待てこら、智ぃ~っ!

「Mr.ヤマモト!いいから早くこの英文を訳しなさい!」


頭痛ぇのにこんな問題解けるかってんだ!


あのジジイ、登場した途端に頭思いっきり締め付けてきやがる。


にしても、あれが仙人か?亀仙人か【こち亀】によく出てくる神様みたいな格好して、どうも集英社臭が漂う。


で、何訳せばいいんだ?


【私は駅の場所を尋ねた】


…これ英語に訳せってのか?


中2でこんな英語習ったっけ?


いかん!こりゃかなり学力が落ちてる!

えっと、駅はステーションで、尋ねるはask、んー?

てことはどんな文法だ?


『I asked the location of the station』


おぉ!デザイアー、もとい恵ちゃん助かる!


恵はアマゾネスが目の前にいるにも関わらず、ノートに走り書きして、解らないようにオレに見せてくれた。


「 えーっと、I asked the location of the station…かな?」


こんな発音でいいのかな?


【こりゃ、自分で答えんかい!】


ギリギリ…


「いってぇ~っ!だから頭痛ぇっつーの!ジジイ!テメー、この輪っか外せって言ってんだろがっ!

おい、ジジイ!このインチキ仙人!あー、もうやってらんねぇ!こうなりゃ意地でも徳なんざ積んでやるか!気ままな中2時代をエンジョイしてやる!

あんなインチキ仙人の言う事なんざ2度と聞かねえぞ、おいジジイ!聞いてるのか?」


またすぐに姿を消したジジイに大声で怒鳴った。



『まただよ…』


『見えない相手に戦ってるのか?』


『変なクスリやってんじゃねぇか…』


『昨日までフツーだったのに今日になっておかしくなってるし…』


『何か怖いょ…』


『幻覚症状でも起きてんじゃねえか?』


あぁ、もうイヤだ…あのジジイのお陰で、オレはかなりヤバいヤツだと思われてる…


下手すりゃ精神病院に強制入院させられるかも…


この輪っかさえ取れれば。


「Mr.ヤマモト!何さっきから大きい声出してるの?誰と喋ってるの、一体?」


あぁ、やっぱ帰りてぇよ~…

元の世界に帰りたい…


そもそも何でオレが1990年にタイムスリップしなきゃならんのだ?


…それか力ずくでこの輪っか外してやるか…


外す、そうか!あのジジイ必ず呪文を唱えるよな?


よし、今度呪文を唱えた隙にあの杖もう一度奪ってやろう、うん!


…で、その前にこの状況をまず何とかしないと。


何か流れを変える方法はないか?


うーん、困った!オレ、ピンチ!


「Mr.ヤマモト!さっきの答えだけど…」


合ってるんだろ!


もしかして違うのか?


「Missヨシダに頼りっぱなしじゃなく、たまには自分で考えて答えなさい! Do you understand?(解りましたか?)」


ったく所々でネイティブな発音しやがって、なぁにがドゥユーアンダースタンド?だったく


「はい、解りました。でも1つ解らない事があります」


もう、こうなりゃヤケクソだ!

とっておきのネタ暴露してやる!


「あら、何かしら?」


美咲はオレの前で何か英語に関する質問だと思ってやがる。


へへっ、とっておきのネタだ!


「この前、伯父さんが家に来て、美咲はイギリス人の男を好きになってしまってイギリスまで追っかけたけど、《君はガールフレンドの中の1人で僕にはちゃんとしたフィアンセがいるんだ》って言われてフラれたって言ってました。

それと伯父さんは家の父と酒を飲む度に《早く孫の顔が見たい、美咲はいつになったら結婚するんだろうか?》って嘆いていました。

先生、イギリス人男性追っかけにロンドンまで行ったのはホントですか~っ?」



どうだ、テメーのヒミツバラしてやったぞ!



『えぇ、マジで?』


『さすがアマゾネス、狙った獲物は逃がさないw』


『でもフラれるというw』


『孫の顔が見たいって切実だよなぁ…』


入学した当初のお返しだっ!

ザマーミロ、ギャハハハハハっ!


「あれほどひた隠しにしてたのに…智ぃ~っ!」


ヤベッ、マジでキレてる!


オレは席を立ち、ダッシュで教室を飛び出した!


「待て、智!よくも私の恥ずかしい過去をバラしたわね!」


ゲッ!廊下を高いヒールで追っかけてきやがる!


「こら、待て!智!生徒の前で恥かかせやがって!」


しつけーよっ!


しかもヒール履いてるクセに足が速っ!


伊達に陸上で鍛えた脚力じゃねえ!


オレは必死に校舎内を逃げ回った。


だが、ヒミツをバラされたアマゾネスは執拗に追っかけてくる!


屋上まで逃げて、そっからまた階段で下りて1階まで逃げた…だが、アマゾネスも執念深く追っかけてきやがる!


「しつけーよ、いつまで追っかけてくるんだよ!」


オレが後ろを振り返りながら、美咲に言った。



「うるさいっ!とっ捕まえるまで追っかけてやる~っ!」


…これじゃ鬼ごっこだ。


しかし、やっぱ中2の体力だな、全然疲れないぞ!

例え補欠のサッカー部員だが、しょっちゅう走らされてるから、これしきじゃ息が上がらないっ!


いや~っ、いいなぁ10代の体力はっ!

若いってスゲーな、おいっ!


ワハハハハ!


結局、オレとアマゾネスはチャイムが鳴るまで校舎を走り回り、3時限目も自習となった…


一時限目からずっと自習じゃねえかよ…


さすがのオレも疲れて腹が減って、何もしたくない…


何なんだこの中2ライフは。


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