こんな杖、燃やしてやるっ!
疲れた…授業ってこんなに疲れるもんだっけ?
まだ給食前だけど、スゲー腹減った。
それにしても、この輪っかだ。
これ何とかして外せないもんだろうか…?
無理矢理外そうとすればする程、締め付けられて割れるように痛い…
あのクソジジイ、こんな厄介なもん頭に被せやがって、いきなり現れて頭締め付けてくるもんだから、のたうち回る程痛いんだぞ、ったく。
何とかして外す方法は無いものか…
…やっぱりあのジジイが持ってる杖が原因だな、うん。
今度現れて来たら杖奪い取って折ってやろう、あんな杖があるからオレが散々な目にあうんだ。
【フォッフォッフォッフォッフォ、お主また良からぬ事を考えてるみたいだのぅ~】
あっ!出てきやがったジジイ!
「おいジジイ、ジジイはその杖が無くなったらどうなるんだ?」
何としてでも、あの杖だけは奪わねば…
【何っ、お主またこの杖を狙ってるのか?】
ジジイは杖を後ろに隠した。
あれじゃ奪う事は出来ねえな、変な事聞いちまったかな?
ちょいと話題を変えてみよう。
「違うよ、ジジイのその杖ってのは魔法の杖なのか?」
このジジイというより、この杖を何とかすればこっちのもんだ。
【魔法?バカもん!仙術じゃ!】
センズリ?いや、センジュツ?
「何だ、そのセンジュツというのは?」
聞けば聞くほどインチキ臭ぇ…
【仙術とは、修行方法には呼吸法や歩行法、食事の選び方、住居の定め方、房中術までさまざまな方法があるのじゃ。不老不死もその1つという訳じゃ。解ったかな?】
まるで棒読みのような言い方、こりゃWikipediaで調べてきたな?
「ジジイ、テメーWikipediaに載ってるのを丸暗記したような言い方じゃねえか!
どうもテメーが仙人というのが信憑性に欠けるんだよなぁ」
【バカ者!現にこうやってお主を中2に戻したりしてるじゃないか!それをインチキ呼ばわりするとは不届き千万!】
よしよし、こうやって徐々に揺さぶって杖を奪ってやろう。
「何かもっとスゲー技ないのかよ?かめかめ波とか遠くの相手をぶっ飛ばすような必殺技とか」
…断っておくが、今は休み時間でオレは屋上にいる。
教室でジジイと話すと、また周りから不気味がられるしな。
【そんなもんは無い!マンガの読みすぎじゃ!】
て事はこのジジイ、杖が無けりゃ、ただのジジイって事じゃん!
「テメーだってマンガに出てくるようなキャラじゃねえか!山伏みたいな格好しやがって!山伏なら杖じゃなくホラ貝だろ!それともあれか?テメーその杖が無えと何も出来ねえんだろ、なぁ?図星だろw」
更にオレは心理的にジジイを揺さぶった。
【えぇい、やかましい!ジジイジジイと呼びおって!ワシャジジイではない、仙人じゃ!】
この短い休み時間の間にジジイの杖を奪う事は無理だ。
もうすぐ授業始まるし戻ろう。
「ふーん、仙人ったって色んな仙人がいるんだろ?ジジイは何仙人なんだよ?やっぱ亀仙人か?」
それにおれはこのジジイの名前すら知らない。
【何を言うか、ワシにはれっきとした名前があるんじゃ!】
「ほー、何て仙人なんだ?」
【ったく仕方ないのう…】
ジジイは装束の袖の中から1枚の札を取り出した。
【ほれ、これがワシの名前じゃ!】
何だ、この札…しかもボロボロで字が読みづらい。
何やら書いてあるが…
【天界桃源郷1-3-5
仙人コーポレーション 下界更正育成課主任 東方仙人
0×-5×××-8×××】
おい…何だ、これ?
名刺か?
