたんだ、コイツは?


「何だかもう、さっきのジジイで大抵の事には驚かないが、お前は結局何が言いたいワケ?」


何かコイツとは話が噛み合いそうもない。


「私の経歴を話してるだけです(^^)」


別にこっちは聞くつもりはないんだが…



「で、話を元に戻しますね(^^)吉宗さんは目安箱を設置して庶民の意見を聞きました(^^)


大岡越前守(大岡忠相)などを採用して司法制度を改革したり、

小石川養生所を創設して医療制度の向上につとめ、

一部の洋書の輸入を解禁して、蘭学発展の基盤を築いたのも、私の進言によるものです(^^)」


コイツの話聞いてると、外資系の保険会社のCMの内容とほぼ同じじゃねぇか!


しかもそれ、Wikipediaで調べていたんじゃねぇのか?


「私Wikipediaはよく知りません(^^)」


何で分かるんだ?今オレの心を読んだのか?


ギクッとなった。


まさか頭の形が円柱の先端みたいないびつなトッチャン坊やが読心術をマスターしてるとは。


こりゃホントにあのジジイより上なのかも知れない。


そして宇棚はトイレを出る前、何かを思い出したかのように、こちらを向き、思いもよらない事を言いやがった。


「あ、そうだ。言い忘れました。

私明日から転校生として山本智さんのクラスに入るので、ヨロシクお願いします(^^)」



なに~っ!転校生だぁ?


ジジイの時は誰にも見えなくて、オレにしか見えなかったが…


コイツは堂々と人前に出て姿を現すのか?


「てことは何か?お前がジジイの代わりにオレのお目付け役となるってワケか?」



「んだな(^^)」


何故、返事が訛るんだ?

…何か力が抜ける。こんな見た目トッチャン坊やで頭悪そうなヤツがお目付け役だぁ?


「おい、まさかジジイの時みたいに変な杖持って、オレの頭にまた輪っかを被せるのか?」


こんなマヌケ面がジジイの代わりとは…はぁ、中2ライフは薔薇色だと思ってたのに。


て事は?…冗談じゃない!またあの輪っかで頭をギリギリと締め付けられるのはイヤだ~っ!


「私そんな事しません(^^)人を縛り付けるつもりはありません(^^)

これが私のポルシーです(^^)」


ポルシー?…


「何だそのポルシーってのは?」


業界用語か何かそんな類いの言葉か?

宇棚は頭をポリポリかきながらにこやかに答えた。


「方針です。その人に自由にやらせて、何が必要なのか見極めて進言するのが私のポルシーです(^^)」


…それはポルシーではなく、ポリシーだろ!


「ポリシーだろ!フツーは間違えねえぞ、こんな単語を!こんなのがオレのお目付け役なのかよ?」



「すみません、私横文字苦手です(^^)」


あぁ、どうなっていくんだ、オレの中2ライフは…?






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