人違いだぁ~っ!

何だかなぁ。


ジジイの次は茶坊主で、しかも放任主義ときたもんだ。


「おい茶坊主。ならばオレがここにいる意味がないだろ?早く元の世界に戻せよ」


放任主義なら別に中2に戻らなくてもいいじゃん。


「そうはいきません(^^)

もう上の方で受理してしまいましたから(^^)」


受理しただと?事も無げにシレっと言いやがって!


「はぁ?何だその受理ってのは!テメーじゃ話しにならねえ、上のモンを出せ、バカヤローっ!」


ニコニコしながらも、要求は通らない。


ていうかさぁ、何でオレが中2に戻らなきゃならないワケ?


確かに中2の頃は、勉強もせず、部活もバックレてたけど、悪い事は何一つやってねぇぞ。


それなのに、何の因果でインチキジジイと円柱頭の茶坊主に振り回されなきゃならないんだ?


オレなんかよりも、人生のやり直しをする連中なんざ、かなりいるだろう。


なのに何故オレが選ばれなきゃならないんだ?


全く腑に落ちないったらありゃしない!


「おい茶坊主!」


頼りないがコイツに聞いてみよう。


「私、宇棚です(^^)」


「んな事はどーでもいいんだよ!何でオレが中2に戻る必要があるんだよ?他にも更正しなきゃならないヤツがいっぱいいるだろ?」


あのジジイはハッキリとした理由を言わなかったから、上司の茶坊主に聞いてみた。


「それは東方仙人さんの手違いです(^^)」


…な、何っ?

手違い~っ!手違いってのは何なんだ?


「おいまさかあのジジイのミスってヤツか?」


オレは茶坊主に聞いた。


「そうです(^^)

本来は【山木智】さんが中2に戻る予定でした(^^)

でも東方仙人さんは【山木】ではなく、【山本智】さんをミスチョイスしてしまいました(^^)

これが真相です(^^)」


…へ?山木と山本を間違えた?あのジジイが?


あのクソジジイ!ハメやがったな!


「おい、茶坊主!ジジイを今すぐここへ呼べ!こんなの手違いで済む問題かっ!

とりあえずボコッてやるからさっさと呼んでこい!」


ふざけやがって、あのクソジジイめ!


手違いでしたで済む問題じゃないだろ!


…っていうか、オレさっきからトイレで怒鳴ってばっかだな。


「それは無理です(^^)

東方仙人さんはミスを犯し、今ごろは始末書を書いて、しばらくの間、自宅謹慎になる予定ですから(^^)」


仙人が始末書書いて自宅謹慎って何なんだ!


何から何まで胡散臭ぇ!


「じゃあ上のモン出せ!テメーより地位の高いヤツいるだろ?ソイツをここへ呼べ!そしてこの件を破棄させちゃる!」


冗談じゃねぇぞ、ったく。


それにしても腹減った…


給食食ってないから、腹減って何もする気になれん。


「上の者と言われても、上の者は神です(^^)

神が一旦受理した案件を破棄する事はできません(^^)」


神?神って神様か?さっき言ったトップってのが神様なのか?


「何かお前と話してると、疲れて余計に腹が減ってくる…

そろそろ五時限目の授業が始まる頃だから、教室にもどる…」


この円柱頭と話してると、ジジイの時よりエネルギーを消費する。いや、カロリーまで消費する。



結局元には戻らないのか…


あぁ、何て人生なんだ、オレの人生は…


ところで五時限目の授業って何だろ?


オレは教室に向かった。


ガラッとドアを開けると誰もいない…


あれ?皆どこ行ったんだ?


オレは黒板の横に貼ってある授業表を見た。


ゲッ!体育じゃん!

体育ってぇと、誰だ先生は?


……………………柏木だ!


口より先に手が出る、典型的な脳ミソまで筋肉で出来てる体育教師だ…


あぁ、もう、何でこうもツイてないんだ?


運動神経は悪くないが、何せ給食を食ってないから、腹減って動けないっつーの!


…とはいえ、早く支度してグランドへ行かなきゃ!


オレは体育着に着替え、何食わぬ顔してこっそりとグランドへ向かい、後ろの列に並んだ。



「よし、今日はグランド10周だ!行けーっ!」


ピーっと笛を鳴らし、皆一斉に走り始めた。


マジかよ、今日はマラソンかよ?


しかも10周なんて無理!


もう数メートル走っただけでバテた…

もう腹減って走れねえ~っ!


「こら、山本!さっさと走らんか!」


うるせー、ヤツだなこの体育教師は!


普段は職員室で競馬新聞ばっかチェックしてるクセに!


あっ!そうか!


競馬で思い出した!


オレは柏木の所へ行き、耳よりな情報を教えようとした。


「先生、今年の有馬記念は絶対にオグリキャップを買うべきだから!オグリキャップのラストラン、そして武豊とオグリキャップのコールで有終の美を飾るんだから。

ありゃ感動したなぁ~」


この年、競馬人気というより、武豊やオグリキャップの人気で競馬をする人が増えた時期だった。


「何ぃ~っ!バカヤローっ!何が有馬記念だ!まだ6月だろっ!お前まさか中学生の分際で競馬なんてやってるのかっ!」


バッチーン!


痛え!


今日だけで何回ビンタ食らったんだ、オレは?


もう、イヤだ!帰りてえ~っ!

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