「ジジイ!こんなインチキくせーもん持ち歩いてのか?どう見ても胡散臭いじゃねえか!何が天界桃源郷だ!
しかも電話番号まで書いてあるじゃねえかよ!ここに電話すりゃ誰か出てくるのか、おい」
何だ桃源郷って!ユートピアか!
【当たり前じゃ!ウソだと思うなら電話してみればいいだろう】
しかも何だ、主任て。
仙人のクセに主任だぁ?
「あっそ。じゃ後でかけてみようっと。お宅のところの主任、スパルタ過ぎてとてもじゃないけど徳を積もうだなんて思ってないから、他の仙人に変えて下さいって苦情言っとくゎ」
試しに昼休み校内の公衆電話からかけてみよう。
ホントにここに繋がるのか。
【何っ、そんな事したらワシャ主任の座を降ろされるのじゃぞ!】
ジジイは慌て出した。
「うるへー!仙人に主任も課長も無えだろ!何から何までインチキなクセしやがって!
とにかくオレは後でここに連絡して思いっきりクレームつけてやるわい、ウヒャヒャヒャヒャヒャ!じゃあ、もうすぐチャイム鳴るから教室に戻るゎ。
テメーは上司に後で怒られるだろうな、んじゃまたね~」
オレは立ち上がり、屋上のドアを開けようとした。
【こ、このワシを侮辱しおって!貴様などこうしてやるわい!
ホンニャラハンニャラ、ピーヒャララ、ザギンでシースー、ギロッポン!かぁーっ!】
ジジイは業界用語のような呪文を唱え、オレに杖を振りかざした。
今だっ!
「バーカ、お返しだっ!」
オレはポケットに入れていた手鏡を杖に向けた。
【うぎゃ~っ!頭痛ぇ~っ!割れる割れる~っ!助けてくれ~っ!】
先程のオレみたいに頭が割れる程痛く、のたうち回っていた。
「ギャハハハハハ!どうだ、呪文返しだ!しかしホントに鏡で反射するとはなぁ、やってみるもんだな」
ジジイはあまりの頭の痛さに持っていた杖を離した。
(よし、今だ!)
オレはすかさず杖を奪い取った。
「ようっし、これさえあればもうこっちのもんだ」
杖を手にしたオレは屋上からダッシュで階段を下り、校舎裏にある焼却炉へと向かった。
【あぁっ!お主、その杖返さんかい!】
ジジイが後を追うが、何せ足の速さに関してはこっちの方が断然上だ。
「やなこった!この杖取り返したかったら呪文を唱えりゃいいだろ、ほれほれ、呪文唱えてみ?」
オレは踊り場で立ち止まり、ジジイに呪文を唱えさせてみた。
杖の無いジジイなんて、ただのクソジジイだ!
【くっ…ホンニャラハンニャラ、ニャラホンニャ、ワイハービーチでセバスチャン!】
…シーン。ほら、何も起こらない。
「何だ、何だ。やっぱこの杖が無いと何も出来ねえのか?てことはこの杖が厄介な物ってワケか。よし、この杖処分しよう!じゃあなジジイ!」
オレはまたダッシュで階段を下りて、校舎裏にある焼却炉に杖を放り込んだ。
「ザマーミロ、これでもう杖は燃えて無くなった!ギャハハハハハ、あ~スッキリした、それじゃ教室に戻ろう」
いや~、これでもう頭が割れるような痛さは二度と起きないだろう。
【こ、このバカもんが!杖が無いと元には戻れないぞ!】
「うるせーな、ジジイ!杖の無えテメーなんざちっとも怖くないんだよ!それともこの火の中に手突っ込んで杖取ってみやがれ!」
焼却炉の中であの忌々しい杖は燃え盛っている最中だ。
ジジイは焼却炉の前でへたりこんでいる。
さぁて、これから本格的に中2ライフアゲインだ、ウハハハハハハ!
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